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中医協薬価専門部会 23年度薬価改定実施へ 焦点の安定供給で支払側「最低薬価や基礎的医薬品の特例も」

公開日時 2022/10/06 04:52
中医協薬価専門部会が10月5日開かれ、診療・支払各側は23年度薬価改定を実施する方針を確認した。23年度改定の焦点となることが想定されるのが、物価・エネルギー価格の高騰が続くなかでの医薬品の安定供給だ。この日の中医協でも診療・支払各側から医薬品の安定供給を求める声があがった。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「21年度にはなかった問題として、医薬品の安定供給が新たな考慮要素としてある」と指摘。「実勢価格と連動する算定ルールとして、最低薬価や基礎的医薬品の特例の中で対応できる部分があれば、個別に検討することが考えられる」との見解を示した。一方で安定流通の観点から調整幅にも議論が及び、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が安易な議論に釘を刺す場面もあった。

◎通常薬価改定と異なる中間年改定 16年12月の4大臣合意を各側とも改めて確認

診療報酬改定のない年の改定、いわゆる中間年改定は、16年12月に4大臣合意された薬価制度抜本改革に向けた基本方針に基づき、21年度から導入された。基本方針では価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うと明記。対象範囲については、「薬価制度の抜本改革について骨子」で、「国民負担の軽減の観点から、できる限り広くすることが適当」とされている。厚労省保険局医療課は導入初回となった21年度改定について、「国民負担軽減の観点からできる限り広くすることが適当である状況のもと、平均乖離率8%の0.625倍(乖離率5%)を超える、価格乖離の大きな品目を対象とした」と説明した。

◎診療側・長島委員 23年度中間年改定は「4大臣合意に基づき行うと考えている」

21年度改定では改定の実施に反対姿勢を示していた診療側だが、長島委員は客体数を減らすことで薬価調査が例年並みの回答率だったことなどを踏まえ、「23度の中間年改定は16年の4大臣合意、薬価制度抜本改革に向けた基本方針に基づき、感染状況を踏まえつつ、行うことになると考えている」と表明した。「ただし、診療報酬改定のない年の薬価改定となる中間年改定では、2年に1回の通常改定とは異なる位置づけであることは従来から主張している通りだ。そして、価格乖離の大きな品目について価格調整をするということが基本的な役割であるはずだ」と続けた。診療側の有澤賢二(日本薬剤師会理事)も、「16年12月の4大臣合意の通り、通常改定とは異なり、乖離の大きな品目を対象に限定的に行うものと理解している」と述べた。

支払側の松本委員は、「21年度のルールをベースにして、市場実勢価格に基づく改定を粛々と行うべきだというのが基本的なスタンスだ」と述べた。

◎改定範囲 診療側「あらかじめ基準を決めるのは不適当」 支払側「政府方針変わらないなら21年度と同程度に」

改定の対象範囲について診療側の長島委員は、「あらかじめ基準を決めることは不適当であり、そのときの経済状況や財政状況、関係する医療機関、薬局の経営状況を勘案しながら、注意深く対応していくことを基本とすべき」と主張した。

これに対し、支払側の松本委員は、「国民の負担軽減の観点から、できる限り広くすることが適当という政府方針が変わらないのであれば、21年度と同程度の品目を想定すべき」と主張。21年度改定では既収載品の算定ルールのうち、実勢価改定と連動して影響を補正するものを適用した。松本委員は、「ルールを抜本的に変えるということはないと思う」としたうえで、「実勢価格と連動しない算定ルールに整理されたもののうち、新薬創出等加算の累積額控除と長期収載品のG1・G2ルールについては、実勢価と連動する要素があるということは改めて指摘させていただきたい」と述べた。

◎診療側・長島委員 薬価引下げ分「国民に還元する趣旨には医療の質向上の意味もある」

改定の基本的な考え方について診療側の長島委員は、「16年の4大臣合意では、国民負担軽減の観点が前面に押し出されてはいるが、同時に医療の質向上も勘案しつつ、薬価制度本改革を行うという趣旨が示されている。医療の質向上には、効率化も必要だが、財源も必要だ。薬価制度を抜本的に改革していきながら、適正な価格に引き下げることで生じた差額を全て国民に還元するという趣旨のなかには、医療の質向上の意味も入っていると認識している。医療の質向上の観点から見れば、薬価の改定で得られた財源の一部を診療報酬との密接な関係のなかで捉えることが重要であり、これを持って質向上につなげていくことを前提とした議論を積み重ねていく必要があるのではないかと思う」と述べた。これに対し、支払側の松本委員は、「23年度に薬価改定の財源をストレートに言うと、診療報酬に充当するということであれば、これについては明確に反対する」と述べる一幕もあった。

◎安定供給で支払側 「なんでも値上げはだめ」、「原材料価格など詳細な資料の準備を」

この日の議論では安定供給をめぐる意見が多く出た。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「患者の皆様が不安なく、治療を受けられることが可能となるよう、安定的な医薬品の流通の確保を第一として、患者目線で丁寧な議論を積み重ねていただくことが非常に重要だ」との見解を示した。そのうえで、「ただし、安定供給をするためにも、何でもかんでも値上げをしなければだめだというような議論にはならないよう、くれぐれもご留意をお願いしたい」と指摘した。支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)も、「患者、被保険者の視点に立って安定的な流通の確保といったポイントは重要だ」としたうえで、物価・エネルギー価格の高騰に触れ、「医薬品供給の実態や、原材料の状況など、より詳細な資料を事務局やヒアリング先に準備いただくようお願いしたい。なかなか企業秘密的なところもあるかと思うが、そういった資料がないと、突っ込んだ議論にならないので、ぜひお願いしたい」と述べた。

◎支払側・松本委員「業界全体の取り組み、政府全体の総合的な対応も不可欠」

支払側の松本委員は、「医薬品の安定供給の問題が新たな考慮要素としてあるが、これは実勢価格と連動する算定ルールとして、最低薬価や基礎的医薬品の特例の中で対応できる部分があれば、個別に検討することが考えられる。ただし、薬価だけではなく、業界全体の取り組み、あるいは政府全体として総合的に対応するということも不可欠であろう」と述べた。

◎診療側・有澤委員 物価高騰で「経営の継続が困難な薬局や医療機関が出るのでは」

診療側の有澤委員は、「コロナ禍において、薬局、医療機関、卸、メーカーは現場において大きな影響があるなかでさらに物価高騰の影響受けて、このような現状で改定を実施することで、経営が立ち行かなくなる、あるいは経営の継続が困難になる薬局や医療機関が出てくるのではないかと非常に懸念をしている」と表明。「改定の対象範囲を誤ることになれば、医療崩壊を招いてしまうのではないかと大変危惧している。このような状況のなかで、中間年改定を実施しても本当に大丈夫なのか、医療現場は持つのか、このあたりは影響を丁寧に見ながら、業界や関係団体の声を真摯に受け止めて議論を進めていくべきだ」と述べた。

◎調整幅 支払側・松本委員「一律2%で固定されており、妥当性に欠く」


このほか、この日の議論では調整幅についても議論が及んだ。支払側の松本委員が、「特段の議論もなく、長年にわたり一律2%で固定されており、妥当性に欠くと考えている。従来からお願いしている通り、早急に議論ができるよう、データの準備をお願いする」と述べた。

◎調整幅 診療側・長島委員「丁寧で慎重な議論必要。安易な結論を出すべきでない」 

これに対し、診療側の長島委員は「調整幅は、流通経費にかかるコストを調整する位置づけのものとなっている。川上・川下取引の中で出たバラつきを吸収する調整弁の役割を果たしている。調整幅の中には、仕切価からアローアンス、割戻しまでを含めたもの、医療機関との交渉、それとは別に純粋に流通にかかるコストが全て組み込まれており、現在の医薬品流通は調整幅の2%を前提に川上から川下に至るまで製薬企業、医薬品卸、医療機関、薬局の公正取引に基づく様々な調整ででき上がっている。調整幅を変えると、これらの調整が全て変わる可能性がある。流通コストが増えるなかで、川上取引や価格調整のあり方が変わっていることも推測できる。にもかかわらず、コストの部分だけを切り出して調整すると、いまは均衡がとれている自由な市場取引の他の部分のバランスが崩れることも懸念される。かなり丁寧で慎重な議論が必要であり、安易な結論を出すべきものではないと認識している」と主張。「安定供給、流通確保という観点からも、決して支障が出るようなことはすべきではないと強く感じている」と強調した。

厚労省は中医協に、薬価改定のイメージを提示。薬価は、各品目の市場実勢価格の加重平均値に調整幅を加えた額に改定される(ただし、改定前薬価が上限)。市場実勢価格は、製造原価とメーカーの粗利を加えた「メーカーの販売価格」に卸の粗利が加わったものとしており、これに調整幅の2%を加味したものとした。支払側の松本委員はこの図を引き合いに、「(製造原価や粗利のなかに)調整の価格が入っていないということが明確であるかどうかを知るためにも、我々は調整幅に関するデータを提供していただきたいと申し上げている」と述べた。技術革新によって製造原価が下がることも指摘されるが、「普通、我々が考える際に製造コストをはじく際に最新の見積もりを反映するはずだ」と指摘した。

◎製薬業界からのヒアリングや有識者検討会の検討内容を含めた検討へ


今後は、製薬業界からのヒアリングや、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会での検討を含めて議論を進めることも確認された。なお、有識者検討会では医薬品の安定的な供給を図ることを観点の一つに据えて検討を進めており、23年度改定に向けて10月中にも中間とりまとめを行い、中医協に報告する方針。
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