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塩野義・手代木社長 新型コロナ影響等で20年度上期進捗率「不満」 下期は製品軸×疾患軸で生産性向上に期待

公開日時 2020/11/02 04:50
塩野義製薬の手代木功社長は10月30日、2020年度第2四半期の決算会見に臨み、国内医療用医薬品についてはサインバルタ、インチュニブが「比較的堅調な伸びを示した」と評価した。ただ、上期は新型コロナの影響もあり、MRによる情報提供活動もFace to Faceの活動が思うほど行えなかったと指摘。同社の感染症薬の上期進捗率が外来受診や手術件数の減少などで68.5%に止まったほか、「その他」に分類される長期収載品や基礎的医薬品が薬価改定の影響から前年同期32億円減となるなど、「上期進捗率としては不満」と述べた。

上期の国内医療用医薬品の売上収益は、主力のサインバルタが135億円(前年同期比4.7%増)、インチュニブが60億円(35.1%増)と伸長したものの、感染症薬が49億円(33.5%減)、クレストールなど長期収載品と基礎的医薬品を含む「その他」は158億円(16.8%減)と上期業績の進捗率を鈍らせる要因にもなった。手代木社長は、新型コロナに伴う受診抑制や手術数の減が要因と述べたが、国内医療用医薬品の上期進捗率が88.8%、対前年同期比8.3%減となったことに対して、「マーケットの中でも古い製品を中心に進捗率が低かった」と分析した。

◎「対面とリモート面談を適切に使いながら情報提供活動を続けている」

新型コロナウイルス感染症下での情報提供活動について同社は、「コロナ禍以前の水準の7割程度まで回復」したと分析。手代木社長は会見で、「対面とリモート面談を適切に使いながら情報提供活動を続けている」と説明した。また、新設したヘルスケア戦略本部と連携して「新しい情報提供のあり方を検討しており、ここについては順調に進展している」と述べ、下期への期待感を表明した。同社の新中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」では、治療薬をコアに、診断・予防・未病・ケアの各段階に取り組むほか、MRの生産性向上やデジタルアプローチによる顧客アクセスの強化などに注力する方針を盛り込んでいる。

◎情報提供活動「まだまだ改善の余地がある」

手代木社長は下期業績予想に触れながら、製品軸×疾患軸の情報提供活動について「生産性はまだまだ向上できる」と強調。「病院を中心に訪問自粛も続いているが、その中でどのようなディテール活動を行っていくかについては、まだまだ改善の余地がある」と意欲を示した。さらに「リモートワークを含めた働き方の改革も進んでいる」と述べたほか、業務プロセスの透明化・効率化について、「この10月から新しいシステムを稼働させた。これにより透明性の高い決定を行っていきたい」と述べ、通期予想の営業利益1103億円は必達したいと強調した。なお、シオノギ渋谷ビルの交換益を含めて通期の営業利益は1332億円に上方修正したが、交換益を除く利益予想に変更はない。

ゾフルーザを含むインフルエンザファミリーについて同社は、新型コロナとの同時流行期を控え、「インフルエンザ感染者の正確な鑑別に貢献したい」としている。手代木社長は、まだ流行期前で先読みが難しいとしながらも、「30~40%くらいのマーケットシェアをゾフルーザで確保するように努力したい」と述べ、現時点での手応えもあるとの認識を示した。

◎新型コロナ治療薬 20年度中の臨床試験開始を断念

手代木社長はこの日の会見で、新型コロナウイルス感染症治療薬について、「20年度中の臨床試験開始目標の断念」を表明した。手代木社長は、「ストレートに言うと安全性、有効性のバランスが現在世界にあるリポジショニングの薬剤とほぼ同程度くらい」と指摘。「最速で(開発して)も3~4年かかる。塩野義が抗コロナ薬として出すのであれば、ゾフルーザ、タミフルぐらいの有効性・安全性のバランスがあるものでなければならない。つまり安全性で言えばプラセボとほぼ有意差が無いくらいのもの。安全性の確立されたものを出さないと世の中から受け入れてもらえないだろうと考えた」と述べ、年度内の臨床試験開始の延期を判断した理由を説明した。ただ、治療薬の創製については継続する考えも表明した。

【20年度第2四半期連結業績 (前年同期比) 20年度通期予想(前年同期比)】
売上高 1484億5200万円(9.3%減) 3181億円(4.6%減)
営業利益 553億800万円(12.5%減) 1332億円(2.0%増)
親会社帰属純利益 493億8100万円(9.2%減) 1197億円(2.0%減)

【20年度第2四半期の国内主要製品売上高(前年同期実績) 20年度通期予想、億円】
サインバルタ 135(129) 282
インチュニブ 60(45) 159
ビバンセ 1(-) 7
感染症薬 49(73) 228
オキシコンチン類 28(31) 54
スインプロイク 11(11) 27
アシテア 1(1) 3
ムルプレタ 1(1) 1
ピレスパ 28(34) 48
その他 158(190) 344
うちクレストール 37(44) 78
うちイルベタン類 17(22) 36
ロイヤリティー収入 773(791) 1483
 うちHIVフランチャイズ 639(649) 1263
 うちクレストール 111(113) 169
 うち「その他」 23(28) 52

感染症薬の構成製品は以下
ゾフルーザ、ラピアクタ、ブライトポックFlu・Neo、フィニバックス、フルマリン、フロモックス、セフテム、シオマリン、 バンコマイシン、バクタ、フラジール、フルコナゾール、イソジン
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