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流改懇で林経済課長 一次売差マイナス解消へ仕切価引き下げを要請「割戻しの整理・縮小も」 流通改善GL今秋発出へ

公開日時 2021/07/05 04:52
厚生労働省は7月2日の「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」(流改懇)に、流通改善ガイドラインの見直しの概要を提示した。一次売差マイナスの解消に向け、「仕切価交渉のあり方」について言及。割戻しについては仕切価に反映し、「整理・縮小する」ことを盛り込んだ。製薬業界側が記載の見直しを求めたのに対し、厚労省医政局の林俊宏経済課長は、「仕切価を下げていただく。下げていただくということは原資としては割戻しがなくなるだろう、という理解のもとだ」と述べた。一方、医薬品卸と病院・薬局間の川下取引では単品単価交渉の推進や、「年度内は妥結価格の変更を前提とした再交渉を原則行わない」ことなどを盛り込む考えも示した。同省は、医薬品産業ビジョンの内容を踏まえ、今秋にガイドラインを改訂する方針。

◎仕切価率0.2ポイント増 カテゴリー別の仕切価見直しの理由を提示 

厚労省はこの日の検討会に、流通改善ガイドラインの見直しに向けた叩き台を示した。製薬企業・医薬品卸間の川上取引では、「仕切価交渉のあり方」を盛り込んだ。一次売差マイナスの解消に向けて仕切価水準の適正化を図るとともに、割戻しが卸機能の適切な評価につながる必要性を指摘。「割戻しは卸機能の適切な評価に基づくものとし、仕切価に反映可能なものについては反映したうえで割戻しを整理・縮小する」、「仕切価・割戻しについては、メーカーと卸売業者との間で十分に協議のうえ、設定を行う」ことを明記する考えを示した。

実際、2020年度の仕切価率(95.1%)は前年度に比べ、0.2ポイント上昇した一方、納入価率(91.4%)は0.6ポイント減少しており、一次売差マイナスが拡大している状況にある。割戻し率は前年度と同じ5.9%と同水準での推移が続いている。厚労省はこの日、カテゴリー別に見た仕切価の見直し・変更状況も提示。仕切価を引き上げたのは、新薬創出等加算品で8.1%(32品目)、特許品で12.2%(42品目)、長期収載品では9.7%(136品目)、後発品では30.6%(2700品目)となっている。新薬創出等加算品や特許品では、「製品価値を踏まえた対応」が多いが、長期収載品や後発品では、「薬価引下げに伴う経営への影響を鑑みた対応」が最多となっている。

◎製薬協・土屋流適委員長 仕切価率上昇の一因はスペシャリティ医薬品増加

土屋直和委員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長、田辺三菱製薬)は、仕切価修正的な割り戻しについては仕切価への反映を行っていると説明。仕切価率の上昇については、「医薬品市場の構成変化が影響している。近年、スペシャリティ医薬品や新たなモダリティの医薬品等、高度で専門性の高い医薬品の売上割合が増加していることが要因の一つ」と説明した。宮川政昭委員(日本医師会常任理事)は、「具体的なことがわからない。どこまで範囲として考えているのか、品目数や医薬品名がわかりづらい」と指摘。土屋委員は、「具体的には抗腫瘍薬などについて、また高額な医薬品が最近は増えている。そういうものをスペシャリティ医薬品と定義した」と説明したが、宮川委員は、「温度管理や期限問題、輸送時の取り扱いなど、色々なことにかかわる。何をもってスペシャリティか、何をもってモダリティと言うのかはっきりしないと言葉だけの遊びになってしまう。語句の整理をしっかりしてほしい」と指摘した。

また、仕切価率の上昇について土屋委員は、「2018年から4年連続薬価改定ということで、急速に薬価改定が毎年行われることで製造コスト、販売コストは変わらず、原価率が上がってしまってそういうなかで仕切価が上昇してしまう製品が出てきた。そういう結果として全体の仕切価の水準を見ると若干上がってしまっている」とも説明した。森昌平委員(日本薬剤師会副会長)の「細かく見ていかないとわからないということか」との問いに対しては、「個々の医薬品の銘柄別収載が薬価基準だ」と述べ、医薬品の価値に基づくことの必要性を強調した。

こうしたなかで示されたガイドラインの見直し案について、熊谷裕輔委員(製薬協流通適正化委員会副委員長、アステラス製薬)は、2018年の事務連絡発出以降、各社が取り組みを進めてきたと説明。「我々としても当然、縮小ありきという形になると、”割戻しの縮小=卸機能の縮小”となっていく。高度な管理が必要な医薬品が出てきたときに新たに評価を足すことも考えると、縮小という言葉は適当ではない。ぜひご検討いただきたい」と述べた。

林経済課長は、「縮小が目的ではなく、仕切価に反映可能なものは反映していただく。仕切価を下げていただく。下げていただくということは原資としては割戻しがなくなるだろうという理解のもとだ」と説明した。これに対し、熊谷委員は「仕切価は製品価値として設定し、割戻しは卸機能の評価と区分けしている」と述べ、改めて訴えた。

◎自主回収などの費用負担「当事者間で十分協議」 宮川委員「メーカーの問題も非常に大きい」

このほか、昨年末から頻発する後発品の自主回収で流通コストが増加している実態も議論になった。ガイドラインでは、「必要な経費負担については、当事者間で十分に協議する」ことを明記する方針も打ち出されている。

眞鍋雅信委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、「流通コストは物流コストだけではない。代替品を確保する上での調査や新たな調達、その他なかなか目には見えないが事務負担を含めて大きなコストが発生しがちだ。この1年超に渡って断続的にこのような状況が起きている。その意味では、流通コストが増加している」と説明した。宮川委員は、「メーカー都合の回収、包装変更の対応、医療機関の返品、代替品の確保などを卸だけに任せていいのか」、「メーカーの方の問題も非常に大きい」と指摘。眞鍋委員も、「流通=卸となってしまいがちだが、流通当事者にはメーカーも病院もかかわっていくということなので、流通当事者全員の問題として取り組んでいくべきだと思う」と訴えた。

◎価格交渉段階から単品単価交渉を 実態調査実施へ


川下取引については、ガイドラインに「価格交渉の段階から個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉を進めること」を盛り込む方針を示した。総価取引の除外品目を増やすなど、単品単価交渉の範囲を拡大することも求める。製薬業界や医薬品卸側は、単品単価交渉をめぐる実態調査の実施を求め、林経済課長も「実態把握を我々の方でもしていきたい」と応じた。

一次売差マイナスの解消に向け、「仕切価に医薬品の価値と安定供給に必要なコストを踏まえた価格設定を行い、保険医療機関・薬局にその必要性と根拠を説明するなどにより価格交渉を進めること」も盛り込む考え。

また、未妥結減算の適用を免れるために、9月以降の下期に価格引下げを目的とした再交渉が行われていると推察されるデータも提示。「期中で薬価改定(再算定等)があるなど、医薬品の価値に変動があるような場合を除き、年度内は妥結価格の変更を前提とした再交渉を原則行わない旨」を明記する方針が示された。

このほか、返品については、医療機関・薬局に対し、「在庫調整を目的とした返品は特に慎む旨」を明記する方針を示した。

◎迫井医政局長 流通改善へ「一人ひとりが意識を」

流通改善ガイドラインをめぐっては6月18日に閣議決定された新たな成長戦略実行計画でも、一次売差マイナスや総価取引などの商慣行の問題に触れ、「これら改善に向けて流通改善ガイドラインの見直しを含めた対応策の検討を行う」と明記されている。迫井正深医政局長は、「異例というか画期的と言えるような事象」と説明。医薬品流通への社会からの関心の高さも指摘し、「行政を含めて関係者の皆さんが一人ひとり意識することが必要だという風にあえて申し上げる」と述べた。
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