【FOCUS MR数 前年比6.6%減の衝撃! その後の反響から】
公開日時 2022/06/14 04:52
「MR数 前年比6.6%減の衝撃!」と題したミクス6月号を発行した。それから半月が過ぎ、読者の皆さまから沢山の反響を編集部に頂いた。そこで今回は、皆さまの意見・感想を踏まえて、MR減少時代の「次なる一手」を考えてみたい。(編集長 沼田佳之)
MR数の減少については、すでに多くの読者が受入れていた。MRが担当エリアのほぼ全ての診療所や病院を訪問し、生活習慣病薬の製品名をコールし、医師に処方をお願いしていた時代は過ぎ去った。むしろ現代のMRは、オンコロジー、中枢神経、難病、希少疾患などアンメット・メディカルニーズの高い領域の新薬情報を携え、情報提供先の医療機関や専門医に狙いを定めて、個々の患者に最適な「適正使用情報」を提供しながら、医師や医療者のニーズ収集に奔走する姿を垣間見る時代に移った。このため多くの読者が、この10年あまりでMR活動そのものが様変わりしたとの認識を深め、MR数が「減る」という現実を受入れているように感じた。逆に、こうした状況を、MRの専門性を高める好機と捉える意見もあり、これまで以上に、地域医療や患者の受療行動、患者のインサイトを勉強したいとの声も編集部に多数届いている。
◎若手MRのモチベーション低下を危惧する声 発想の転換に戸惑う管理職
一方で新たな課題も編集部に寄せられた。ある営業幹部から頂いた声には、「製薬各社の相次ぐ早期退職優遇制度など環境変化の大きさに若手MRのモチベーションが下がっている」というものがあった。「発想の転換に戸惑う管理職が多い」もよく聞かれる。様々な立場で同様の不安が蔓延している。
特に気になったのは、この数か月で新型コロナが沈静化し、「むしろMR活動がコロナ以前に戻っている」ということ。この2年間は医師にリアル面会できず、慣れないデジタルを活用し、アポイントを取得するだけでも苦労していた。ところが、ここにきて医療機関の訪問自粛要請が解除されると、途端にかつてのMR活動に逆戻りすることがあるという。本社の企画部や戦略部は、アフターコロナを睨み、デジタルを中心とした情報提供・収集活動に注力したいとの意向を現場に伝えるが、意に反して現場は、雪崩を打ったように、コロナ以前の活動に逆戻りし、本社と現場の間で見えないギャップが生まれているとの声も寄せられた。
◎医師にリアルで会える!
確かに現場のMRは、医師に直接会えるなら、これまで通りリアルでコミュニケーションを深めたいとの意向が示される。この機会に改めてMRとしての力量を発揮したいとの想いを持つことは何ら否定されるものではない。一方で、本社サイドの考えるMR活動は、もちろん医師とMRのリレーションを高める施策を優先するとしながら、先述した患者のインサイトを踏まえた検査体制の充実や、非専門医と専門医とのネットワーク構築、さらには地域医療に対する製品プレゼンスの向上などの施策をアフターコロナ時代のMR活動に求めようとしており、ここにギャップが生じているという訳だ。
本社サイドの声に耳を傾けると、「所課長の理解をどこまで浸透できるかがカギ」と漏れ伝わってくる。一方で、所課長の声に耳を傾けると、「コロナ以前もコロナ以降も現場は数字で評価されている以上、方法論にギャップがあるのも承知でMRにお願いすることも大切なミッションだ」との声も。どちらの言い分とも理解できるだけに、今後どう取り組むかは大きな課題となろう。
◎MR評価はコロナ以前のまま デジタル活用の評価軸「模索期間」で定まらず
ミクス6月号に掲載した製薬各社のアンケート調査でも、コロナ以前とアフターコロナで、情報提供のデジタル化やMRのオンライン化に舵を切った様子が明らかになっている。一方で、MRの評価(KPI)については、どちらかというと現在は「模索期間」との印象があり、MRに対し、時に数字目標を課しながらも、医師とのコミュニケーションにオンライン面談の回数やアポイントの成約率などを求めるなど、KPI設定の議論が過渡期にあるとの印象は拭えない。
◎MR活動の主戦場は「医療従事者」+「医療者を通じた患者サポート」
アフターコロナに向けてMR活動も新時代を迎える。MR総数が4万人を切る時代も目前で、1社あたりのMR数も、1000人、2000人という大組織から、数百人規模の適正人員へとシフトしている。よって、MR一人ひとりの役割がいま以上に重要になる訳で、次世代を担うMRが考える「次の一手」がより重要になる。もちろんMRは自社新薬の安全性、有効性、品質などの情報を速やかに医療従事者に提供し、安心して適正使用をお願いすることに注力することは過去もこれからも変わらない。一方で、これからのMRに求められる視点は、これまでの「医療者」に加えて、「患者」がより重要視しなくてはならない時代を迎える。MR活動にとって患者へのダイレクトリーチが出来ないと嘆く方も多いが、それは違う。製薬企業としては、医師や医療従事者を通じ、いかに患者が治療への満足感を得て、それを継続できる環境を支援しているかが重要となる。
◎MRこそ「患者中心の医療」実現に何ができるかを発想し、提案し、貢献しよう!
「患者中心の医療」を会社方針に掲げる製薬企業も多い。一方で国の医療政策も、今回のリフィル処方箋やオンライン診療を見て分かるように、患者の医療アクセスや利便性などに政策の軸足を移してきた。ここは、MRも同様に、患者の視点をいかに理解し、治療を継続できるような施策を医療者と協同で行うことができるかに挑戦すべきではないだろうか。もはや、この領域にはデジタルツールが多用され、デジタルソリューションの開発も進んでいる。製薬企業の新たな投資先としての注目度も高まっている。MR自身がこうした社会的動向や社会システムの変化に関心をもち、キャッチアップする技量を備えることができれば、新たな医療の未来像を描くこともできる。加えて、真の意味での患者中心の医療貢献の一端を担う存在として評価されるのではないだろうか。DXの時代だからこそできる新たなMR像について、是非この機会に考えてみて欲しい。