NPhA・首藤会長 敷地内薬局めぐる中医協での議論「率直なところ理解に苦しむ」 薬局機能に基づく評価を
公開日時 2021/12/10 04:52
日本保険薬局協会(NPhA)の首藤正一会長(アインホールディングス)は12月9日、会見に臨み、2022年度調剤報酬改定の焦点となっている敷地内薬局について、「中医協等の場で、適切な医薬分業のあり方や地域包括ケアシステムに逆行するといった根拠のない一方的な非難が行われているのはなぜか、率直なところ理解に苦しむ」と述べた。「一方的な決めつけではなく、事実に基づく客観的な議論により、国民目線に立った適切な結論が得られることを心より祈っている」と強調した。また、チェーン薬局を狙いうちにした議論が進むことに対しても、「強い違和感を覚える」とけん制。「薬局個々の機能で評価されるものであり、規模や立地での評価には疑問も感じている」と述べ、薬局機能に応じた評価を求めた。
敷地内薬局をめぐっては、診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)が7月の中医協総会で論点には示されていなかったものの、敷地内薬局について問題提起(
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◎敷地内薬局は「はるかに国民目線に立っている」 院内調剤と同等には「全くあたらない」
首藤会長はこうした議論に一石を投じた。敷地内薬局が解禁された経緯として、規制改革推進会議での議論を踏まえ、最終的に中医協の場を経て、決められたことを説明。構造的独立性を担保する観点から病院と薬局が公道を介すことなどが求められていたが、車椅子や高齢者の患者などではむしろ、負担が大きいとの声があがり、患者の利便性観点から、敷地内薬局解禁の道が開けた。
首藤会長は、「敷地内薬局が医療機関と連携し、地域包括ケアシステムの一員としてポジティブな価値を提供していることについて、情報発信が不足しており、ご認識いただけていないということなのかもしれない。一方的な決めつけではなく、事実に基づく客観的な議論により、国民目線に立った適切な結論が得られることを心より祈っている」と述べた。
院内処方と同じ点数設計をするべきという議論については、「院内処方は患者が医科の調剤所で受け取るしかないが、院外処方においては敷地内薬局も含め、患者が自由意思で選ぶことができる。はるかに国民目線に立ったものであり、院内調剤と変わらないという指摘もまったく当たらない」と主張。在宅対応や服用薬の一元管理などを通じて地域医療に貢献していることを強調した。
◎チェーン狙い撃ちの議論に「強い違和感」 薬局間の規模や地域、処方内容で差も
中医協の議論では、医療経済実態調査の結果から、20店舗以上のチェーン薬局の黒字幅が大きいことも指摘されており、すでにチェーン薬局の評価厳格化なども議論の俎上に上る。首藤会長は、「店舗数の多い薬局チェーンなどを狙い撃ちにした検討が進められつつあることに私どもは強い違和感を覚えている」と述べた。
「薬局個別の規模や収益状況をもとに検討することには、それに応じた報酬という点で理解できる部分もあるが、20店舗以上の薬局チェーンなどという企業規模による報酬体系の議論は理解に苦しむ」と強調。「チェーン店舗の中にも、収益力の高い薬局から低い薬局まで規模や地域、処方内容によって大きな差が生じている」と述べた。
◎かかりつけ薬剤師の算定件数は「企業努力の結晶」
そのうえで、調剤報酬について、「薬局個々の機能で評価されるものであり、規模や立地での評価には疑問も感じている」との見解を表明。かかりつけ薬剤師を評価する、いわゆるインテリジェントフィーについても、「一般のいわゆる薬局よりも会員薬局は点数を高く評価、算定している。これは、企業努力の結晶だと我々は思っている。こういった努力の末、実態調査に出ているような利益改善を図ってきた。そこを非難されるのはおかしいのではないか」と主張した。
中医協で意見を述べる薬剤師を代表する委員は1人で、日本薬剤師会から排出している。直接反論する場もなく、一方的に”チェーン薬局叩き”ともいえる現状に陥っているが、「中医協委員も出せていないし、その場がない。空に向かって言うしかない」と嘆いた。