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GSK日本法人 AIがMRの訪問計画策定、まずテリルジーから 医師の情報収集チャネルなど複合分析

公開日時 2022/07/28 04:52
グラクソ・スミスクライン(GSK)日本法人は今年から、医療従事者の情報ニーズを人工知能(AI)を用いて複合的に分析し、MRの訪問計画を策定する取り組みを開始した。この取り組みは情報提供先の医療従事者の専門領域、研究内容、所属医療機関の種別、情報ニーズ、情報収集チャネル、GSKとのこれまでの接点、取扱製品の処方実績――といった様々な構造化データ等をAIに機械学習させて複合的に分析し、最適な訪問計画をその頻度や方法を含めてMRに提示するもの。生産性の向上を期待する。まずCOPD・気管支ぜんそく治療薬・テリルジーから始め、今後、他の主力品に広げる。

◎「医療従事者のニーズがかなり急速に変化」を踏まえ データドリブンのアプローチにシフト

同社の長澤悠子・ワクチン事業本部長は7月27日に開催した事業説明会で、コロナ禍を契機とした情報提供活動について、「医療従事者のニーズがかなり急速に変化していると日々感じている。オムニチャネルを通じたアプローチにかなりギアを切り替えている」と述べた。これまでは同社もMRが足で稼いだ情報・経験をもとに訪問計画を策定し、実行してきたが、現在は「よりデータドリブンのアプローチにシフトしている」と強調した。そして、訪問計画をAIに策定させる取り組みをテリルジーで試行的に行ってきたことを明らかにした上で、「(テリルジーで)今年から本格展開している」と話した。

この日の事業説明会では、訪問計画をAIに策定させる2製品目、3製品目まで明らかにしなかったものの、同社は「主力品で順次展開する」と今後の展開に期待感を込めた。主力品には帯状疱疹予防ワクチン・シングリックスや全身性エリテマトーデス(SLE)治療薬・ベンリスタ、新型コロナ治療薬・ゼビュディ、重症喘息・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)治療薬・ヌーカラ、各種喘息・COPD治療薬――があり、これらの製品が対象になるとみられる。

◎26年までの年平均成長率5%目指す

同社のポール・リレット社長は事業説明会で、日本法人の26年までの年平均成長率は「5%を目指す」と表明した。21年は4%成長で、シングリックスや呼吸器領域の製品群を中心に伸長。例えばシングリックスの出荷数量は対前年比520%、テリルジーはICS/LAMA/LABA市場でシェア73%、レルベアなどの喘息・COPD吸入薬はシェア51%――だったと紹介した。

26年までの成長ドライバーとしてテリルジー、ヌーカラ、ベンリスタ、シングリックスを挙げ、「26年までに2倍になる」(リレット社長)とチャレンジングな計画を披露。さらに、26年までの上市を計画している現在第3相試験段階にある再発・難治性の多発性骨髄腫治療薬・ベランタマブ マホドチン(一般名、開発コード:GSK2857916)や、申請準備段階にある呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン(開発コード:GSK3844766A)も、「ドライバーになるだろう」と期待感を示した。

◎RSVワクチン 日本も同時申請できるよう進める

このうち開発中のRSVワクチンは、膜融合前型の遺伝子組換えRSV F糖タンパク質(RSVPreF3)抗原と同社独自のAS01アジュバントを組み合わせたもの。グローバル第3相臨床試験(AReSVi 006試験)では、60歳以上の成人を対象に単回投与したところ、中間解析結果として統計学的に有意かつ臨床的に意義のある有効性が示された。RSVのA型とB型、70歳以上高齢者においても一貫した効果が確認された。

同社の三好出・メディカル・開発本部長は、同試験について「(RSVワクチンとして)初めて有効性が示されたピボタル試験」と紹介し、「承認申請に向けて準備が着々と進んでいる。日本も同時申請できるようにチーム一丸となって進めている」と話した。RSVワクチンは1960年代から各社で開発されてきたが、全て失敗している。

RSVは肺や呼吸器に影響を及ぼす一般的な感染性ウイルスで、乳幼児の急性下気道感染症の最も一般的な原因として知られている。高齢者の呼吸器感染症の重要な原因のひとつでもあり、加齢に伴う免疫力の低下により、高齢者では重症化や合併症リスクが高いとされる。三好氏は、日本の高齢化の進展に伴いRSVによる疾病負担も増大すると指摘し、ワクチンで予防すべき疾患だと訴えた。

なお、同社のグローバル開発パイプラインは64品目(ワクチン:21品目、医薬品:43品目)で、うち開発後期に22品目あり、基本的に世界同時開発する方針を掲げている。

◎ワクチン価値最大化へ 早期定期接種化によるアクセス改善などに取り組む

英国GSKは今年、グローバルにコンシューマーヘルス事業を分離し、ワクチンと医薬品に特化したバイオ医薬品企業として始動した。特にワクチンは、小児から高齢者までの生涯を通じたワクチンを提供して疾患予防に貢献する考えで、▽バイオコンジュゲート(結合型ワクチン)▽ウイルスベクター(アデノウイルス)▽メッセンジャーRNA▽抗原ゲノム配列解読▽3D構造解析▽膜表面抗原モジュール化▽アジュバントシステム――など広範かつ多くの先駆的なテクノロジーを組み合わせてワクチン開発していく。

日本市場では、先進国で実用化されているワクチンが日本で使えない「ワクチンギャップ」が指摘されている。承認から発売まで年単位で時間がかかるほか、定期接種化にも長い歳月がかかることも課題になっている。同社は、「ワクチンのリーディングカンパニーとして、ワクチン価値最大化の実現に取り組む」としており、日本では▽早期定期接種化によるアクセス改善▽承認から上市までの時間短縮▽開発投資に見合った対価回収――の実現を目指すとしている。
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