塩野義製薬 田辺ファーマからエダラボン事業買収 希少疾患人材とノウハウ取込み米国事業の基盤強化
公開日時 2025/12/23 04:52
塩野義製薬は12月22日、田辺ファーマから筋萎縮性側索硬化症等治療薬エダラボン事業を買収すると発表した。同日の取締役会で同事業の日米を含むグローバルでの全権利獲得に関する契約締結を決議した。特に同社が熱い視線を注ぐ米国は、タナベファーマアメリカがRadicava事業会社(米国販売名ラジカヴァ)を25年度中に新設し、米国グループ会社のShionogi Inc.が26年4月以降に完全子会社化する。日本を含む米国外地域は、流通業務の移管および製造販売承認の承継時期を今後検討して決定するとした。一方、田辺ファーマも同日の取締役会で、塩野義製薬への事業譲渡を決議した。
◎手代木会長兼社長CEO 「希少疾患に対する複数開発品の早期提供」に意欲
「希少疾患領域で、年間1000億円以上の売上を誇る製品を社会に提供し続けるという使命は、塩野義製薬の果たすべき大きな責任であることを実感している。現在開発を進めている希少疾患に対する複数の開発品も、一日も早く必要とされる患者さまにお届けできるようグループ一丸となって取り組みたい」―。手代木功代表取締役会長兼社長CEOはこう強調した。同社は契約の対価として、手続き完了時に総額25億ドルをShionogi Inc.を通じて田辺ファーマに支払う。加えて一定の条件を満たした場合には、将来の売上に応じたロイヤリティーを支払う。
エダラボンは、田辺ファーマが創製したフリーラジカル消去剤の一般名で、脳梗塞急性期の治療薬として2001年4月に厚労省から承認され、ALSの適応症は2015年に日本で効能追加承認を取得。その後、韓国、米国、カナダ、スイス、インドネシア、タイ、マレーシア、オーストラリア、ブラジルで上市している。日本および韓国では「ラジカット」の製品名で、それ以外の国では「ラジカヴァ」の製品名で販売している。
◎「年間売上1000億円以上で、2026年度以降の売上収益および利益へ継続的に貢献する」
塩野義製薬はエダラボン事業の買収について、「年間売上1000億円以上で、2026年度以降の売上収益および利益へ継続的に貢献する」と見通す。今回の事業買収により、エダラボンのグローバルでの知的財産、販売権等を含む全権利を取得するだけでなく、田辺ファーマから希少疾患領域に精通した人材と事業運営に関するノウハウを取り込むことで、「米国における強力な事業基盤を獲得する」と強調する。こうした背景には、脆弱X症候群やJordan症候群、ポンぺ病など同社が手掛ける希少疾患領域の治療薬開発を推進する狙いがある。加えて、米国市場における「強固な販売基盤の獲得」など、強化される機能や資産などに強い期待感を込めている。
◎田辺ファーマ 事業譲渡により財務基盤を強化 日本市場への再投資を促す
一方で田辺ファーマは今回の事業譲渡により財務基盤を強化し、臨床パイプラインへの戦略的投資やこれから打ち出す将来ビジョンに沿った新たな機会の創出に期待感を表明。「これにより日本の市場への再投資を促し、導入や研究開発を通じたパイプライン拡充をもって、日本の事業基盤を強化する」とコメントした。