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中医協・薬価専門部会で診療側・長島委員 「単なる安定供給確保」理由の薬価引き上げを牽制

公開日時 2022/11/17 04:52
中医協薬価専門部会は11月16日、2023年度改定の論点をめぐり、議論を行った。改定範囲をめぐっては、診療・支払各側から「国民負担の軽減」を踏まえた議論を行う必要性を指摘する声があがった。物価高騰などで医薬品の安定供給が改定議論の焦点となるなかで、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「単に安定供給確保という理由だけで薬価を引き上げるのではなく、患者さんにとって納得でき、さらに企業の合理的な対応の有無等を踏まえたうえで検討する必要がある。診療側、支払側ともに議論していくべき」との考えを示した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「物価高騰だから一律に引き下げを緩和するということに関しては、容認できない」と述べた。製薬業界は物価高騰などを背景に、薬価改定について実施の是非を含めた慎重な検討を求めている。

◎平均乖離率の0.625倍で新薬63%、長収品89%、後発品82%が対象との試算を公表


毎年改定の対象は、2018年末に4大臣合意された薬価制度の抜本改革に向けた基本方針で、「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」と明記された。その後、19年の薬価制度の抜本改革について骨子では、対象範囲は「国民負担の軽減の観点から、できる限り広くすることが適当」とされている。これを踏まえ、毎年薬価改定の初年度となった21年度改定では、平均乖離率8%の0.625倍に当たる乖離率5%超が対象となった。

厚労省保険局医療課はこの日の中医協に、22年度薬価改定で用いた薬価調査データ(平均乖離率7.6%)に基づき、“仮に”21年度改定と同様に「平均乖離率の0.625倍を超える品目」を対象とした場合の試算を提示。全体の70%(1万2230品目)が対象となり、新薬63%(1428品目、うち新薬創出等加算品は232品目、43%)、長期収載品89%(1538品目)、後発品82%(8110品目)、その他品目32%(1153品目)が対象となることを示した。

◎診療側・長島委員 乖離率が縮小している可能性を指摘「薬価調査踏まえた議論を」

焦点となる改定範囲について、診療側の長島委員は、「まず前回の21年度の対象範囲がそのまま今回の対象範囲となるものではないということを確認すべきと強く主張する」と述べた。「4大臣合意に基づき、平成30(2018)年から5年連続で毎年薬価改定が実施されたことで、乖離率が縮小している可能性も否定できない状況であることを踏まえ、対象範囲については、今年度の薬価調査の結果がどの程度であれば、価格乖離が大きいと言えるのかを改めて議論する必要があると考える」と続けた。

そのうえで、「現時点で言えるとすれば、国民負担の軽減という観点に加えて、4大臣合意がなされた際には存在しなかった事情として、現在の為替変動や原材料価格の高騰あるいは医療上必要な医薬品の安定供給に支障が生じ、医療現場に大変な問題が生じていることが多くの医療関係者や患者さんにとって共有されていること。さらには、今後予想される新型コロナウイルス感染症第8波の影響といった足下の課題も踏まえながら、改定対象範囲を検討すべき」と述べた。

診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、「国民負担の軽減という目的は理解できるが、薬価改定は薬局、医療機関の経営や医療、医薬品の関係者に予想以上に大きな打撃を与えるものだ。対象範囲は、平均乖離率を超えたもののみ対象とすべき。薬局の在庫コストへの影響が大きいことを考えれば、全品目を対象にした中間年改定は実施すべきではない」と主張した。

◎支払側 21年度改定の対象範囲を「ベース」に 乖離額の考慮の必要性も指摘

一方、支払側の松本委員は、「価格乖離の大きな品目ということと、できるだけ広くということが適当という2つを十分念頭に置く必要がある」と指摘した。そのうえで、21年度改定の対象範囲である「平均乖離率の0.625倍」が「議論のベース」との考えを示した。「これを変えるということであれば、それ相応の根拠が必要であるということをまず指摘する」と述べた。さらに、「乖離率だけでなく、乖離額も考慮するかどうかは引き続きの課題だという認識を持っている」と述べた。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「乖離率だけでは、カテゴリー別で、影響が大きい薬もある。乖離額についても考慮に入れて、慎重に判断をすべき」と述べた。

このほか、21年度改定ではコロナ禍で、流通が平時と異なっていたため、「薬剤流通への影響を緩和する」ために、一定幅として0.8%緩和する特例措置が設けられた。診療側の有澤委員は、「今回は医薬品の安定供給の影響を勘案し、特例的な措置をとることも考慮すべき」と主張。一方、支払側の松本委員は、「20年春と価格交渉の状況が異なることを根拠として、適用しないことが妥当だと主張する」と述べた。

◎医薬品の安定供給 診療側・長島委員「患者の納得性、企業の合理的な対応踏まえたうえで検討を」

物価高騰や為替変動、さらには毎年薬価改定の導入により不採算品目が増加することが指摘されており、23年度改定では医薬品の安定供給確保が焦点となっている。この日も、専門委員の赤名正臣氏(エーザイ常務執行役)が、「4大臣合意の時から直近の原油価格高騰や円安進行などは状況が変わってきている。医薬品の製造コストに大きな影響を与えているという現状を見ると、とてもいま現在薬価を引き下げる状況ではない」と主張。「著しく採算性が悪化している品目については、改定の実施の是非にかかわらず、薬価引き上げを検討すべきではないか」、「仮に実施する場合においても、物価高騰の影響を踏まえ、またイノベーションの推進および安定確保、供給確保という観点から、例えば乖離率の緩和もしくは新薬創出加算品目、そして基礎的医薬品などを改定の対象から除外するといった措置は必須だ」と訴えた。診療側の有澤委員も、「安定供給のために必要な措置は必須。算定ルールとは別に、不採算品の対応などは緊急的な対応として実施することが必要」などと述べた。

診療側の長島委員は、「医療上必要な医薬品の安定供給に支障が生じたり、すでに医療現場にも影響が生じ、医療現場に大変な問題が生じていることが多くの医療関係者や患者さんにとって共有されているという、足下の課題も踏まえたうえで、どのような対応が考えられるのか。具体案の検討を中医協として考えるべき」との考えを示した。「その際には、単に安定供給確保という理由だけで薬価を引き上げるのではなく、患者さんにとっても納得でき、さらに企業の合理的な対応の有無等を踏まえた上で検討する必要があり、診療側、支払側ともに議論していくべき」と続けた。

支払側の松本委員は、「最低薬価と基礎的医薬品の薬価維持で対応しきれないものについて、個別に具体的に説明をしていただかないと判断はできない。対応するにしても、物価高騰だから一律に引き下げを緩和するということに関しては容認できない」と述べた。

◎適用ルール 支払側・松本委員 新創品の累積額控除とG1・G2実施「妥当性は十分にある」

23年度改定の適用ルールについては診療側の長島委員は、21年度改定や消費増税改定を引き合いに、「実勢価格改定に連動して、その影響を補正するルールを適用することが基本的な方向性になるべき」と表明。一方、支払側の松本委員は、「実勢価格に連動するルールに限って適用するという考え方を引き続き採用した場合でも実勢価格の猶予を戻す新薬創出等加算の累積額控除と長期収載品の薬価を包括し後発品の実勢価改定と連動させるG1・G2ルールを適用する妥当性は十分にあると考えている」と述べた。

◎支払側・松本委員「カテゴリー別の調整幅」を提案 村井専門委員「乖離率とセットで議論を」

このほか、前回改定から「継続検討」となっている調整幅についても論点にあがった。診療側の長島委員は、「そもそも調整幅を変更すること自体、長年積み重ねてきた川上から川下までの医薬品取引のあり方について大きな影響を及ぼす可能性がある。その変更は十分慎重であるべき」と述べた。そのうえで、チェーン薬局では病院・診療所よりも薬価差(乖離率)が大きくなっているとのデータを引き合いに、「こういった大幅な差があるなかで価格改定が行われている実態を踏まえ、安直に調整幅を変更する議論は医療機関にとって非常に大きな影響を生じさせるものであると考えている」と強調。「調整幅は現行の薬価制度全体のなかで位置づけられていることを踏まえれば、通常改定とは異なる、中間年改定において調整幅を変更することは適当ではない」と述べた。

一方、支払側の松本委員は、調整幅の議論に資するカテゴリー別の乖離率の分布などのデータの提示を改めて求めた。そのうえで、厚労省がこの日提示した、新薬創出等加算品を「100」とした場合のカテゴリー別の指数を引き合いに、「試行的になるが、カテゴリー別の調整幅を適用することを検討するということも合うのではないか」と述べた。この日提示された厚労省のデータでは、新薬創出等加算品を「100」としたときに、21年度では「特許品・その他」では146(19年度:126、20年度:130)、「長期収載品」では232(同187、196)、「l後発品」では308(281、280)となっており、「新薬創出等加算品や特許品は新薬メーカーの価格戦略などにより、値下げ幅が比較的小さいいのに対して、後発品は同種同効薬が多く競争が激しいこともあり、取引においては、全体をまとめて値引きする“総価取引”の際の調整弁として活用され、相対的に乖離が大きくなっていると思われる」とされている。

専門委員の村井泰介氏(バイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役社長)は、「いまの薬価算定の方程式では“平均乖離率という1本の仕様+調整幅”がセットになっているので、調整幅だけカテゴリー別ということではなく、やはり平均乖離率のあり方、使い方を含めてセットで議論されるべき」との考えを示した。
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