厚労省 先駆けに11品目 楽天メディカルの光免疫療法用薬など
公開日時 2019/04/09 03:50
厚生労働省は4月8日、画期的な新薬や再生医療等製品など11品目を先駆け審査指定制度の対象品目に指定したと発表した。薬事承認に向けた相談・審査を優先的に行い、審査期間を6か月間に短縮することを目指す。
同省は、2018年11月までに指定申請があった医薬品40品目、再生医療等製品13品目、医療機器・体外診断用医薬品15品目を評価した。そのうち、対象疾患の重篤性など一定の要件を満たし、画期性が見込まれる品目として、医薬品5品目、再生医療等製品2品目、医療機器・体外診断用医薬品4品目を指定した。
対象品目は以下の通り。カッコ内は予定効能・効果、申請者。
【医薬品】5品目
▽ASP-1929(頭頸部がん、楽天メディカルジャパン):フェーズ3。光免疫療法に用いる薬剤。抗EGFR抗体セツキシマブとレーザー装置による非熱性赤色光によって活性化されて物理的に細胞膜を破壊する作用を持つIR700を結合させた抗体薬物複合体。再発頭頸部扁平上皮がんに対する海外臨床試験で完全奏功例も認められ、高い有効性が期待できる。
▽Valemetostat(再発又は難治性の末梢性T胞性リンパ腫、第一三共):フェーズ2。がんの悪性形質維持等に重要な役割を果たすと考えられているヒストンメチル化酵素であるEZH1と2を同時に阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられる。これまでの臨床試験成績に基づき再発またはない知性の末梢性T細胞性リンパ腫に対し高い有効性が期待できる。
▽イキサゾミブクエン酸エステル(ALアミロイドーシス、武田薬品):世界で初めて承認申請を行う対象として日本が含まれる予定。同剤はプロテアソーム阻害剤で、ニンラーロの製品名で販売されている。ALアミロイドーシスは、アミロイドが臓器に蓄積し、臓器機能障害、臓器不全に至る重篤な疾患。この疾患を効能・効果として承認されている薬剤はない。海外臨床試験
で血液学的奏効例が認められている
▽TAK-925(ナルコレプシー、武田薬品):国内フェーズ1。日中に繰り返し起こる過度の眠気や脱力発作などからなるナルコレプシーの病態形成において重要な役割を果たしていると考えられるオレキシン2受容体(OX2R)に作動する新規作用を持つ。非臨床試験、臨床試験成績に基づき、既存薬と比較し高い有効性が期待できる。
▽E7090(FGFR2
融合遺伝子を有する切除不能な胆道がん、エーザイ):フェーズ2計画中。FGFR阻害する新規作用を持つ。FGFR2
融合遺伝子は、胆道がんの15~30%を占める。これまでの臨床試験成績に基づき、FGFR2
融合遺伝子を有する切除不能な胆道がんに高い有効性が期待できる。
【再生医療等製品】2品目
▽テロメライシン(切除不能、化学療法不耐容または抵抗性の局所進行食道がん、オンコリスバイオファーマ):国内外で治験中。腫瘍溶解性アデノウイルスで、がん細胞中で特異的に増殖し、直接細胞を破壊する新規作用機序を。国内での2つの臨床研究・臨床試験(計17例)が実施され、食道局所完全奏効率70.6%と、高い有効性を示唆する結果が得られた。
▽SB623(外傷性脳損傷(中等度~重症)における運動障害の改善、サンバイオ):2019年中に日本で承認申請予定。ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞にヒトNotch-1の細胞内領域をコードする遺伝子を挿入したプラスミドベクターを導入した細胞である。神経前駆細胞の増殖・分化、細胞外マトリックスの産生、神経細胞の成熟・樹状分枝の促進、血管新生の促進等などの新規作用機序。国際共同臨床試験(計61例)が実施され、移植6か月後の時点で、プラセボ群と比較して有意に運動性能の改善が認められた
【医療機器・体外診断用医薬品】4品目
▽マイクロ波マンモグラフィ(仮称)(マイクロ波により乳がんと疑われる組織を同定し、医師にその情報を提供する、Integral
Geometry
Science):乳房内に微弱なマイクロ波を送信し、脂肪とがん組織間の比誘電率差を観測し、検出する新原理の機器。臨床研究により高濃度乳房での乳がん検出能が示唆され、検出率の向上が期待できる。国内での臨床試験を経て、世界に先駆けて日本で承認申請する予定。
▽下肢動脈バイパス用人工血管作製用鋳型(仮称)(重症下肢虚血患者に対する外科的な再建による膝下血行不全病態の改善及び自己血管再生による長期開存、バイオチューブ):多施設共同臨床試験を計画。腹部皮下に「鋳型」として1~2か月間植え込むことで、バイパス術に利用できる患者自身の組織からなる管状移植体が得られる器具。重症下肢虚血は、虚血性安静時疼痛、壊疽等を呈し、有効な血行再建ができなければ下肢の切断に至るが、透析患者への使用実績や非臨床試験結果から、対象患者に対して有効な治療法となり得ることが期待される。管状移植体は自己組織のため、免疫拒絶や毒性の懸念がない。
▽リン酸化プルランバイオアドヒーシブ(仮称)(自家骨、同種骨(他家骨)、異種骨、人工骨あるいはこれらの混合物と混和して賦形性と接着性を向上させることにより、操作性と骨欠損部への留置性を高める。また、増量効果を有することから、自家骨採取量を減らすことができる、BioARC):唇顎口蓋裂治療において手術時の操作性及び患部への留置性を向上させる機器。非臨床試験において、高い骨造成効果が確認されている。自家骨採取量を減らし、小児への低侵襲性や術後管理の短期化にも寄与する。国内での臨床試験を経て、世界に先駆けて日本で承認申請する予定。
▽DNA チップによる膵臓・胆道がん検査キット
MI-004(仮称)(血清から抽出したRNA中のマイクロRNAの発現パターン解析(膵臓癌・胆道癌の診断の補助)、東レ):血清中のマイクロRNA
の発現量の組み合わせを数値化し、膵臓がん・胆道がんの診断フローに用いる検査システムは世界的にも実用化された例がない。開発の過程において健康成人と膵臓がん・胆道がん患者を感度80%、特異度80%で鑑別するアルゴリズム及び閾値が得られている。国内で臨床性能試験を実施し、世界に先駆けて日本で承認申請予定。
〈訂正〉(4月9日13時)
ASP -1929の文中に誤植があり、下線部を訂正しました。