第一三共 抗HER2抗体薬物複合体「DS-8201」 胃がん適応で20年4~6月に国内申請へ
公開日時 2020/02/03 04:51
第一三共は1月31日の2020年3月期第3四半期決算説明会(電話会議)で、抗HER2抗体薬物複合体の「DS-8201」(開発コード、一般名:トラスツズマブ デルクステカン)のHER2過剰発現の再発・進行性胃がんの適応について、日本で20年度第1四半期(20年4~6月)に承認申請する予定であることを明らかにした。日韓で実施したフェーズ2「DESTINY-Gastric01」の結果に基づき、申請する。DS-8201の同適応は、厚労省から先駆け審査指定を受けており、優先審査される。
試験は、トラスツズマブを含む2つ以上の前治療を受けたHER2過剰発現の再発・進行性胃がん患者または胃食道接合部腺がん患者189例を対象に実施された。
同社によると、DS-8201は治験医師選択薬投与群(イリノテカンまたはパクリタキセル)に対し、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)において、「統計学的に有意かつ臨床的意義の高い改善」を示したという。副次評価項目に据えた全生存期間(OS)については、中間解析で「統計学的に有意かつ臨床的意義の高い改善」を示したとしている。
安全性については、薬剤と因果関係のある肺臓炎を含む間質性肺疾患(ILD)については、グレード3は2例、グレード4は1例で、グレード5(死亡例)はなかった。グレード1または2が大半だったとしている。米FDAは、添付文書に、枠組み警告でILDを記載し、注意を呼びかけている。同社はこのほかに、「安全性上の新たな懸念は認められなかった」としている。なお、試験結果は、米国シカゴで5月に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO )で発表される予定。
DS-8201は日本で19年9月に、T-DM1既治療のHER2陽性の再発・転移性乳がんに対する治療薬として承認申請されている。主に乳がんのサードライン以降の治療で用いることが想定される。同社はこの日、先駆け審査指定を受けた胃がん適応を20年4~6月に申請予定としたが、最初に承認・薬価収載される適応が胃がんとなった場合、薬価に先駆け審査指定による加算がつく可能性がある。同社の高崎渉研究開発本部長は電話会議の質疑応答で、胃がんの承認・薬価収載が乳がん適応より先になる可能性について、「時系列はコメントできない」と話した。
同剤は米国で19年12月にHER2陽性乳がんの3次治療の適応で承認され、米国製品名「エンハーツ」として20年1月から販売されている。同社の眞鍋淳社長は同剤について、「当社創業以来の製品規模になる可能性が十分にある」と話しており、大型化が期待される。
■抗インフルエンザ薬イナビル好調 市場シェア40%強、前年比で倍増
20年3月期第3四半期決算(19年4~12月)では、日本市場での抗インフルエンザウイルス薬イナビルの売上が115億円で、前年同期と比べ71億円の大幅増収となった。同社の齋寿明副社長兼CFOは質疑応答で、同剤の大幅増収について、「市場が薬価ベースで20%強拡大した。イナビルの市場シェアは40数%となり、昨年と比べて倍増した」と述べ、例年よりも早い流行シーズン入りと同剤のシェア拡大の2つが背景にあると説明した。通期で売上210億円(前年比15%増)を目指す。
前シーズンに急拡大した単回経口投与の新規の抗インフルエンザ薬ゾフルーザが、耐性ウイルスの問題で今シーズンは医療現場で慎重な使用になっているといわれており、イナビルが受け皿のひとつになったと考えられそうだ。