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NPhA 直近6か月の後発品数量シェア1.4ポイント低下 自主回収や出荷調整の影響で「衝撃的な数字」

公開日時 2021/08/06 04:53
日本保険薬局協会(NPhA)の医療制度検討委員会は8月5日の定例会見で、後発品の数量シェアが、直近の半年間で1.4ポイント下がったとの緊急調査結果を公表した。2021年6月時点の後発品数量シェアは83.7%で、20年12月の85.1%から急下降している。NPhAの首藤正一会長(アインホールディングス)は、「衝撃的な数字」との見解を示した。調査結果からは、自主回収や出荷調整で後発品の供給確保が難しいなかで、在庫管理に時間や手間を取られ、後発医薬品に不信感を抱く患者への説明に腐心する薬剤師の姿も浮き彫りになった。

◎医療制度検討委員会が緊急調査 

NPhAの医療制度検討委員会は、薬局薬剤師を対象に、薬局における後発医薬品供給の現状を把握する目的で、ヒアリングなどを含めて緊急調査を実施した。回答期間は、7月30日から8月4日まで。

◎供給不安、患者や処方医への対応に奔走する薬剤師の姿


調査結果からは、供給不安や患者対応、処方医への対応に奔走する薬剤師の姿も浮かび上がる。特に自主回収や出荷調整で、医薬品の安定確保にも困難がはらむ。卸からの欠品連絡が日々、数件~数十件あるとの声も。「1 日 3 品以上の欠品がでており、10品を超える欠品が週に1 回程度ある(欠品数は7月だけで122 件)」、「発注時、毎日 1 品目は欠品や遅延がある」などの声があった。これに伴って、薬剤師の日常的な業務にも大きな影響が出ている。「翌日の午前中の多忙な時間帯に卸から入荷しないと連絡が入り、手配の電話対応に時間がかかり、大変なストレス」、「調剤業務をするにあたり採用メーカーの把握が負担となり、作業負荷が2 倍増加した」、「採用可能品の問い合わせが10倍となった」など、在庫管理などに要する時間や手間が増えたという声が多数あった。

◎患者の苦情、先発品への切り替え、入荷のメド立たず-「現場が疲弊している」との声も

後発医薬品への不信感が国民、患者のなかで増大するなかで、対応に苦慮する姿も。「患者からの問い合わせや苦情が 1 日に数件来る」、「後発医薬品の銘柄変更や先発への変更で、特に高齢者への説明に時間を要した」、「発注しても欠品が多く、入荷のめどが立たないため、届き次第郵送になる事があり、患者にも薬局にも負担が大きい」、「前回同様の後発をお渡ししたが、“この時期に問題を起こしている後発を出すのは薬局としておかしい”とのクレームがあり、先発に変更した薬剤をご自宅まで届ける事態となった」との声が寄せられた。「比較的安定供給が可能なメーカーへ変更することで薬価増により患者ご負担が増えることの説明など理解を得るのに現場が疲弊している」など、患者負担への影響を懸念する声もあった。

「規格違い品が手に入らず、半錠にして分包の上交付する事例も発生」、「複数メーカー在庫する形となり、過誤のリスクに気を付けている」など、調剤業務が煩雑になっている姿も垣間見える。

こうした状況の改善に向け、「処方医への代替品の提案や、出荷調整の連絡が増えた」、「先発への変更または治療方針の変更を主治医と相談が必要になる」など、処方医との連携を密に取る姿も。「先発品も入荷が滞ったため、医療機関へ別成分への処方変更を依頼する事態になり、治療への影響が出る事例も数十例でている」との声もあった。

◎首藤会長「GEメーカーは素早い対応を」

製薬企業からの情報提供をめぐっては、「ジェネリックメーカーのMRの人数に限りがあるため、回り切れない医院などがあり、処方医に早いタイミングでの説明が困難」、「コロナ禍でMR が病院への情報提供ができておらず、処方変更の疑義照会時に医師からは“初耳だ”とやや不満気味に回答された」などの声も。首藤会長は、「ジェネリックメーカーには、素早い対応をしていただきたい。現場は遅くなるほど対応が大変になる。スピード感をもって情報提供していただきたい」と訴えた。

◎後発品数量シェア 20年12月の85.1%をピークに下落 小林化工問題が発端

国が後発品の数量シェアを20年9月までの80%と掲げるなかで、後発品数量シェアは順調に推移してきた。会員435薬局を対象にした調査では、後発品数量シェアは20年7月に84.1%、12月に85.1%まで伸びた。しかし、昨年末に小林化工のイトラコナゾールに睡眠薬が混入したことが判明して以降、一転して減少に転じた。21年1月に84.8%、2月に84.9%、3月に84.6%、4月に84.5%、5月に84.4%、6月には83.7%まで落ち込んだ。

これまで数量シェアが伸びていた311薬局のうち、95.5%に当たる297薬局が減少に転じた。自主回収や出荷調整も相次いでおり、後発医薬品の供給不安が拡がることが想定されるなかで、後発医薬品の使用促進にさらにブレーキがかかる可能性も高い。「全患者・処方量の多い品目が出荷調整となり、先発品を使用したことにより、後発品の調剤率が下がり、大幅な減算となった」との声も、調査では寄せられている。

供給不安が実際に影響している品目としては、プランルカストやオロパタジンなどの抗アレルギー薬、アルファカルシドールなどについての声が寄せられている。「エルデカルシトールが尽きるが先発・後発とも供給されずアルファカルシドールも供給不足、代替品がない状態で疑義照会をしていくこととなる」、「エルデカルシトール、オロパタジン、カモスタットは先発品も納品されない状態になっている」、「流通が悪く、先発に変更せざるを得なかった品目がある」などの声があった。「製造元メーカーが公表されていない委託販売などが、突然出荷停止となる」との声もあった。

後発品80%時代に入り、2022年度調剤報酬改定を前に財務省が後発医薬品調剤体制加算の見直しが議論となっているが、「そういうことを議論できる状況にない。維持するだけでも大変だ」と危機感を露わにした。
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