ユルトミリスの全身型重症筋無力症の追加、オノアクト小児適応など承認へ 薬食審・第一部会で了承
公開日時 2022/08/05 04:51
厚労省の薬食審・医薬品第一部会は8月4日、抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤・ユルトミリス点滴静注に全身型重症筋無力症の効能を追加することなど3製品の一部変更承認の可否を審議し、承認を了承した。この中には、短時間作用型β1選択的遮断薬・オノアクト点滴静注用に小児の頻脈性不整脈を追加することも含まれる。9つの報告品目は全て不妊治療関係で、事前評価済み公知申請されたもの。この日の審議品目、報告品目とも、8月中に正式承認されるとみられる。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オノアクト点滴静注50mg、同150mg(ランジオロール塩酸塩、小野薬品):「心機能低下例における上室頻拍、心房細動、心房粗動の頻脈性不整脈」を効能・効果とし、小児用量を追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
短時間作用型β1選択的遮断薬。主に心臓に多く存在するβ1受容体を選択的に遮断することで心拍数を下げる。オノアクト以外の静注用β遮断薬としてインデラル注射液、ブレビブロック注が上市されているが、いずれも小児の頻脈性不整脈の効能及び用法は持っていない。
小児の先天性心疾患に対する開心術後などの循環動態が不安定な心機能低下例において、頻脈性不整脈が持続すると重篤化し、死に至ることがある。このため、ただちに頻脈性不整脈に対する治療が必要になる。しかし、国内で小児適応が認められている抗不整脈薬は少なく、小児患者に対する新しい治療選択肢が必要とされている。
▽ユルトミリス点滴静注300mg、同HI点滴静注300mg/3mL、同HI点滴静注1100mg/11mL(ラブリズマブ(遺伝子組換え)、アレクシオンファーマ):「全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は4年。
長時間作用型抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤。エクリズマブ(製品名:ソリリス)の重鎖の4個の固有のアミノ酸(Y27H、S57H、M429L、N435S)を置換したヒト化モノクローナル抗体で、ソリリスと同様に補体(C5)に結合してその活性化を阻害する。
重症筋無力症は国の指定難病で、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴。眼の症状だけの場合は眼筋型、全身症状があるものは全身型と呼称する。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難をきたすこともある。
▽レミフェンタニル静注用2mg「第一三共」、同5mg「第一三共」(レミフェンタニル塩酸塩、丸石製薬):「集中治療における人工呼吸中の鎮痛」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
選択的μ-オピオイド受容体アゴニスト。速やかな作用発現及び作用消失を示し、長期間投与しても作用が遷延しにくく、同剤の代謝は肝機能及び腎機能の影響を受けにくいとの特徴がある。
集中治療室(ICU)などで集中治療を受ける患者は、傷病・手術に起因するものを始めとし、患者管理に伴う様々な処置等を含め、多様な要因により疼痛を生じる。疼痛は、合併症を誘発するだけでなく、ICU滞在時間の延長や生活の質の低下などに影響するため、集中治療における疼痛管理は重要になっている。
集中治療における患者管理では、疼痛対策とともに鎮静管理も重要だが、過度の鎮静が患者の長期アウトカムに悪影響を及ぼすことが報告されており、近年は、鎮痛薬を優先的に使用して十分な疼痛対策を行った上で、鎮静薬は補助的に使用する管理方法(鎮痛優先の鎮静)が推奨されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽HMG注射用75単位「F」、同150単位「F」(ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン、富士製薬):「生殖補助医療における調節卵巣刺激」を効能・効果とする新投与経路医薬品。事前評価済公知申請。
▽HMG注用75単位「あすか」、同150単位「あすか」(ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン、あすか製薬):「生殖補助医療における調節卵巣刺激」を効能・効果とする新投与経路医薬品。事前評価済公知申請
▽HMG注射用75IU「フェリング」、同150IU「フェリング」(ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン、フェリング・ファーマ):「生殖補助医療における調節卵巣刺激」を効能・効果とする新投与経路医薬品。事前評価済公知申請。
いずれもヒト下垂体性性腺刺激ホルモン(HMG)。卵胞刺激ホルモン(FSH)活性を有し、卵巣に作用して卵胞の発育を促進する。
▽ゴナトロピン注用5000単位(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、あすか製薬):「生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化並びに一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
▽HCGモチダ注射用5千単位、同1万単位(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、持田製薬):「生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化並びに一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化」を効能・効果とする新投与経路医薬品。事前評価済公知申請。
▽注射用HCG5,000単位「F」、同10,000単位「F」(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、富士製薬):「生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化並びに一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化」を効能・効果とする新投与経路医薬品。事前評価済公知申請。
いずれも黄体形成ホルモン(LH)様作用を示すことから、本薬の投与により、LH サージと同様の状態とすることで、最終的な卵胞成熟、排卵及び黄体化を誘導する。
▽ナサニール点鼻液0.2%(ナファレリン酢酸塩水和物、ファイザー):「生殖補助医療における早発排卵の防止」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
▽スプレキュア点鼻液0.15%(ブセレリン酢酸塩、クリニジェン):「生殖補助医療における早発排卵の防止」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
▽ブセレリン点鼻液0.15%「F」(ブセレリン酢酸塩、富士製薬):「生殖補助医療における早発排卵の防止」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
いずれも性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト。下垂体のGnRH 受容体の脱感作によって起きる内因性のゴナドトロピンの分泌を抑制することで、黄体形成ホルモン(LH)サージを抑制し、早発排卵を防止する。