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23年度改定 新薬創出等加算、不採算の特例影響色濃く 競争市場は加算の有無で明暗 ツムラは「プラス3%」

公開日時 2023/03/06 06:00
2023年度薬価改定の各社別に調べたところ、臨時・特例的に実施された新薬創出等加算、不採算品再算定の影響が色濃く出た結果となったことがミクス編集部の調査でわかった。回答企業最多となる40成分40品目の不採算品再算定の適用を受けたツムラが「プラス3.0%」と改定後にむしろプラスの影響を受けた。このほか、不採算品再算定の適用を受けた企業で改定影響率が緩和する傾向が見られた。新薬創出等加算の臨時・特例的な適用の影響も大きく出た。競争市場である糖尿病領域などでは新薬創出等加算の有無により、改定影響率に開きが出る結果となった。安定供給とイノベーションへの配慮を掲げた23年度改定の目的通り、ポートフォリオにより各社の明暗を分ける結果となった。

文末の「関連ファイル」に、各社主力品の改定率、新薬創出等加算品の改定率、製薬各社の影響率、不採算品再算定などの資料を掲載しております(会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら)。

薬価基準改定の官報告⽰⽇(23年3⽉3⽇)の20時までに回答のあった製薬60社(内資系39社,外資系16社、ジェネリック5社)からの回答を基に集計した。

◎3%引上げのツムラ 40成分40品目に不採算品再算定が適用

22年4月を起点に23年度薬価改定の各社別に改定の影響率を調べたところ、不採算品再算定の影響で薬価改定でプラスに転じた企業が2社あることがわかった。不採算品再算定は、安定確保医薬品(カテゴリーA~C)、基礎的医薬品、その他これまでの学会要望などで特に医療上の必要性が高いと思われる品目など、医療上の必要性が高く、安定確保が求められる医薬品が対象とされている。

改定後にかえってプラスに転じたのがツムラで、「プラス3.0%」だった。新型コロナの影響で、想定を大幅に超える需要が発生したとして、漢方の出荷調整が続き、安定供給も求められているところ。23年度薬価改定では、不採算品再算定の適用を40成分40品目受けた。ツムラ⽜⾞腎気丸1gが「プラス10.3%」、ツムラ⼤建中湯1gが「プラス1.1%」など、引上げを受けた。なお、ジェネリックメーカーでは、38成分99品目に不採算品再算定が適用されたニプロが「プラス1%台」など、“プラス”と回答している(関連記事)

◎三和化学「2%台後半」 扶桑薬品「2%」 高K血症治療薬や生食注キットが二桁引上げ

輸液や抗菌薬など、エッセンシャル・ドラッグを多く有する企業では、不採算品再算定などによる価引上げで改定影響率は低い傾向となった。三和化学の改定影響率は「2%台後半」。7成分11品目が不採算品再算定の適用を受けた。新薬創出等加算の企業要件はⅢであるものの、ポートフォリオはエッセンシャル・ドラッグが多く、主力品の高カリウム血症治療薬・ポリスチレンスルホン酸Ca経⼝ゼリー20%分包25g「三和」が「プラス17%台」と大幅な引上げを受けた。

扶桑薬品の改定影響率は「2%」。後発品20成分32品目中、引上げを受けたのは2成分6品目あった。主力品の基礎的医薬品の⽣理⾷塩液PL「フソー」100mLが「プラス9.8%」、⽣⾷注キット「フソー」100mLが「プラス14.6%」、引上げられた。

◎影響率「0%」はアムジェン、バイオジェン 「1%弱」の小野薬品は長収品比率が5%

革新的新薬をポートフォリオに揃える企業で影響率が低い傾向は従来通り。改定影響率が「0%」との回答はアムジェン、バイオジェンの2社だった。

小野薬品は「1%弱」と回答。長期収載品比率は「5%程度(2023年3月見込み)」で、抗がん剤・オプジーボをはじめとした革新的新薬をポートフォリオに揃えた同社の改定影響率は低い結果となった。オプジーボや多発性骨髄腫治療薬・カイプロリスなどがゼロ、2型糖尿病治療薬・グラクティブ錠50mgは「0.17%」などとなった。

◎中外製薬は「1%台後半」 武田薬品「2%台前半」 第一三共「2%台」 アステラス「約3%」

中外製薬は「1%台後半」。長期収載品比率は約4割(ロナプリーブを除く)と比較的高く、抗がん剤・アバスチン点滴静注⽤400mg/16mLが5.8%の引下げを受けた。ただ、主力品の抗がん剤・テセントリク点滴静注1200mg、パージェタ点滴静注420mg/14mL、アレセンサカプセル150mg、カドサイラ点滴静注⽤100mg、血友病治療薬・ヘムライブラ⽪下注90mg、関節リウマチ治療薬・アクテムラ⽪下注162mgオートインジェクターなど、新薬創出等加算品の薬価が維持され、改定影響は低率にとどまった。

第一三共は「2%台」と回答。新薬創出等加算品目は改定の影響は受けなかったが、長期収載品が「約10%」、後発品が「約12%」の影響を受けた。新薬創出等加算品のランマーク⽪下注120mgが「0.01%」、ビムパット錠100mgが「0.03%」の影響を受けた。

このほか、武田薬品は「2%台前半」、大塚製薬は「2%台後半」、アステラス製薬は「約3%」、
住友ファーマは「4%台半ば」、田辺三菱製薬は「3%台前半」、塩野義製薬は「2%台」、エーザイは「4%強」だった。外資系企業ではファイザーが「3%台」、日本ベーリンガーインゲルハイムが「3%程度」と回答した。

◎協和キリンは「4%台前半」 ダルベポエチンアルファ、リツキシマブBSが二桁引下げ

競争市場に主力品を有する企業では改定影響率も大きい傾向もみられた。協和キリンの改定影響率は「4%台前半」。ロミプレート⽪下注250μg調製⽤の影響率はゼロだったが、腎性貧血治療薬・ダルベポエチン アルファ注60μgシリンジ「KKF」が12.1%、リツキシマブBS点滴静注500mg「KHK」が12.6%の引下げを受けた。

◎新薬創出等加算の臨時・特例適用 最多はノバルティスの9成分11品目

23年度改定では、新薬創出等加算については、通常の加算の算定方式に基づき加算を行った後、改定前薬価と加算適用後の価格差に相当する額の95%を加算適用後の価格に上乗せする臨時・特例的な対応がなされた。回答企業のうち、新薬創出等加算の特例的な引き上げを受けた品目数が最多だったのはノバルティスファーマの9成分11品目だった。なお、ノバルティスファーマの新薬創出等加算品目は最多の25成分44品目。

◎DPP-4阻害薬 新薬創出等加算の有無で開き

生活習慣病をはじめとした競争市場では一般的に乖離率が開く傾向にあり、今回の特例適用の影響を大きく受けた。糖尿病治療薬・DPP-4阻害薬では、新薬創出等加算品のグラクティブ錠50mg(小野薬品)が0.17%、ジャヌビア錠50mg(MSD)が0.2%、エクア錠50mg(ノバルティスファーマ)が0.3%。一方で、新薬創出等加算品でないトラゼンタ錠5mg(日本ベーリンガーインゲルハイム)は4.2%、テネリア錠20mg(田辺三菱製薬、第一三共)は7.4%と新薬創出等加算の有無で、明暗を分ける結果となった。

なお、23年度薬価改定では、平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)超の品目が改定対象。市場実勢価に連動しないルールである不採算品再算定を臨時・特例的に実施。通常ルールでは、同一組成、剤形、規格の製品が複数ある場合にはその全てが不採算になっていないと適用ができないため、ハードルが高いことが指摘されていたが、全品目を対象とする措置を敷いた。新薬創出等加算については、通常の加算の算定方式に基づき加算を行った後、改定前薬価と加算適用後の価格差に相当する額の95%を加算適用後の価格に上乗せする臨時・特例的措置を行った。(望月英梨、神尾裕、沼田佳之)

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