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厚労省・医師の働き方改革検討会、「C-2水準」の高度技能を継続審議に 

公開日時 2021/09/21 04:50
厚生労働省は9月15日、第15回目の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。同検討会では過去3回の検討会での意見を踏まえて資料の補足等を行ったほか、医療機関勤務環境評価センターにおける評価結果の公表方法について議論。一通りの論点は検討し終えたことから、検討会としてのとりまとめを目指した。ただ、「C-2水準の対象分野・技能」の考え方で意見が対立したため、次回以降、修正案をもとに検討することになった。

◎対象分野・技能を明確化していくべき

C-2水準は、医師免許所得後6年目以降の医師が、高度な技能を有する医師の育成が必要とされる分野において、技能の習得に関する診療業務を行う場合に適用される時間外・休日労働の上限水準(年間1860時間以下)。対象となる分野は改正医療法上、「医療の分野のうち高度な技能を有する医師を育成することが公益上特に必要と認められるものとして厚生労働大臣が公示したもの」とされている。

前回および今回の検討会においてC-2水準の対象分野の考え方として、医学の進歩とともに高度な技能が必要となる領域は限定されないとの理由から「日本専門医機構の定める基本領域(19領域)」が示された。対象分野を国あるいは高度技能の可否を検討する審査機関があらかじめ範囲を示しておかないと医療機関や医師の申請が困難となるからだが、「19領域」というのはあまりにも広範囲であり、高度技能の具体的なイメージが掴みづらい。そのため会合では、対象分野・技能をもう少し明確にしていくべきではないかとの意見が相次いだ。

横浜市立大学医学部産婦人科客員研究員の鈴木幸雄構成員は、「C-2水準は日本の未来の医療を支える重要な枠であるので、そこを明らかにしていくことは難しいと理解しているが、現状ではどういったものが対象になるのかが見えづらい。やはり何らのかたちでどういった技能が対象になっていくかというのが見える仕組みが必要だ」と指摘。そのうえで、「C-2水準がなかなか絞りきれないと皆さん思っているけど、実際運用していくときにいろいろな地域でC-2水準の適用が乱立するようなかたちになるのは好ましくない」との見解を示した。

同じく国際医療福祉大学大学院教授の島崎謙治構成員も、C-2水準の対象として改正医療法上に記載されている「特に必要と認められる医療の分野」という文言を引き合いに出し、対象となる分野・技能を限定すべきと主張。また、審査組織における審査基準が明確でないことに触れ、「雨後の筍とは言いすぎかもしれないが、基準がはっきりしていないためになし崩し的に対象が拡大し、高度技能を習得する医師の養成が分散化されることが一番大きな問題」と指摘した。さらに同検討会の中間とりまとめに盛り込まれた「高度に専門的な医療を三次医療圏単位またはより広域で提供する」との文言を取り上げ、「二次医療圏単位ではなく、もっと広域的な範囲で提供されるような高度技能が想定されているということ。この『三次医療圏またはより広域』を追加することによって、ある程度の限定をかけていただきたい」と要望した。

◎S、A~Dの5段階評価見送り 全体評価は定型文のみに


一方、日本医師会女性医師支援センター長の今村聡構成員は、島崎氏の発言に対して「雨後の筍のようにという話だが、高度技能については医師と同時に所属する医療機関も申請し、審査組織もそれぞれ専門家が集まって議論していくので、申請されたものがやみくもに認められていくという理解はしていない」と牽制。そのうえで「医療は日進月歩で、一つ一つこういうものが高度技能だと絞るのはなかなか難しいので、ある程度の事例を集めながら皆の合意になっていけばいいのではないか」と述べた。

日本医学会副会長(東海大学医学部長)の森正樹構成員も今村氏と同様の考えだ。「C-2水準については基本となる19領域の学会に意見を求め、それぞれの関係する2階建て、3階建てのサブスペシャリティ領域の関係者の意見をまとめている。それだけ多岐にわたる領域を何らかの尺度でくくるというのは極めて難しい作業。したがってそれぞれの領域から出てきたものをそれぞれの専門家で審議したうえで、これは高度技能に該当するのではないかという事例を積み重ねていくことが重要だ」と認識を示した。

ただし、鈴木氏や島崎氏も一歩も引かず、鈴木氏はサブスペシャリティ領域の研修施設の指定が年々増加することにより症例の奪い合いが起こっている現状を挙げ、「C-2水準を適用した施設にも同じことが言える。効率的な研修という観点からどういった施設に高度技能を集中させるかといった観点が必要ではないか」と問題提起。島崎氏も「鈴木氏が言ったことは決して杞憂ではない。ある程度審査をしながら実績を積むのは必要だが、言いたいのは、高度技能を集積していくのか、あるいは分散化を招いていいのかということ。医療政策の基本にかぶる話だからこそ、こだわっている」と述べた。議論は平行性を辿り、鈴木、島田両氏に同調する構成員も少なくないことから、C-2水準の対象となる分野・技能については引き続き検討していくことになった。次回の会合までに事務局が修正案をまとめる。

なお、医療機関勤務環境評価センターによる全体評価の評価結果については、医療機関の優劣を示す趣旨ではないことから、これまでS、A~Dの5段階を表記した案を取りやめ、「医師の労働時間短縮に向けた医療機関内の取組は十分に行われているが、労働時間短縮が進んでいない」など、定型的な文章のみで示す案に修正され、了承された。2022年度から評価センターによる書面審査が始まるが、前回の会合で「全体評価の案について、S、A~Dという記載になると、病院の優劣を強く印象づけ、評価がいまひとつの病院はブラック的な病院なのではないかといったイメージを持たれかねない」など意見が出され、見直しが求められていた。
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