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日医・松本会長 日本の医療の明日を語る 医療機関が機能を発揮「面」で地域医療を支える姿へ

公開日時 2023/01/06 04:52
日本医師会の松本吉郎会長は本誌インタビューに応じ、日本医師会として目指す医療の姿について、「平均寿命と健康寿命を延伸し、その差をもう少し縮め、元気で長生きする世界を実現したい」と熱く語った。描くのは、個々の医療機関が機能を発揮し、面で地域を支える医療の姿だ。機能分化と連携の必要性が高まるなかで、かかりつけ医の姿も、「これまでと決して同じではない」と話し、医師自身が研鑽し、進化することの必要性を強調する。2023年は、かかりつけ医の法定化を含めた医療法改正の議論や診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬が同時に改定されるいわゆるトリプル改定の議論が控えている。加えて医療提供体制をめぐる議論も本格化する。人口減少と高齢化など、社会構造の課題も大きいなかで、“日本の医療の明日”をどう描くかについて大いに語って頂いた。(望月 英梨)

インタビューは、Monthlyミクス2023年1月号に全文を掲載しております(会員限定、記事はこちら

◎元気で長生きできる社会実現へ 医療提供体制のキーワードは「役割分担と機能強化」

「国民の健康と命を守り、地域住民の健康維持に、日本医師会としてしっかり取り組んでいきたい。そして、その重要性を国民の皆さんにも周知していきたい」-。松本会長は、インタビュー冒頭でこう強調した。そのうえで平均寿命と健康寿命の差を縮め、元気で長生きできる世界の実現は、「社会保障費の伸びが指摘されるなかで、これが実現できれば、一つの解決策になるのでは」との考えも示した。そのためには、ワクチンなどによる予防医療に加え、「疾患を抱えながら自宅で過ごす方に、普段の生活に戻ってもらうことも、重要な視点だと考えている」との考えを示した。さらに、「尊厳をもって、人生の最終段階を住み慣れた場所で迎えようとする患者さんを支えていくことも非常に重要だと考えている」と述べた。

こうした医療を実現するためには、「かかりつけ医の話にも通じるところがあるが、1人の医師、1つの医療機関で“24時間、365日”対応することはできない。役割分担、機能分化と連携がキーワードになる。各医療機関がそれぞれの機能を高め、連携することにより、さらにそれを強固なものにすることが、日本の良い医療を継承していくことにつながる。個々の点を強化し、それをつなげることで“面”としての地域医療提供体制をしっかり守ることが大事だと考えている」と語った。地域医師会には、「初期救急の医療体制を充実させ、中心的な役割を担っていただきたい。これにより、二次・三次救急に患者が集中するのを防ぐことができる」との考えも示した。

◎かかりつけ医議論で医療機関は「選ばれる側」に 「これまでと同じでは決してない」

かかりつけ医の議論が進むなかで、かかりつけ医については、「ひとつの医療機関、一人の医師で、「24時間、365日」、一人の患者さんを支えることはできない。まずは、個々の医療機関がどのような役割ができるか、見える形で示す努力をする。患者さんはそれを理解したうえで、かかりつけ医を選ぶということだと考えている」との考えを示した。現在の議論の方向性については、「フリーアクセスという日本の医療の良いところを残すことが前提となっている」と述べた。そのうえで、「医療機関にとっては選ばれる側になる。患者さんに選んでもらえるような自己研鑽、研修を積むことも必要になるし、機能を少しずつ拡大していくことが求められることになる。医療機関自らが努力をし、患者さんに選んでもらえるようになることがキーポイントだと思っている。これまでと同じでは決してない。我々も努力をし、進化していかなければ意味がない」と力を込めた。

一方で、かかりつけ医の報酬体系を人頭払いや包括払いとする議論については、「すべてを包括払いにすると、かえって医療が歪むリスクがあると考えている」と表明。「現状でも、診療所や病院はみな患者さんに選ばれるために、腕を磨き、競争をしている。それが結果として医療の質向上につながっている。登録制や人頭払いにすることは、かえってこうした競争原理が働かなくなる可能性もある」と指摘した。

◎24年度トリプル改定議論へ「国民のために必要な財源確保に向け、しっかり訴える」

今年は、24年度に予定される診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定に向けた議論が本格化する。松本会長は、「国民の健康と命を守ることが日本医師会の役割だ。そのためには一定程度の社会保障財源が必要になる。特に日本の国民皆保険制度は、安全性と有効性が担保され、有効性があるものであれば、医療保険のなかに取り入れて手当てしてきた。今後も日本医師会は、国民のために必要な財源の確保に向けて、しっかり訴えていきたい」と強調した。

人口構造が変化するなかで、「松本会長 いまの現役世代は平均所得が伸びない、むしろ中央値が下がってしまっているというなかで、特に若い世代にこれ以上の負担を求めることは難しいという声も多くあがってきている」とも表明。日本の公的医療保険は、国が税金で賄う公費、保険料、窓口負担で構成されているが、いずれも引上げには課題があるとして、「社会保障費の財源をどこから確保するか、というのは大きな課題だ」との認識を示した。特に、「賃金が上がらないことは大きな課題だと考えており、日本医師会としては、大企業などの内部留保が500兆円を超えるなかで、1%でも賃金に回してもらいたいと主張している。そうすれば、所得も増え、それに伴って健康保険料も増加する」と述べた。そのうえで、「これからの医療保険制度を考えると、社会保障費の割合が国の財政においても大きな割合を占めることはわかっているので、それをどう吸収していくか考える必要がある。ただ、人にとって健康は何にも勝る財産なので、しっかりと守っていかなければ、国が成り立っていかないだろう。健康でしっかりと働ける、生活できるということは幸せの根源だ、と私は思っている。これを支えていくためには社会保障費が非常に重要だ。国が責任をもって、体制を持続できるように財源を捻出してほしいと思う」と述べた。

◎薬価改定 乖離率圧縮「限界が見えてきたのでは」 後発品問題は産業構造の課題を指摘

このほか、薬価について見解を聞いた。松本会長は、「日本は薬価が公定価格で定められているが、市場での取引による市場実勢価格で価格が定められている。このため、薬価差が生じてくるのはやむを得ないと考えている」と述べた。後発品の供給不安については、「薬価より、むしろビジネスモデルに起因する課題が大きいのではないか」との見解も示した。そのうえで、薬価調査の結果を見ても乖離率が圧縮されてきたことから、「薬価差は一定程度存在することになろうかと思うが、縮小傾向が続いていくのではないか。非常に難しい問題だが、限界が見えてきたのではないかと感じている」と述べた。
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