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日医・中川会長 財政審は「領空侵犯」 薬価の「調整幅」変動させることは難しい

公開日時 2021/11/18 04:52
日本医師会の中川俊男会長は11月17日の定例会見で、財務省主計局が財政制度等審議会財政制度分科会で示した主張に対し、「財政審の主張は診療報酬の各論に踏み込みすぎて、領空侵犯だ」と反発した。診療報酬の具体的な項目は中医協で議論すると改めて強い姿勢を示した。財務省が「躊躇なくマイナス改定をすべき」と表明したことにも触れ、「躊躇なくプラス改定とすべきだ。医療現場は著しく疲弊しており、これを何とか立て直すためにも、このメッセージをしっかり発信していく」と真っ向から反論した。論点の一つにあがる薬価の「調整幅」については松本吉郎常任理事が説明し、「コロナ禍、後発品の安定供給障害等で、流通経費や在庫管理コストが増加していることを鑑みれば、これ以上調整幅を引き下げたり、変動させたりすることは難しい」として、議論をけん制した。

◎財務省の主張「守備範囲を超え、現場感覚とズレている」

中川会長は、「財政面から国保の項目について問題点を指摘しようとするのは財務省の役割であり、大変よく勉強して頑張っている」と皮肉った。そのうえで、「所管である財政の問題を越えて、細かく医療分野の各論に踏み込んでくるのは省としての守備範囲を越えている。現場の感覚と大きくズレている点もあり、容認できない点が多々ある」と強調。「すべてに反論していたら、朝までかかっても反論しきれない。それくらい問題がある」とも述べた。一方で、同一敷地内薬局等に係る調剤基本料の見直しや、薬価の原価計算方式で採用されている製薬企業の高い平均営業利益率の見直しなどは、「異論がない部分もある」とも述べた。

◎平時の医療提供体制の余力こそが、有事の際の対応力に直結する


日医が特に問題視するのが、財務省が「診療報酬(本体)のマイナス改定を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」と主張したこと。中川会長は、「コロナ禍において、地域の医療提供体制は依然として厳しい状況にさらされている。マイナス改定とすることは到底ありえず、われわれとしては当然プラス改定にすべきであると考えている」と語気を強めた。新型コロナの収束が不確実な中で、「コロナ感染症や新たな新興感染症の医療と通常医療との両立が可能な医療提供体制の整備をしていく必要がある。平時の医療提供体制の余力こそが、有事の際の対応力に直結すると、私は常々訴えてきた」と主張。補助金を含めると医療機関経営の実態は近年になく好調とした財務省の指摘に対しては、「補助金がなければ赤字の状態だ。補助金頼みの医療機関経営は非常に不安定だ。本来は診療報酬で経営が成り立つようにしなければならず、そのためにもプラス改定は必須だ」と強調した。

◎財源は「政府が責任をもって確保」 薬価改定財源は有力な診療報酬本体の改定財源だ

改定財源については、「政府が責任をもって確保していただく。そのためには、22年度改定に向けた全体の財源確保を適正に行ってほしいと主張していくだけだ」とした。財務省が診療行為点数をミクロとし、医療費への財政的影響を「マクロの改定率決定の範囲内に収めることに限界がある」としていることに対しては、「マクロでこうだから、ミクロでこうだから、ということではない。その都度、必要な財源は確保していただきたい」と述べた。

薬価改定財源を診療報酬本体に振り替えることについて財務省が、「フィクションにフィクションを重ねたもの」と指摘し、否定的な姿勢を示している。これに対し中川会長は、「薬価改定財源は、有力な診療報酬本体の改定財源にこれまでもなってきたし、これからもなっていくだろうと思う。幅はその年によって違うが、この主張は一貫して申し上げていきたい」と述べた。

このほか、低密度で対応できる医療しか行わない急性期病院について“なんちゃって急性期病床”という表現を用いたことにも反発。「医療機関に対しても、入院して治療を受けている患者さんに対しても極めて失礼な表現だ。まるで医療政策を弄んでいるかのようで唖然としている」とも述べた。

◎松本常任理事「調整幅が必要ではあることに変わりない」

個別項目の論点として、松本常任理事は“調整幅”をあげた。松本常任理事は、薬価の調整幅は「薬剤の流通安定のための一定幅であり、これまでの様々な歴史的経緯により、現在の2%が維持されてきたと理解している」と説明。「価格や経費のバラツキがどうしても生じていることを前提とすれば、ある程度平均的に吸収させる仕組みとして、この調整幅が必要であることに変わりはない」との考えを示した。

リフィル処方については、「処方日数がさらに長期化し、受診回数の減少により、病状の悪化の発見が遅れることが懸念される。慢性疾患患者の疾病管理の質を下げるリスクもあり、日医としては慎重にならざるを得ない」と指摘。症状が安定しているか、処方の内容も含めて医師が総合的に診断していると説明した。多剤・重複投薬については、「多職種連携、病院、診療所、薬局の枠組みのなかで、一層の改善に努めることが最善の策と考えている」と述べた。また、OTC類似医薬品について保険給付範囲からの縮小などを提案したことに対しては、「国は、国民の健康を守るために、治療に必要な医薬品は公的な医療保険で賄うことを基本姿勢とすべき」としたうえで、「保険給付範囲の縮小は、社会保障の充実と逆行する政策であり、断固反対する」と語気を強めた。

かかりつけ医については、「患者が自ら選ぶのが基本だ。原則として、フリーアクセスを担保する、あるいはそれを制限しないことは、患者目線からも非常に大事だ。かかりつけ医の受診が限定されればされるほど、患者の利便性や地域医療の質も低下する」と指摘。かかりつけ機能を担っている医療機関は、「なるべく患者に見えるような形でその機能を提供し、機能を広げていく努力をしている。そのような切磋琢磨の状況は、患者からを見ても、受診してもらえば分かることだろう。そうした姿勢で我々医療機関としても、今後とも取り組んでいきたい」と述べた。

◎医療法人の事業報告書の電子開示「実調にとって代わる提案とも読み取れる」と警戒感

このほか、医療法人の事業報告書を詳細化し、電子開示することについては、「将来、事業報告書が医療経済実態調査にとって代わる提案とも読み取れる内容だ」と指摘。医療法人の事業報告書は医療法で提出義務が定められていることから、「医療経済実態調査のように改定のたびに、記載項目を変更することは難しい。今後も、課題に応じて改善し、改定の基礎資料としている医療経済実態調査を行っていくべき」との考えを示した。

また、医療法人の事業報告書のデジタル化も議論されている。こうしたなかで、匿名で手軽に医療機関の経営の詳細まで見られるようになれば、「行き過ぎた政策などの弊害が危惧される」と指摘。「個別の医療法人の詳細な経営状況が、小規模の一人医療法人も含めて公開されることになる。それが本来の制作目的とは全く違うことに利用されることになれば、現場に大きな混乱が生じ、弊害の方が大きい」とけん制した。



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