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骨太方針2019  創薬力高める製薬産業の構造改革をサポート “Society5.0”への挑戦促す

公開日時 2019/06/24 03:52
「イノベーションの推進を図ること等により、医薬品産業を高い創薬力を持つ産業構造に転換する」―。政府が6月21日に決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針)にこの一文を盛り込んだ。副題に「“令和”新時代:“Society5.0”への挑戦」というメッセージを掲げ、政府として生産性向上を主眼とする社会構造改革に着手する決意を滲ませた。これは医薬品産業に対しても同様だ。今回の骨太方針には、がんゲノムをはじめとしたデータやテクノロジーを活用した創薬支援の必要性が明記されている。医療・介護など社会保障制度改革は待ったなしの状況だ。薬剤費抑制策は継続課題として緩むことはなさそうだが、その一方でデータ駆動型のビジネスモデル創出など、製薬産業の“攻め”の挑戦を後押しする政府の意図が、今回の骨太方針に散りばめられていることも見逃せない。

骨太方針には、今年10月に消費増税率を10%に引き上げる方針を明記した。これにより安倍政権が2012年以降着手した社会保障・税一体改革の第一幕を終えることになる。日本社会は2025年に向けた高齢化対策と、その後の労働生産世代の減少など、これまで経験したことのない社会構造に直面する。今回の骨太方針では、こうした社会構造の変化に着目し、AI(人工知能)やIoTなど革新的技術を用いて社会インフラを整備し、循環型経済を回すことで労働生産性を向上する“Society5.0”時代を政府として後押しする姿勢を鮮明にした。また、今回の骨太方針では、労働生産性人口の深刻な現象に直面する2040年の社会の姿からバックキャストし、短期的、中期的な施策を工程表として明示したことも特徴のひとつとなっている。

◎「ゲノム情報の環境整備」など構造転換促す業界要望はすべて骨太に反映


「がんゲノム情報管理センター(C-CAT)で集約される臨床情報やゲノム情報が適切に利活用され、その成果が患者や国民に還元されるよう、国や省庁が主導し、適切な体制で運営されることを要望する」-。日本製薬工業協会(製薬協)をはじめ、製薬団体は5月20日に開かれた厚労省、経済産業省など行政、アカデミアの代表者が一堂に集う「革新的医薬品創出のための官民対話」でこう要望した。革新的新薬を迅速に創出するためにも、環境整備の重要性を指摘した。今後の製薬産業の姿についても、疾病治療分野だけでなく予防分野を含め、IT業界やベンチャーなどと連携し、「医薬品というモノだけでなく、ヘルスケアサービス・ソリューションを提供する産業に転換する」重要性で一致した。

骨太方針2019には、がんゲノム情報について国内で蓄積する仕組みを整備し、全ゲノム解析等を活用するがんの創薬・個別化医療などを推進するために、100万人の検査を目指す英国を参考に、「10万人のゲノム検査の実施」する。数値目標や人材育成・体制整備を含めた実行計画を19年度中に策定することも盛り込んだ。さらに、健康寿命延伸を視野に認知症の治療法開発のためのデータベースの整備・拡充や、疾患レジストリーであるクリニカルイノベーションネットワーク(CIN)とMID-NETの連携を通じた創薬基盤の整備、オープンイノベーションの推進なども明記した。薬事規制も、「AIを活用した医療基金開発や、医薬品等の開発の促進に資する薬事規制体制の整備・合理化を進める」ことも明記した。アジアやアフリカなどへの国際展開も重要視されるなかで、G20でも議題にあがる“ユニバーサルヘルス・カバレッジ”を通じ、規制調和を推進することも盛り込んだ。

2018年4月に断行された薬価制度抜本改革を通じ、構造転換を促された製薬業界が産業振興策として要望した事項はほぼすべて、骨太方針に反映されたことになる。一方で、2016年12月に4大臣合意された「薬価制度抜本改革に向けた基本方針」に基づき、薬価制度改革は緩みなく断行されることも明記された。

◎創薬技術とITテクノロジーの融合 新たな産業像構築を

環境整備が進むなかで、製薬業界にとっては、Society5.0時代にふさわしい産業像へと変革することが問われることになる。データ駆動社会となるなかで、社会インフラ系企業やIT企業なども医療界への本格参入し始めており、チャンスを狙う。医薬品産業がこれまで培った革新的技術と、ITなどのテクノロジーを融合させ、新たな産業像へと生まれ変わることができなければ、果実は手からすり抜けてしまう可能性もはらむ。これまで医薬品産業は薬価を中心とした産業政策論を推し進めてきたが、こうした面からも大きな発想の転換が求められると言えそうだ。

◎後発品使用促進 インセンティブ強化も引き続き取り組む


後発品については、「安定供給や品質のさらなる信頼性確保を図る」必要性を指摘したうえで、後発品80%目標達成に向けて、診療報酬上の「インセンティブ強化にも引き続き取り組む」ことが盛り込まれた。後発品の数量シェアは2018年9月時点で72.6%まで伸長している。一方で、後発品80%目標に向けて立ちはだかる課題も少なくない。

その一つが、後発品の安定供給だ。日医工の抗菌薬・セファゾリンの欠品をきっかけに焦点が当たった。原薬の安定供給の課題に加え、納入価を下げることによるシェア拡大など、一部企業のビジネスモデルを課題と指摘する声もある。自民党の議員連盟「ジェネリック医薬品の将来を考える会」(上川陽子会長)は6月20日、根本匠厚労相宛に、「ジェネリック医薬品の安定供給と品質への信頼性の確保」を盛り込む提言を提出した。特に後発品80%目標が迫るなかで、安定供給、品質に対する信頼性確保、情報発信の取り組みが重要と指摘。「ジェネリック医薬品企業において原薬等の安定供給上のリスクを評価し、問題となる前に行政に相談できる仕組みを構築する必要がある」としている。

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