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塩野義製薬の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠 賛否両論で緊急承認の結論出ず 薬食審・第二部会

公開日時 2022/06/23 04:52
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は6月22日、塩野義製薬の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠の緊急承認の可否を審議した結果、委員から賛否両論あり、「さらに慎重に議論を重ねる必要がある」ということでこの日は終了した。緊急承認制度では、薬事分科会でも承認可否を審議することになっている。同省は、一定の結論を早期に得たいとして、次回は分科会と部会との合同審議を7月中にも公開で開催する方向で調整する。

同省によると、この日の部会での主な論点は4つだった。具体的には、(1)第2b相試験の主要評価項目の結果、副次評価項目の結果、事後解析の結果等を踏まえた有効性の評価(2)動物実験における催奇形性の所見、薬物相互作用の状況、臨床試験における副作用の発現状況等を踏まえた安全性の評価(3)現在承認されている医薬品の状況、本剤による入院・宿泊療養者の隔離期間への影響等を踏まえた臨床的位置付け(4)オミクロン株の流行期に実施された臨床試験であることを踏まえた有効性、臨床的位置付け――となる。

◎「実効再生産数が小さくなること期待できる」、「臨床症状の改善は示されていない」と賛否

厚労省の吉田易範・医薬品審査管理課長は部会後の記者説明会で、特に(1)の第2b相試験などの結果を踏まえた有効性の評価が、「大きな論点だった」と話した。

同剤の第2/3相臨床試験のうち、軽症/中等症患者を対象としたPhase 2b partでは、軽症/中等症の新型コロナ患者428例(日本419例、韓国9例)を高用量群(低用量の2倍)、低用量群、プラセボ群に無作為に割り付けた。1日1回、5日間経口投与し、抗ウイルス効果および臨床症状の改善効果を比較した。

主要評価項目に据えた4日目(3回投与後)におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量は、高用量群、低用量群ともにプラセボ群に比べて有意な減少を示した。ウイルス力価陽性患者の割合は両用量群ともに10%未満で、プラセボ群との比較でPhase 2a partの成績を上回る減少率となった。しかし、新型コロナの症状合計スコアの初回投与開始から120時間(6日目)までの単位時間あたりの変化量は、プラセボ群に比べ改善傾向を認めたものの、統計学的に有意な差は認められず、主要評価項目を達成しなかった。なお、同試験の集団で特徴的な症状だった呼吸器症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ (呼吸困難))の合計スコアは、高用量群、低用量群ともに有意な改善効果が認められた。

吉田課長によると、この試験結果を踏まえて委員から、「ウイルス量に差が出ている。実効再生産数が小さくなることが期待できる」との肯定的な意見があった。一方で、「ウイルス量を減らすデータは確かにあるが、臨床症状の改善は示されていない。このようなあいまいな状況で国民がこの薬を使うことをどう考えるのか」と、有効性の観点から承認に否定的な意見もあった。

◎吉田課長「一定の結論を出すまでにも至らなかった」

このほかの委員からの意見としては、「今は流行が落ち着いているが、今後第7波や新たな変異株が出る恐れもある。治療の選択肢を持っておくことは重要」との肯定的なコメントがあった。一方で、「経口剤は(ラゲブリオ、パキロビットに次ぐ)3つ目。プロテアーゼ阻害薬としては(パキロビットに次ぐ)2つ目になる。(ゾコーバ錠に)既に新規性はないのではないか」と緊急承認の要件を満たしていないとの厳しい見方も示されたようだ。

吉田課長は、この日の議論を振り返って、「肯定的な意見もあれば否定的な意見もあった。本日は(継続審議にするなどの)一定の結論を出すまでにも至らなかった」と話した。賛否どちらの意見が多かったかについては、合同審議を控えていることもあり、「コメントは差し控える」と述べた。

5月に創設された緊急承認制度の対象医薬品は、「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品」であり、「かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がない」ものとなる。新型コロナの場合は感染拡大の状況や医療提供体制のひっ迫状況、代替治療法の有無などが検討される。安全性が確認され、有効性が「推定」された場合に緊急承認されるが、当該承認の期限内に有効性を確認し、再度申請・承認を得る必要がある。ゾコーバ錠は緊急承認制度を用いて承認可否を審議した最初の製品となった。

ゾコーバ錠(一般名:エンシトレルビル フマル酸、開発コード:S-217622)は、塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、同錠は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制するとされる。

日本政府は塩野義製薬との間で、承認後速やかに100万人分を購入する基本合意を締結している。
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