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厚労省・田中監麻課長 相次ぐ業務停止で「業界の自助努力を」 製造販売業責務でGQPの検討に着手

公開日時 2021/03/08 04:52
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の田中徹課長は、ジェネリックメーカーが相次いで業務停止命令を受けたことについて本誌取材に応じ、「再発防止に向けて業界の自助努力が必要だ」と強調した。そのうえで、行政による監視指導の徹底や行政当局の連携強化を図る必要性を強調。無通告立入検査について、都道府県を交えて新たにガイドラインを今夏にも策定し、全国的に査察の底上げを図る考えを示した。また、ジェネリックメーカーに対して委受託関係のある製造販売業者の責務についても言及し、「製造販売業として、GQPの在り方についても見直さなければならないのではないかという問題意識を持っている」と述べた。

抗菌薬・イトラコナゾールに睡眠薬が混入した問題などを受けて小林化工は福井県から2月9日、最長となる116日間の業務停止処分と業務改善命令を受けた。3月3日は、ジェネリック最大手の日医工が、富山県から富山第一工場の32日間の業務停止命令と、医薬品製造販売業として24日間の業務停止処分を受けた。

◎一企業としてのガバナンスやコンプライアンスの問題だ

田中課長は、「薬機法違反が問題なのは言うまでもないが、今回発生した事案はそれ以前の、一企業としてのガバナンスやコンプライアンスの問題だ」と指摘する。薬機法は、製薬業界の一員として当然守らなければいけない最低限のルールだが、「まずもって一企業体として、社会通念上、当然に守るべき規範意識やルールというものがあるはずだ。今回の問題は、薬機法違反以前の企業体質の問題であり、国内企業に対する信頼のうえに成り立つ我が国の市場経済に対して国民の不信感を招いた責任は重大だ」との見方を示す。

◎日医工問題は「大変衝撃」 業界全体の問題として「深刻にとらえてほしい」

「製薬企業は本来、保健衛生や健康増進に貢献する崇高な産業であるはずだ。それにもかかわらず、なぜこうしたことが起きるのか。特に、“3大ジェネリック”と称される日医工で、今回のような事案が発生したことは大変衝撃を受けており、業界全体の問題として深刻に捉えてほしい」と問題意識を露わにする。

◎製造部門や品質管理部門の人員配置が企業や品目の規模に見合っているか「もう一度検証を」

問題が起きた背景には、国が後発品使用促進を掲げるなかで、ジェネリックメーカーの熾烈な競争があるとの見方を示す。後発品の特性として、市場規模が決まっており、同じ品目でパイをお互いに奪い合う構図があるとの考えだ。

小林化工の従業員は800人だが、500品目承認書通りに製造するには、十分なマンパワーとは言えないのではないか、と指摘。「“売らんかな”の意識で、安全部門の人員を削っていたのではないか。後発品の使用促進という政策目標は大事であるが、法令遵守や、品質や安全性の確保が大前提であることは申し上げるまでもないこと」と断じた。そのうえで、「GMPを遵守するために、製造部門や品質管理部門の人員配置がどの程度必要なのか。業界全体として、品目数に見合った企業規模となっているのか、もう一度検証する必要があるのではないか」と指摘する。

◎「業界団体として危機感をもって、実効性のある取り組みを」

ジェネリックメーカーは中小規模の企業が多いとして、問題解決のためには、「業界の再編を視野に入れることも必要ではないか」と述べた。業界団体である日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)に対しても、「自分たちで律することができないのであれば、規制を強化しないといけない。そうならないよう、例えば、第三者が入った監査組織を作るなど、業界団体として、危機感をもって、実効性のある取り組みを行ってほしい」と強調する。

ジェネリックを製造販売する企業が200社近くあるなかで、GE薬協に加盟する正会員が39社であることにも問題意識を示し、「200社すべてとは言わないまでも、過半数程度会員として取り込んでいただいた上で、協会に加入するためには、協会独自の自主基準をクリアーしていることを要件とするなど、ブランド価値を高めていくような取り組みも必要ではないか」と注文をつけた。

◎無通告立ち入り検査でガイドライン策定 ブロック単位での相互査察も一考

一方、行政側にも課題はあった。小林化工も日医工も、福井県や富山県が年に数回立ち入り調査に入っていたが、長年に及ぶ不正を見抜くことはできなかった。2020年には厚労省、PMDAとあわせて100回程度の無通告査察を実施しているというが、この実施回数を増加させる方針を示している。ただ、無通告立入検査については、これまでガイドラインがなく、バラつきがあった。このため、厚労省、都道府県、PMDAが参画して今月中に開催するGMP当局会議で調整を進める考え。今夏にもガイドラインを策定し、無通告立入検査の水準向上と平準化を図りたい考えだ。

田中課長は、「これまでは、当たり前のことはできているはずだという“性善説”に基づいて調査を行ってきたが、当たり前のことさえできていない企業もあるという“性悪説”に立って調査する」必要性を指摘した。地元密着企業も多いことから、他都道府県の当局が立入検査に入るなど、ブロック単位での相互査察を増やす考えも示した。

◎行政処分は「国民の信頼失墜行為か否か」を新たに基準に


行政処分についても、国と都道府県で基準を適正化する考えだ。「今般、”処分が甘いのではないか”という指摘もあった」と説明。新たに「国民の信頼失墜行為か否か」などの要素を処分基準に組み込むなど、処分基準の適正化を図る。また、処分の軽重、事案発見から処分までの手順などの基本的な考え方を国と都道府県で共有し、処分基準の平準化を図る。

このほか、今年8月に改正薬機法の施行が予定されるなかで、法令順守体制の整備にかかわる規定について可能な限り前倒しして実施するよう、製薬企業側に依頼した。

◎製造販売業者の責務として、GQPの見直しも視野

もう一つ大きな課題と言えるのが、製造販売業の在り方だ。小林化工問題では委受託で同社が成長しただけに、他社が製造販売するケースも多かった。具体的には、小林化工が製造業者として製造し、あすか製薬、富士製薬、エルメッド、第一三共エスファ、ニプロESファーマ、日新製薬、日本化薬、Meiji Seikaファルマ、セオリアファーマ、共創未来ファーマが製造販売業者となっている。

製造販売業者の許可要件としては、GQPに、市場への出荷の管理や製造業者(ここでは、小林化工)が適切な製造管理・品質管理を行っていることを確認する管理監督責任があることが明記されている。同課ではすでにこれら企業と面談や書面を通じて、調査を行ったという。田中課長は、「本来であれば、製造業と同様に、製造販売業者も責任を問われてしかるべき」と指摘。今後、製造販売業者の責務として、GQPのあり方の見直しにも着手する考えを示した。



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