中医協総会が８月26日に持ち回りで開催され、新型コロナで入院加療を実施している患者について、救急医療管理加算を４倍（3800点）に引き上げるなどの特例的措置を了承した。これまでの特例措置では、中等症以上の患者に限らず、抗体カクテル療法を実施するための入院でも対象としている。また、呼吸不全管理を要する中等症Ⅱ以上の患者についての特例措置は、救急医療管理加算を６倍（5700点）とすることも了承された。

新型コロナの第５波による感染の急拡大で、50代の患者が増加するなど、患者の若年化が進んでいる。こうしたなかで、ECMOを使用するほどの重症患者ではなく、高用量酸素や非侵襲性換気などを使用する患者が増加。こういった患者の急性呼吸窮迫症候群（ARDS）がまん延する傾向にある。また、中等症でも酸素化が悪いような重篤な患者が多く、より医療的に酸素化の状況や身体所見などをよく観察する必要があるという。一方で、回復は高齢者に比べ早いケースも多く、短期間の入院で済む一方で、入院初期の手間が増加しているなどの変化がある。

今回の特例措置はこうした状況を踏まえ、「入院加療を実施している患者」について、救急医療管理加算を現行の３倍（2850点）から４倍（3800点）に引き上げる。これまでは、酸素療法が必要な中等症以上の患者に限っていたが、免疫抑制状態にある患者の酸素療法が終了した後など、急変リスクを踏まえて宿泊療養・自宅療養の対象とすべきではない患者も対象に加えた。抗体カクテル療法のために入院管理が必要な患者も含まれる。

また、呼吸不全管理を要する中等症Ⅱ以上の患者については、救急医療管理加算を５倍（4750点）から６倍（5700点）に引き上げる。

◎診療側「特例的評価の引き上げは妥当」　支払側と公益側「引上げ効果の検証を」

診療側の日本医師会委員（城守国斗委員、松本吉郎委員、長島公之委員）は、「今回提案された特例的評価の引き上げについては妥当」との考えを表明。医療全体の総力戦が求められている状況にあるとして、「今後も引き続き、入院のみならず、外来や在宅など、広くニーズをとらえて、現場のニーズに合致した、より実効性のあるさらなる診療報酬上の支援の拡充についても検討すべき」とした。

一方、支払側と公益側からは、提案自体は了承するものの、引き上げによる効果を検証する必要性があることを指摘する声が複数あがった。「各医療機関が呼応し、受入れ可能病床数が着実に増加しているかについては、しっかりと検証する必要がある」（支払側・幸野庄司委員・健康保険組合連合会理事）、「診療報酬の引き上げや各種補助金が、実際にコロナ病床や病院の医療従事者の増加につながったのかの検証が必要」（公益側・飯塚敏晃委員・東京大学大学院経済学研究科教授）などと指摘した。

支払側の安藤伸樹委員（全国健康保険協会理事長）は、「具体的な水準については根拠がないことから検証もできず、意見を表明すること自体が困難」とした。さらに、「現在の喫緊の課題である病床確保という点では、診療報酬引上げの効果は限定的であり、この診療報酬上の特例的な対応のみでは、課題は到底解決されるものではない」と指摘。「目的と効果のミスマッチを踏まえれば最善の策ではないことは明らかで、診療報酬というツールで対応すること自体にも疑問がある。医療現場の支援に当たっては、診療報酬上の対応と公的費用での対応とを明確に区別することが必要」とした。

公益側からも、「コロナで浮き彫りになった医療提供体制の課題の多くは，診療報酬のみでは解決するものではなく、総合的な視点で（部局を超えて）議論し、大きな方向性を見定めて解決に向けて取り組んでいただく必要がある」（秋山美紀委員・慶應義塾大学環境情報学部教授）、「新型コロナウイルス感染症患者のために必要な病床数を確保するために、何がボトルネック（障害）になっているかを予め調査（ヒアリングなどで）をしたうえで、それらのボトルネックを解消するために最も効果的な施策について検討し、効果的と思われる施策に対して診療点数や要件の設定を行う必要があろう」（中村洋委員・慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授）などの声があがった。