厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の佐藤大作課長は11月８日、本誌取材に応じ、ジェネリックメーカーが相次ぐ行政処分を受けるなかで、「生命科学を支える企業として、きちんとしたコンプライアンス・ガバナンスができ、社会的責任を果たせる会社になってほしい」と述べた。「法令遵守体制をしっかり構築してほしい。それができれば、行政処分を受けることも供給不安に陥ることもない。根本をしっかりやってほしい」と強調した。「取り締まりは結果論であって、健全な産業を作ることが目的だ」とも語った。監視指導・麻薬対策課は販売情報提供活動ガイドラインに基づく監視事業も所管するが、「企業統治、法令遵守体制の一環という意味では、社内体制として整えてほしいということは共通するし、これに尽きる」とも述べた。

今年に入り、小林化工、日医工、長生堂製薬とジェネリックメーカーへの業務停止命令が相次いでいる。自主点検を実施するなかで、GMP違反が発覚する例も少なくない。こうした状況について佐藤課長は、「長い期間、法令遵守ができていない状況が維持されていたことが表現型として見えているに過ぎない」と指摘した。

◎ＧＥメーカーなしで医薬品供給は成り立たない　企業統治できる会社となるよう支援

自身が医薬安全対策課長を務めていた2016年に化血研が業務停止命令を受けたことを振り返り、「いま見ている問題は、当時の化血研と似たり寄ったりである面は否めない。これが業界の体質と言ってしまえばそうなのかもしれない」との見方を示した。そのうえで、「企業体質にしても法令遵守にしても、化血研からすべて抜け出していない」と指摘。「（ジェネリックメーカーは）法令順守違反や供給不安で迷惑をかけている状況にあるが、彼らなしに医薬品供給は成り立たない。企業統治（ガバナンス）ができる会社となっていただけるよう、行政としてどのようなお手伝いができるかという視点でモノを見るようにしたい」と表明した。

ガバナンスの強化に向けて、「保健衛生を支えている企業であるという視点を常に持っていただかないといけない。まず、経営者の意識が重要だ」と述べた。大手企業は会社法などもあり、「株主の目としてのガバナンスがある」と指摘。一方で、規模の小さいジェネリックメーカーではこうした観点からのガバナンスが十分にいきわたっていないとした。そのうえで、薬機法でガバナンス（企業統治）について明記されていることに触れ、「会社の規模によらず、この理念をすべての人にやってもらおうということだ」と説明した。

◎無通告査察「行政との馴れ合いを排する有用なツール」

抑止の重要性も指摘されるなかで、佐藤課長は無通告査察の有用性を強調。「非常に大きな抑止力。行政との馴れ合いを排し、改善していく大きなツールだと思う」と述べた。多くの企業が地元有数の企業であり、産業振興も司る都道府県が、取り締まりを行うことの難しさを指摘する声もある。製薬企業と行政との馴れ合いを懸念する声もあるが、佐藤課長は、警察も基本的には地域単位であることを引き合いに、「監視指導する人が近いところにいることは大事なことだ」との見方を示した。一方で、「都道府県による査察能力の違いやバラツキ、緊張感がないと指摘される点について、現行制度のなかで補い、改善していくために何ができるかということではないか」との課題認識も示した。PMDAの調査員増強などを22年度概算要求で請求しており、体制強化、査察能力の向上に努める考えだ。

◎GQP　実効性ある形で運用できるよう舞台装置を整える

製造販売業者の責務の観点から、製造業者への管理監督の厳格化も求められている。GQPの強化も論点にあがっているが、「GQPをより実効性ある形で運用できるよう、舞台装置を整える必要がある」との認識を示した。現状では、民間同士の取り組みであるために、契約の観点から実効性の難しさがあると指摘。たとえば、製造業者は複数の製造販売業者から製造委託を受けることも多いものの、他社情報まで製造販売業者が把握することは難しく、結果として実態が見えづらくなっているとした。また、製造販売業者と製造業者の関係性が明確な主従関係ではないとの声も製薬業界からあがっている。佐藤課長はこうした課題をあげながら、GQPの実効性を高めるための環境整備が必要と強調。そのうえで、「薬機法改正の必要性があるかも含めて、検討する」と述べた。