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住友ファーマ・野村社長 P3で主要評価項目未達のulotaront「コマーシャルで有用性の訴求しにくい」

公開日時 2023/08/03 04:51
住友ファーマの野村博社長は8月2日に東京で開催した記者会見で、統合失調症を対象とした米国での第3相臨床試験で主要評価項目を達成できなかったulotarontについて、「承認申請戦略とともに、事業性も含めて総合的に考えている」と述べた。事業性に関しては、米FDAが現在のデータで仮に承認したとしても、「コマーシャルにおける有用性の訴求はしにくい」(野村社長)との考えが背景にある。野村社長はデータの詳細な解析を進めると改めて説明するとともに、統合失調症を対象疾患とするulotarontの事業性にも触れた格好となった。

TAAR1アゴニストのulotarontは住友ファーマの創製品。ピーク時年間売上が2000億円以上あった同社の非定型抗精神病薬・ラツーダを超えるブロックバスターになると期待する次期主力品候補だ。2027年度を最終年度とする現中期経営計画の次の5年間の成長のカギをにぎっている。パートナー企業の大塚製薬とともに統合失調症、大うつ病補助療法、全般性不安障害を対象に米国や日本などで開発している。

ただ、7月31日にulotarontの統合失調症を対象とする2本の第3相試験で主要評価項目を達成できなかったことが明らかとなった(記事はこちら。住友ファーマは「非常に高いプラセボ効果が観察され、ulotaront投与群の有効性をマスクした可能性がある」と推測し、コロナ禍という環境変化が一因になったとみている。野村社長はこの日、「残念ながら出だしでつまずいたが、我々はulotarontのポテンシャルを疑っていない。データの詳細な解析を進める」と強調した。

◎生成AIを用いたチャットツール 2カ月に延べ約1300人が利用

住友ファーマは生成AIを用いたチャットツールの全社運用を5月26日から開始した(記事はこちら。同ツールは、米OpenAI社が提供するAIエンジンを利用したもので、同社提供の「ChatGPT」と同等の機能を持つ対話型のウェブツール。まずは一般的な知識のみを検索・生成対象とし、草案の提示、文章添削、プログラミング、要約、翻訳などに、部門に関わらず活用している。なお、OpenAI社が入力情報(質問)や出力情報(回答)を二次利用しない仕様になっている。

野村社長は、この約2カ月間に全社で延べ約1300人が利用したと報告。利用事例などを社内で共有できる環境も整え、全社でより良い使用方法のノウハウを蓄積していると説明した。社長自身も生成AIに英文のデータを作ってもらったものの「デキが悪かった」と言い、プロンプト(生成AIへの指示文)が出力情報に大きく影響することを実感したとのことだ。

馬場博之常務執行役員(データデザイン、法務、知的財産、IT&デジタル革新推進、フロンティア事業推進担当)によると、社員は現在、主にメール文面の作成、英語メール文面の作成、音声データから議事録の作成及びその要約の作成、プレゼンテーション資料のたたき台の作成――などに活用中。馬場氏は「手間が十分に省ける。業務の生産性が向上する」と手応えを語った。社内利用者のプロンプトをはじめとする活用事例も蓄積していることから、より精度が上がると期待感も示した。

今後の展開に関しては、よりセキュアな環境を構築した上で、社外秘の情報や社内言語情報を検索・生成対象に加える考えで、「より本質的な課題にも用いることができると思っている」と話した。馬場氏は“より本質的な課題”が何かには触れなかったが、例えば営業関係では、MRの営業日報データを組み込むことで、医師が抱える課題を抽出したり、課題解決のアイディアを生成してもらうこともありそうだ。
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