【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

中医協薬価専門部会 医薬品の安定供給は「短期的」な財政措置検討へ 23年度改定の論点に

公開日時 2022/11/10 04:52
中医協薬価専門部会は11月9日、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」における議論の状況について報告を受けた。後発品を中心として医薬品の安定供給をめぐる課題が顕在化するなかで、物価高騰や為替変動に直面している。診療・支払各側は、医薬品の安定供給をめぐり、短期的な財政措置を検討する必要性を指摘。23年度改定の論点に盛り込むよう求める声があがった。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、物価高は製薬業界だけでなく国民すべてにのしかかっている課題だと指摘。「薬価において物価高に配慮することになれば、ただでさえ病気になって出費がかさむ患者が負担軽減の恩恵を受けにくくなる」と指摘し、国民負担軽減の視点の重要性を強調した。

◎有識者検討会の「今後議論を行う論点」を提示


厚労省は、有識者検討会で取りまとめた「今後議論を行う論点」を中医協薬価専門部会に提示した。論点では、医薬品の安定供給をめぐる薬価制度を起因とする課題として、「医療上必要性の高い医薬品の安定供給を確保する観点から、現行の薬価改定ルールの在り方についてどのように考えるか。最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品等の必要な薬価を維持する仕組みについて、運用や制度の在り方についてどう考えるか」、「物価高騰による製造コストの上昇などの状況を踏まえ、医療上必要な医薬品の安定供給を確保するために、どのような対応が必要と考えられるか」が盛り込まれている。有識者検討会でも、複数の構成員から短期的な措置の必要性を指摘する声があがっていた(関連記事①、②、)。

◎診療側・有澤委員「物価高騰の影響が続くと安定供給にさらなる支障きたす」


診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、「物価高騰の影響が続くと医薬品の安定供給にさらなる支障をきたす懸念もある。23年度薬価改定をもし実施する場合においては、何かしらの配慮は必要と考える」との考えを示した。

◎支払側・安藤委員 物価高騰による製造コスト上昇を指摘 「論点にあげていただきたい」

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「医薬品の安定供給について23年度についても非常に影響があるということだと思っている。物価高騰による製造コストの上昇などについてはやはり何らかの形で短期的な財政措置なり何なりをする必要がある。その点を論点にあげていただきたい」と述べた。

◎支払側・松本委員 薬価で物価高に配慮で「患者が負担軽減の恩恵を受けにくくなる」

支払側の松本委員は、“短期的な対応”には、「薬価のみならず、税制や補助金等もある」と指摘。さらに、4大臣合意を引き合いに、「診療報酬改定のない年の薬価改定は、市場実勢価格を適時に薬価に反映して、国民負担を抑制するためにするということをしっかり押さえていく必要がある」としたうえで、「物価高は生活の様々なところで全ての国民に影響がある。安定供給に支障をきたして必要な医療が受けられないことは避けなければなりませんが、薬価において物価高に配慮することになれば、ただでさえ病気になって出費がかさむ患者が負担軽減の恩恵を受けにくくなるということは指摘させていただく」と述べた。

このほか、診療側の有澤委員は、「新薬の研究開発への再投資を促進することや企業の予見性の向上の必要性などが示されている。これらの方向に鑑みると、23年度薬価改定を仮に実施する場合においては、拡大対象となるような新たなルールの取り入れを実施すべきではないと考える」とも述べた。

◎赤名専門委員「改定率の緩和、新薬創出等加算品目、基礎的医薬品の対象除外を」

専門委員の赤名正臣氏(エーザイ常務執行役)は、23年度改定について「実施の是非を含めた慎重な検討」を改めて訴えた。「特に低薬価品については、製造コストの上昇によって著しく生産性が悪化している。改定実施の有無にかかわらず、このような品目は価格を引きあげる措置の実施についても検討が必要ではないか」と述べた。さらに、「仮に23年度改定を実施する場合でも、物価高騰の影響を踏まえて改定率の緩和もしくはイノベーション推進、安定供給の確保から、例えば新薬創出等加算品目、基礎的医薬品を改定の対象から除外するなどの措置を検討すべきではないか」と続けた。さらに、適用ルールについては、「市場実勢価に基づき行うもの、および実勢価改定と連動してその影響を補正するものに限定されるべき。新薬創出等加算の累積額の控除もしくは長期収載品の特例引き下げ、Z2、G1・G2などは実施しないことが極めて妥当」と述べた。

◎赤名専門委員「米国とは前提異なる」 村井専門委員 後発品不足は「世界的な問題」

さらに、財務省が11月7日の財政制度等審議会財政制度分科会に、米国では物価高騰の対策として、特例的に医療保険 (メディケア)の薬価を引き下げる法案を成立させたことが引き合いに出されていたことに触れ(関連記事)、「皆さんご承知の通り、米国は全く違う薬価制度で、自由薬価で、日本のような定期的な引き下げがなく、むしろ企業が薬価を引き上げていくということが許容されている仕組みのマーケットだ。こういったマーケットと単純に、国民負担の軽減という文脈のみをとって前提が全く異なる国の事例を引き合いに、4大臣合意で合意された基本方針を超える改定を行う。こういった主張はなかなか理解しづらいものがあるではないか」などと述べた。

一方、専門委員の村井泰介氏(バイタルケーエスケー・ホールディングス社長)は、医薬品卸の国際大会であるIFPWでの報告を引き合いに、「後発品を中心とした医薬品不足の問題は、実はイギリス、フランス、スイス、あるいはブラジルなどを世界各地でいま起こっていてこの業界の非常に主要な懸念材料となっているという報告がなされたと聞いている。ぜひ中間年の改定のあり方を検討いただく場合に、この不足問題が世界的な問題でもあるという側面をご理解いただきたい」と述べた。

◎診療側・長島委員「薬価だけで解決は不可能」

診療側の長島公之氏(日本医師会常任理事)は、「この検討会では、非常に多岐にわたる議論をされているように拝見しているが、中医協以前の話も多々あるように感じており、その全てを薬価で解決することは不可能だ」と指摘。支払側の松本委員は、「制度の根幹にかかわることもあるので、大きな制度改革については、中医協において事実関係を正確に把握しながら、少し時間をかけて慎重に議論する必要があると考えている」と述べた。

◎薬価差で診療側・有澤委員「小規模薬局がさらなる窮地に」 “経営原資”になっていない

このほか、薬価差について、診療側の有澤委員は、「薬価差益ではなく、過剰な薬価差を是正していくべき」と表明した。「現行の薬価改定によるしわ寄せは特に中小規模の薬局が大きく影響を受けている」と指摘。「薬価差の偏在については、メーカー、卸、取引形態や仕切価、納入価、あるいは、割戻し、アローアンスの個々の実態を含めた検討も必要ではないか。そのうえで議論を深めていかないと、バイイングパワーのない小規模の薬局などは、さらなる窮地に追い込まれてしまう可能性がある」と述べた。そのうえで、「薬価差が薬局の経営原資、少なくとも中小規模の薬局においては経営原資というものにはなっておらず、薬剤管理コストあるいは廃棄損耗分こういったものに吸収されているというのが現状だ」と述べた。



プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(39)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

記事はありません。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー