ヤンセンファーマは、治療をしながら働き続けることのできる職場づくりを支援している。国際女性デー（3月8日）を前に、女性の健康問題に対して理解を深めるためのイベントを前日7日に開催した。イベントでは、同社が開発した上司と部下の模擬対話によって、治療と仕事の両立を支援する対話を学ぶトレーニングを実践。エッセイストでタレントの小島慶子さんらがシナリオに沿って、上司や部下の役を演じながら、治療と仕事を両立させるために必要な言葉がけやコミュニケーションのあり方を考えた。(写真提供：ヤンセンファーマ、左から桜井氏、小島氏、濱田氏）

「対話でつくろう サステナブル・ワークスタイリング」－は、上司・部下間のコミュニケーションを重視したトレーニング・プロジェクトのことで、同社が22年10月に発足させたもの。今回は、働く女性が直面するケースとして課題が想定される不妊治療と乳がんをテーマに模擬対話を行った。

参加者は、それぞれが渡されたシナリオに沿って、▽相手の意向を聞き、新しい働き方を2人で考える上司、▽仕事優先の働き方を求め、プライベートに立ち入る上司、▽相手の体調や意向を十分に聞かず、上司の考えで働き方を決める上司、▽相手の体調や意向を十分に聞き、部下の休み方を2人で考える上司、それに仕事と治療の両立を目指す部下を演じた。

部下の「休み方」を2人で考えるロールプレイングでは、小島慶子さんが部下役、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループの濱田いずみバイスプレジデント ガバメントアフェアーズ＆ポリシー 統括責任者が上司役になった。部下役の小島氏が「抗がん剤の治療が辛いときがあり、復帰してしばらくは仕事量や出社日数をセーブしたい」と訴えると、上司役の濱田氏は「正直に話してくれてありがとう」と返答。まずは治療に専念することが重要であることを伝えたうえで、働き方の希望について聞き取った。小島氏は、「治療をしながら働く中で、仕事量を減らしてほしいと上司に伝えるのは演技でも怖いことだったが、気遣ってくれることで自分の気持ちを正直に伝えることができた」と振り返った。

一連のロールプレイングについて、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループの岡原伸太郎統括産業医は、「治療や自身の体のことはプライベートな話で抵抗感を感じる人も多い話題だ。上司は評価者である前に人間として部下の話を受け止めるという姿勢を意識してほしい。〇〇しなさいと決めつけることはよくないことで、対話を重ねることが重要だ」と説明した。

◎パネルディスカッション　治療と仕事の両立には、「職場の制度・風土・態度が大切」

このあと行われたパネルディスカッションでは、小島氏が放送局のアナウンサー時代に不安障害になった自らの経験を振り返りながら、「病気をしたことで『使えない』と思われているという不安があり、辛かった」と話した。そのうえで治療と仕事の両立には、「職場の制度・風土・態度が大切だ。どれが欠けてもサステナブルな働き方はできない」と訴えた。

がん患者の就労について考える一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみ代表理事は、「上司がよかれと思って『治療に専念したら』と言っても、受け取り方によっては『辞めろということなのか』と考えてしまうこともある。こういう休み方がある、と言われるのではなく、こういう働き方があると言葉を変えて伝えるといいのではないか」と指摘した。

また同社の濱田氏は、闘病によって出張を突然中止せざるを得なかった経験を明かした。濱田氏は、「上司や仲間が『体を大切に』と言って理解してくれた。仕事と治療を両立するには、自分から正直に状況を話すことや、普段から周囲と信頼関係を築いておくことが大事だ」と強調した。

◎がん治療をしながら働く人は36.5万人

厚労省の調査によると、がん治療をしながら働く人は36.5万人に上り、うち女性は約6割にあたる21.1万人となっている。また不妊治療をしたことがある（または予定している）労働者のなかで、「仕事との両立ができなかった（または両立できない）」と回答した人は計34.7％に上っている。

ヤンセンファーマコミュニケーション＆パブリックアフェアーズ部の富永紗くら部長は、こうしたデータを提示しながら、「女性の罹患数トップの乳がんは、30代後半から罹患率が増加し始める疾患で、治療と仕事の両立は女性活躍の視点からも重要だ」と述べた。イベントには、同社の社員ら約20人が参加したほか、保険会社やIT企業など外部の企業からも3人が参加した。同社では、このトレーニング・プログラムを外部の企業にも広めたい考えを示している。