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日本医師会・松本常任理事 22年度改定は「病院機能によらず医療提供できる報酬体系を」

公開日時 2021/01/25 04:52
日本医師会の松本吉郎常任理事(中医協診療側委員)は本誌インタビューに応じ、2022年度診療報酬改定の議論が本格化するのを前に、「病院機能によらず、どの医療機関であっても医療を提供できるような改定にしなければならない」と強調した。新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く、小児科や耳鼻科などでは受診抑制も続く。日本医師会の推計で総額医療費が3兆円のマイナスとなり、40兆円前後になるとの衝撃の数字も口にした。松本常任理事は、「コロナとの闘いが長期戦になることを念頭に置いた改定となるだろう」と見通したうえで、地域住民の健康を守るためにも、ベッド数や高額医療機器の使い方など、コロナをきっかけに見えた医療提供体制の在り方を踏まえた診療報酬体系の必要性を指摘した。

インタビュー全文は、Monthlyミクス2021年2月号(2月1日発行)に掲載いたします(会員限定)。

◎新型コロナの拡大影響で20年度の医療費は「40兆円前後」に

20年度(令和2年度)の医療費を支払基金や国保連の2020年9月診療分までの支払確定額に基づき、日本医師会が推計したところ、「40兆円前後」となったと松本常任理事は話す。前年の19年度(令和元年度)の総額医療費は43.6兆円で、「5〜6年前のレベルに落ち込むとの見通しがある」という。20年12月以降、新型コロナの拡大が再び続くなかで、「さらに落ち込む可能性がある」ことも言及した。特に、今冬はインフルエンザも流行してはおらず、小児科や耳鼻科を中心に患者の受診抑制が続く。松本常任理事は、「医療機関経営の悪化が懸念される。今後も調査を継続して把握に努める」と述べた。

そのうえで、2022年度改定については、「次期診療報酬改定は新型コロナの影響で様変わりするのではないか。医療現場の状況が、前回改定前とは異なる状況であるのは明らかだ」と述べた。コロナ禍で医療機関経営が影響を与えるなかでの医療経済実態調査の評価や財源の確保などの課題を口にした。そのうえで、「どの医療機関も経営が成り立つような診療報酬を考えていただけるよう、訴えていきたい。地域住民の命と健康を守るためにも必要であり、まずは全体的な配慮をお願いしたい」と強調した。

具体的な項目としては、新型コロナに関連する診療報酬をあげた。20年には、中等症以上のコロナ患者では、特定集中治療室管理料や救急医療管理加算を3倍、5倍に引き上げるなど特例的な対応もなされた。松本常任理事は、「そもそも、ECMO(人工心肺装置)についてはもともとの点数設計が低いという問題もある。特例的な対応については評価するが、改めてエビデンスをもって考える必要があるのではないか」と指摘した。ただ、「過去の診療報酬改定も一つひとつの点数がエビデンスの積み重ねで成り立っているわけではないので、難しさはある」とも述べた。

松本常任理事はまた、「医療計画にも関係するが、新興感染症を考えると、ベッド数に余裕をもつ必要があることが今回はっきりした」と強調した。これまでECMOやCTなどの台数が諸外国よりも多いことが指摘されてきたが、これがコロナ禍で死亡率の低い一つの要因になっている。松本常任理事は、「ベッド数も、高額医療機器も余力を持った体制を考える必要がある。諸外国より多いとか少ないとかいう議論では済まされない。そこはしっかりと主張していきたい」と述べた。人員についても、”余裕”を持つ重要性を強調。「医師の働き方改革の観点からも、大学病院や基幹病院の人員数も余力が必要だ。そうでなければ、いざという時に医療崩壊につながってしまう」と指摘。「コロナを契機に、働き方改革にはコストが必要だということもはっきりわかった。厚労省だけでなく、文科省にもこの点はご理解いただきたい。診療所でも、防護具などのコストだけでなく、消毒するための時間がさらに必要になるなど、人件費が増加している。こうした点も、支払側にもご理解いただきたい」と述べた。

◎新型コロナ等感染対策 引き続き医療機関経営への影響を訴える

2020年末には、新型コロナ等の感染対策を講じた上で6歳未満の乳幼児に外来診療等を行った場合、初・再診時に、100点(医科)という特例的な加算が21年9月まで算定できることが決定された(それ以降、22年3月末までは50点)。また、必要な感染予防策を講じた医療機関に対して、4月から初・再診料と入院基本料に対して加算を算定できることが認められた。初・再診については1回5点、入院では1日当たり10点が加算される。これまでの経緯からも、基本診療料を上げることが難しいなかで、松本常任理事は一定の評価を見せた。そのうえで、再びコロナの感染拡大が続く現状に触れ、診療報酬上の柔軟な対応の必要性を指摘。「日本医師会としては、引き続き医療機関経営に与える影響を考慮していただけるよう、国民、国、厚労省に訴えていく」と述べた。

◎21年度改定「中間年の改定のような性格が半ばあった」 薬価財源は「診療報酬に充当すべき」

20年末には、新型コロナの特例的な対応と同時に、2021年度から毎年薬価改定を導入することも決定された。松本常任理事は、「薬価だけではない、ある意味、中間年の改定のような性格が半ばあった」との見解を示した。そのうえで、「日本医師会は従来から、薬価改定財源は足りない技術料を補填する意味合いから、診療報酬本体に充当すべきと主張してきた」と説明。「国民負担軽減の必要性は理解する一方で、コロナ禍を踏まえた医療機関の経営影響への観点から、医療現場全体への影響が最小限になるよう配慮を求めてきた」と続けた。最終的には、加藤官房長官、麻生財務相、田村厚労相の3大臣合意を踏まえ、乖離率5%超の品目を対象とすることで決着したが、松本常任理事は、「大規模な薬価改定とされたことは、医療提供者側として誠に遺憾だ」と強調した。

薬価改定の対象範囲を中医協で決める最終局面で、松本常任理事は改定案を一度保留したが、「日本医師会は薬価改定を行うのであればすべて、診療報酬本体に戻すべきということ、もともと足りていない技術料を補うべし、ということを強く求めたためだ。新型コロナへの診療報酬上の特例と薬価改定とはセットだと主張した」と説明。「快く受け入れたわけでは決してないが、最低限のラインとして、ある程度の薬価財源がコロナ対策として評価されるのであれば、ということで妥協した。もともとの考えを曲げたわけでは決してない」と強調した。(望月英梨)
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