日本製薬団体連合会（日薬連）品質委員会は１月31日、品質確保に向けて、加盟団体に「製造所における人員確保の考え方」について通知した。品質部門の人員比率を製造・品質関連業務に従事する人員の「20％以上」とするなどの参考値を明記し、自製造所の人員が確保されているか、確認を求めた。小林化工や日医工など、品質問題が相次ぐなかで、品目数に見合った適正な人員確保がなされていなかったことも指摘されている。参考値を監査などに活用してもらうことで、会員企業の自浄作用を高めたい考え。あわせて、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課も同日、都道府県宛てに事務連絡を発出。都道府県が製造所の査察を行う際に、「一つの参考資料として活用してもらいたい」としている。

◎品質問題解決へ「品質部門の充実は最初に手をつけなければならないのでは」

通知は、日薬連品質委員会は、加盟各社を対象に、製造所における人員状況について実施したアンケート調査に基づいている（回答総数：425製造所）。各製造所において、製造・品質関連業務に従事する人員（非正規社員を含む）に占める品質部門（品質保証（QA）部門＋試験検査（QC）部門）の人員比率を「20％以上」とすること、QA部門人員比率を「５％以上」とすることなどを“参考値”として示した。

日薬連品質委員会の小野誠副委員長は、「製造部門で何か事案が発生しても、品質部門でデータを確認して出荷判定をすれば、誤った製品が世に出るのは防げるのではないか。品質問題を解決するうえで、品質部門の充実は最初に手を付けなければいけないのではないか」と、品質部門の参考値設定に至った経緯を説明した。

◎参考値は　製造販売業者が委託先の製造所を監査する際にも活用を

参考値は、製造所の平均値ではなく、「ひっ迫している状況で製造していることが推察される製造所」（小野副委員長）を示す、いわば外れ値を示している。アンケート結果からは、品質部門が20％の基準を満たしていない企業は30.5％（128製造所）、QA部門が５％に届かないのは24.3％（100製造所）となっている。参考値を活用し、自製造所のほか、製造販売業者が委託先の製造所を監査する際にも活用してもらいたい考えだ。

◎参考値だけでの人員確保の判断をしないよう求める

小林化工や日医工が行政処分を受けた際に、製造実態について現場が把握していたものの、人員増加につながらなかったことも指摘されてきた。小野副委員長は、「現場の声をより上層部に伝えるための指標として参考値を活用してもらえれば、と思うが、逆に参考値を満たしていれば大丈夫と現場の声が消されてしまう懸念もある」と述べ、あくまで参考として用いることを強調した。

通知でも、「数値等を満たしていることのみをもって人員が確保されていると判断されることがないよう」求めている。実際、薬機法違反による行政処分を受けた製造販売業者のなかには、これらの数値をすべて満たしている製造所もあったという。また、自動化システムの活用状況や製品特性に応じ、「数値等を満たさない場合でも、自製造所での状況を踏まえ、業務が適切に実施されていることが説明されれば、人員が確保されていないと判断されるものではない」としており、数字が独り歩きしないよう強調している。

◎人員管理の定期的・継続的な実施を

検証の結果、人員増員の必要性が考慮される場合には見直しを求めた。アンケート結果からも、複数の部門に跨っているケースも指摘されるが、「品質部門が最後の歯止めだと考えている。優先順位があるのであればまず、品質部門の人員確保をお願いしたい」と強調。アンケートでは、製造品目やロット数の増加に伴う品質部門の増員が進んでいないとの意見もあったことを紹介し、品質部門に十分な人員を確保する必要性を示した。

一方で、現時点では人員が確保されていると判断した製造所においても、品目数やロット数の増減など製造実態が変化することから、「定期的に人員に関する管理を行い、十分な人員が継続して確保されるよう、計画的なご対応をお願いします」としている。

参考値としては、品質部門のほか、一人当たりの参考年間品目数・ロット数を部門ごとに示した。製造部門は2.0品目未満・26ロット未満、QA部門は18品目未満・331ロット未満、品質部門は5.0品目未満・91ロット未満、技術担当業務（製造、試験、設備の変更及び設備の維持管理にかかわる担当等）は19品目未満、301ロット未満をあげている。なお、各部門の人員数は総労働時間として、労働基準法や36協定等を遵守していることを基本としている。