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官民対話で製薬業界 感染症治療薬へのプル型インセンティブの導入求める 製薬協・中山会長「薬価では解決しない」

公開日時 2021/05/18 04:53
国民から純国産の新型コロナワクチンの登場を待ち望む声が高まるなかで、5月17日に開かれた革新的医薬品創出のための官民対話で日本製薬団体連合会(日薬連)は「AMR 感染症治療薬における新しい償還制度(サブスクリプションモデル等)の導入」を訴えた。官民対話後に開かれた会見で、日本製薬工業協会(製薬協)の中山讓治会長(第一三共常勤顧問)は、「感染症については、プル型インセンティブが必要だ。基本的には薬価では解決しない問題だ」との見解を表明しており、焦点となりそうだ。

◎田村厚労相 「エコシステムと盤石な危機管理体制を築くビジョンを打ち出したい」


この日の官民対話は、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2021)への反映を目指す「医薬品産業ビジョン2021」について、産業界から意見を聞く目的で開かれた。田村憲久厚労相は、「医薬品産業ビジョンにおいては、エコシステムと盤石な危機管理体制を築くために骨太のビジョンを打ち出したい」との考えを示した。

コロナ禍で、新型コロナワクチンや治療薬の開発への期待されるなかで、国民からの医薬品産業への期待は高まっている。一方で、新型コロナワクチンとして、申請・承認されているものすべて海外で開発されており、純国産の上市にはまだ時間がかかる状況にある。

会議の冒頭で、田村厚労相は、「国民から、国産ワクチンがなぜ開発されないのかという厳しい声も寄せられている」としたうえで、医薬品産業を取り巻く環境変化が激しいなかで、「日本の製薬産業が革新的新薬を生み出し、グローバルに競争していくことができること、また国際的に見て投資価値がある魅力的な市場であり続けることが非常に重要だ」と述べた。

三ツ林裕巳内閣府副大臣、高橋ひなこ文部科学副大臣新型コロナワクチン・治療薬の開発に言及した。三ツ林内閣府副大臣は、「国産ワクチンの開発は菅政権として極めて重要。健康・医療戦略本部の医薬品開発協議会の中にワクチン開発・生産体制強化タスクフォースを設けて議論し、政府としての対応案を取りまとめるべく進めている」ことを紹介。高橋文部科学副大臣も、「コロナを受け、緊急時の迅速な対応を可能とするよう、官民を挙げて平時から継続的にワクチン等の最先端の研究に取り組み、新たな脅威に立ち向かう、そのための多様な研究分野の融合を図る」と述べた。

日薬連は、「国家安全保障上、平時から感染症対策が必要」と強調し、「ワクチン産業や感染症治療薬の創製への支援」を訴えた。日薬連の手代木功会長(塩野義製薬社長)はサブスクリプションモデルやプル型インセンティブの医薬品産業ビジョンへの反映を求め、厚労省医政局経済課の林俊宏課長は、「ご指摘の点も重要な課題と認識している。一方で、どこまで産業ビジョンに盛り込めるかは今後の議論次第」と応える一幕もあったという。このほか、日薬連は日本版EUA(緊急使用許可)の法制化や条件付き早期承認制度の弾力運用なども訴えた。

◎製薬協・中山会長「平時からの取り組みが不可欠」 国もサポートを


官民対話後の会見で、製薬協の中山会長は、「感染症への取り組みは平時からの取り組みが不可欠だ。コロナが終息したとしても、感染症は必ず人類を襲う。その時に備え、対策を整備していく必要がある」と訴えた。インセンティブの在り方については、「特に感染症については、プル型インセンティブが必要だ。国家備蓄ということでもいいと思う」と表明した。

中山会長は、AMRなどでは医療現場でのニーズが高い一方で、新たな耐性菌の発現を防ぐためには、むやみな使用を推進できないと指摘。「実際は売ることのできない薬を作っているので、その会社は開発費を回収できない。プル型インセンティブで、この耐性菌に対する抗菌薬を開発できれば、一定の収入を補償するとなれば次の開発ができる」と述べた。実際、AMRの開発をした米国の2社の企業は倒産したことも紹介した。

「コロナもそうだ。ピタッと終わると、今開発している会社はすべて、ご苦労様でした、おしまいということになる。継続的に感染症と闘うためには、民間だけでなく、国家もサポートしてプル型インセンティブを作る必要がある。基本的には薬価では解決しない問題だ」と述べた。すでにアビガンを国家備蓄するなど、一部で取り組みも進められているが、「制度化し、もう少しクリアに、どれくらいの金額ということがわかれば、もっとたくさんの企業が開発に参加できるようになると思う」と述べた。

この日の官民対話で製薬業界は、特許期間中の薬価維持も訴えた。中山会長は、新型コロナをはじめとした感染症領域以外の領域でのイノベーションのための主張だと説明した。そのうえで、「特許が終わる10年か15年したらゼロになる。安いジェネリックに変わって、もっと広く多くの人に安価でイノベーションが届くことになる。イノベーターはたかだか10年か15年かしかビジネスはできない世界だ。それを含めてその期間だけは適正な評価をしていただきたい。そうでないと、投資の回収ができない」と訴えた。

◎製薬協 DX加速へ基盤整備求める「デジタル庁発足のいまが好機」

製薬協は研究開発力強化に向けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けたデジタル基盤の強化を求めた。中山会長は、Society5.0に重きが置かれるなかで、デジタルトランスフォーメーション(DX)で「最も飛躍するのが、ライフサイエンス」との見解を表明。その加速に向けて、「最も重要なファクターは健康医療ビッグデータの構築だ。電子カルテから得られる医療データや遺伝子データ、ウエアラブルデバイスなどから得られる様々なデータを組み合わせることで、医薬品の研究開発のスピードや成功確率が向上するなど、創薬の効率は飛躍的に向上する」と強調した。

特に、電子カルテからの情報など、健康医療データの基盤構築の必要性を強調した。中山会長は、「日本は世界で最も遅れているとされている。デジタル庁が発足するいまを好機と捉え、デジタル基盤の構築を強力にすすめていただきたい」と訴えた。






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