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後藤厚労相 医薬品の流通制度・薬価制度で有識者検討会設置へ 省内の体制刷新 医薬品産業振興に本腰

公開日時 2022/06/15 04:52
後藤茂之厚労相は6月14日に開いた革新的医薬品等創出のための官民対話で、「医薬品の流通制度や薬価制度のあり方に関する有識者検討会」を立ち上げる方針を明らかにした。コロナ禍で革新的新薬やワクチン開発の重要性が再認識されるなかで、厚労省は今夏に「医薬産業振興・医療情報審議官」を新設し、医薬品産業振興に大きく舵を切る。検討会の設置も省内の“新体制”発足に照準を合わせて準備を進める。医薬品産業をめぐっては、安定供給や品質問題が社会問題化し、さらには、製薬業界内からドラッグ・ラグの再燃を懸念する声があがっている。同省は医薬品産業が「岐路に立っている」との認識の下、学識経験者による集中した議論を行う。検討会は薬価制度だけでなく、医薬品の産業構造やビジネスモデルを含めて幅広く検討する方針だ。

◎流通・薬価制度のあり方、産業構造・ビジネスモデルも幅広く検討 制度改革も視野に

「足下では医薬品の品質確保・安定供給の問題や、新薬に関するドラッグ・ラグへの懸念など、国民への医薬品の供給に影響を及ぼす課題が生じている。国民に必要な医薬品を迅速かつ、安定的に供給するために、医薬品産業振興の立場に立って、医薬品の流通制度や薬価制度のあり方について有識者による検討会を立ち上げて検討する。この検討会は薬価制度のあり方や、医薬品産業の産業構造やビジネスモデルを含めて幅広い検討を進め、制度改革に取り組む」-。居並ぶ業界団体の代表を前に、後藤厚労相はこう強調し、改革への本気度を示した。

検討会では、「国民皆保険の持続性を確保しつつ、医薬品の品質・安定供給を確保する流通制度や薬価制度のあり方」に加え、医薬品産業や医薬品卸売産業の現状と課題、持続的な成長を続けるための今後の医薬品産業のあり方(産業構造・ビジネスモデル)を主な検討事項にあげる。伊原和人医政局長は、「検討会は、いま薬をめぐる問題、一つの岐路に立っており、集中して議論していきたい」と説明した。

◎製薬業界 検討の場設置に歓迎の声相次ぐ

業界代表からは、「流通・薬価制度は明らかに制度疲労を起こしているなかで、抜本的な見直しの時期を迎えている。改めて議論させていただきたい」(日本製薬工業協会(製薬協)岡田安史会長)など、歓迎する声が相次いだ。

ただ、主な検討事項として、“国民皆保険の持続性を確保しつつ”という文言が盛り込まれたことについて、日本製薬団体連合会(日薬連)の眞鍋淳会長(第一三共代表取締役社長兼CEO)は、AI診断やアプリによる服薬管理などの具体例をあげ、医師・薬剤師などステークホルダーが提供できる価値にも変化が生じてきていると指摘。「どこまで国民皆保険のなかでカバーできるか検討するのであれば、薬価以外についても議論すべきだという認識を思っている」と指摘した。眞鍋会長は、“自身の考え”と断りながら、「日本における社会保障は今後どうあるべきか、議論のないままに、社会保障制度の伸びを抑制するための財源を薬価引下げによって捻出する近視眼的な対応は、もはや限界に達していて、こういう考え方は改めて無理だと思う。特に医療費については、高齢化の伸びの範囲に抑制するものではなく、技術進歩の伸びについても是非とも考慮いただくべき」と主張していた。

◎後藤厚労相 薬価制度改革は「トータルとして創薬エコシステムにどうつながっていくか」

これに対し、後藤厚労相は、「"国民皆保険の持続性を確保しつつ"、というのは、関係者が聞いてまたかという印象になってはいけない。決して財源確保という議論ではなく、より幅広い医療制度のなかでどう作っていくか。薬価制度を含めた制度をどう見ていくかということをしっかり議論したい」と強調した。そのうえで、「“国民皆保険の持続可能性を確保しつつ”というのは、我が国制度の特徴を生かし、医療データ基盤をどうやって作って、診療情報を含めて我が国の創薬のもととなる基盤を作れるか、そういうことも含めて幅広く検討したい。薬価制度も、薬価のことだけでなく、トータルとして創薬エコシステムにどうやってつながっていくかという展望をもって、色々な方たちが力を合わせて全体像を作り上げていく姿勢が大切だ」と理解を求めた。「皆様の積極的な協力をお願いする」とも述べた。

◎中間年改定 日薬連・眞鍋会長「ポジティブに」 濱谷保険局長「中医協で必要な議論を」

このほか、日薬連の眞鍋会長が「中間年改定については、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うという抜本改革時点の趣旨に立ち戻り、実施の是非も含めた抜本的な見直しが必要だ。骨太方針2022において薬価改定に関する記載はなかったが、ゼロベースでの議論が可能であるとポジティブに受け止めている。調整幅については引き下げる方向での見直しを行うべきではない」と主張した。

これに対して濱谷浩樹保険局長は、「今後の薬価制度のあり方については、その検討会での議論の状況等も踏まえつつ、中医協で必要な議論を行って参りたい。2023年度の薬価改定の具体的な実施方法については、今後業界の皆様から意見をいただく機会を設けながら、中医協で必要な議論を行っていく」と述べた。

◎安藤経済課長「原点に立ち返って制度論を議論」 業界主張のドラッグ・ラグは「検証する」


検討会後、厚労省医政局経済課の安藤公一課長は、「足下で医薬品の安定供給・品質問題が起きている」と説明した。この日の官民対話では、製薬業界は日本市場の魅力低下によるドラッグ・ラグの懸念を表明した。ただ、アカデミア代表の岩崎甫氏(山梨大副学長融合研究臨床応用推進センター長、AMED医薬品プロジェクト PD)は、「最近の抗がん剤などはバイオベンチャーが主役を担っている。日本に法人を持っていない企業が大半だ。開発情報もなかなか、日本は手に入れることができない。これまでの形とは質の違うドラッグ・ラグが発生してきてしまっている」と指摘するなど、市場性や薬価以外の問題を指摘する声があがっている。

安藤経済課長は製薬企業の主張するドラッグ・ラグについては「検証する必要がある」との認識を示したうえで、「様々な課題が提起されている。そもそも原点に立ち返って制度論から議論していくということが、求められているのではないかということが背景、問題意識としてはある。運用だけでは対処できない段階まで来てしまっているのではないかという問題意識もあり、制度論を含めて検討を行っていく」と説明した。

◎流通問題 有識者検討会は”あるべき論”を議論 いまの制度前提の流改懇と違いも「方向性は揃える」


流通についての検討会としては、「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会(流改懇)」があるが、「流改懇はいまの流通制度を前提としながら、一次売差マイナスなど運用上の課題を関係者のコンセンサスのもとでどう改善していくかということを議論する場だと認識している。新たに立ち上げる検討会では、流通の制度としてどうあるべきか、制度論的なことについてあるべき論に立ち返って議論することを考えている。根底は違うが、両者は関係するので、議論の方向性は揃えていくことは考えていかなければならない課題だと考えている」と述べた。また、「検討を踏まえて、具体的にどういう制度にしていくかについては最終的には中医協で関係者がいるなかで議論をいただいたうえで、制度改革につなげていくという流れになるだろうと思っている」との見解も示した。

◎有識者検討会のスケジュール「喫緊に対処しないといけない課題も」 制度見直しのタイミングも視野


また、スケジュールについては、「どのタイミングで具体的に制度として反映させるかは念頭におかなければいけない。足下で起こっている課題を踏まえたときに、喫緊の課題として対処しなければいけない課題もあると認識している。悠長な形での議論を進めるということは全く考えていない。今後の中医協、薬価制度の見直しのタイミングもある程度念頭に置きながら、具体的にどういったスケジュールで何を検討していくか、新しい組織の下で考えていきたい」と述べた。

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