アセトアミノフェン含有製剤について、「消化性潰瘍のある患者」など、禁忌を削除する添付文書改訂が行われた。厚生労働省医薬局医薬安全対策課が10月12日、課長名で添付文書改訂を指示したことを受けたもの。今回、アセトアミノフェン含有製剤で禁忌が解除されたのは、消化性潰瘍のある患者のほか、▽重篤な心機能不全のある患者、▽重篤な血液の異常のある患者、▽重篤な腎障害のある患者、▽アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者――。
このほか、各種G-CSF製剤やアーリーダ、ヤーボイなどの添付文書も改訂された。
添付文書の改訂指示があった医薬品は次の通り。
〈アセトアミノフェン含有製剤〉
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アセトアミノフェン(経口剤)
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アセトアミノフェン(注射剤)
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アセトアミノフェン(坐剤)
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トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤
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ジプロフィリン・ジヒドロコデインリン酸塩・dl-メチルエフェドリン塩酸塩・ジフェンヒドラミンサリチル酸塩・アセトアミノフェン・ブロモバレリル尿素配合剤
NSAIDsを含有する▽サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩配合剤、▽サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・クロルフェニラミンマレイン酸塩配合剤、▽イソプロピルアンチピリン・アセトアミノフェン・アリルイソプロピルアセチル尿素・無水カフェイン配合剤――は、今回の禁忌解除の対象品目には含まれない。
改訂概要:禁忌の7つの患者集団のうち、▽消化性潰瘍のある患者、▽重篤な心機能不全のある患者、▽重篤な血液の異常のある患者、▽重篤な腎障害のある患者、▽アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者――の5集団の禁忌を解除する。
なお、▽消化性潰瘍のある患者、▽重篤な心機能不全のある患者、▽重篤な血液の異常のある患者――の3集団は、「特定の背景を有する患者に関する注意」(旧記載要領では「慎重投与」の項)において注意喚起を行う。
重篤な腎障害のある患者では、本剤の投与量及び投与間隔の調節を考慮する旨の注意喚起を行う。
「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」では、単剤の「用法及び用量に関連する注意」(旧記載要領では「用法及び用量に関連する使用上の注意」)の項において、本剤1回300mg以下とする旨の注意喚起を行う。トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤は、「抜歯後の疼痛」に対しては引き続き禁忌とし、「非がん性慢性疼痛」に対しては、「1回1錠とすること」及び「当該配合剤を用いず、個別のアセトアミノフェン製剤を用いた用量調節を考慮すること」の注意喚起を行う。
改訂理由:日本運動器疼痛学会からの禁忌解除の要望を受け、国内外の症例、公表文献、国内外のガイドラインを評価し、専門委員の意見も聴取した結果、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
〈G-CSF製剤〉
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ペグフィルグラスチムほかバイオ後続品(先発品名:ジーラスタ皮下注、協和キリン)
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フィルグラスチムほかバイオ後続品(先発品名:グラン注射液、同シリンジ、協和キリン)
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レノグラスチム(販売名:ノイトロジン注、中外製薬)
改訂概要:「重要な基本的注意」の項に、骨髄異形成症候群及び急性骨髄性白血病に関する注意事項を追記する。
改訂理由:海外レトロスペクティブコホート研究などの状況を踏まえ、G-CSF製剤の骨髄異形成症候群又は急性骨髄性白血病(以下、MDS/AML)に対する注意喚起の必要性及び注意喚起内容について、専門委員の意見も聴取した。その結果、G-CSF製剤とMDS/AMLの因果関係は明らかではないものの、本研究においてG-CSF製剤の使用によりMDS/AMLのリスク増加が示唆されていることなどから、G-CSF製剤の使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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ジアゾキシド(販売名:ジアゾキシドカプセル「OP」、オーファンパシフィック)
改訂概要:「特定の背景を有する患者に関する注意」の「小児等」の項に、心嚢液貯留及び壊死性腸炎に関する記載を追記する。「副作用」の「重大な副作用」の項に「心嚢液貯留」及び「壊死性腸炎」を追記する。
PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「心嚢液貯留関連又は壊死性腸炎関連症例」の集積状況:国内症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は0例。海外症例のうち、医薬品と心嚢液貯留関連との因果関係が否定できない症例は3例(うち死亡0例)、医薬品と壊死性腸炎関連症例との因果関係が否定できない症例は4例(うち死亡1例)。
改訂理由:心嚢液貯留関連症例及び壊死性腸炎関連症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤と心嚢液貯留又は壊死性腸炎との因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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アパルタミド(販売名:アーリーダ錠、ヤンセンファーマ)
改訂概要:「重要な基本的注意」の項の重度の皮膚障害に関する記載に「薬剤性過敏症症候群」を追記する。「副作用」の「重大な副作用」の項に「薬剤性過敏症症候群」を追記する。
PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「薬剤性過敏症症候群」の集積状況:国内症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は2例(うち死亡0例)。海外症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は2例(うち死亡0例)。
改訂理由:薬剤性過敏症症候群の症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤と薬剤性過敏症症候群との因果関係の否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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イピリムマブ(販売名:ヤーボイ点滴静注液、ブリストル マイヤーズ スクイブ)
改訂概要:「副作用」の「重大な副作用」の項に「脳炎」を追記する。
PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「脳炎関連症例」の集積状況:国内症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は1例(うち死亡0例)。海外症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は14例(うち死亡0例)。
改訂理由:脳炎関連症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤と脳炎との因果関係の否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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テトロホスミンテクネチウム(99mTc)(販売名:マイオビュー「注射用」、同注シリンジ、日本メジフィジックス)
改訂概要:「禁忌(次の患者には投与しないこと)」の項を新設し、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」を追記する。「副作用」の「重大な副作用」の項を新設し、「ショック、アナフィラキシー」を追記する。
PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「アナフィラキシー関連症例」の集積状況:国内症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は2例(うち死亡0例)。海外症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は8例(うち死亡0例)。
改訂理由:アナフィラキシー関連症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤とショック及びアナフィラキシーとの因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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コロナウイルス(SARSCoV-2)ワクチン(遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター):(販売名:バキスゼブリア筋注、アストラゼネカ)
改訂概要:「重要な基本的注意」の項に、本剤接種後に免疫性血小板減少症が報告されているため、必要に応じて血小板数の検査を行う旨を追記する。「特定の背景を有する者に関する注意」の「接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)」の項に、免疫性血小板減少症の既往歴のある者には血小板数のモニタリングを行うことが望ましい旨を追記する。「副反応」の「重大な副反応」の項に、「免疫性血小板減少症」を追記する。
PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「免疫性血小板減少症関連症例」の集積状況:国内症例は0例。海外症例(企業がCCDS改訂根拠とした症例)は578例(うち死亡11例)。
改訂理由:免疫性血小板減少症関連症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤と免疫性血小板減少症との因果関係の否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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アデノシン(販売名:アデノスキャン注、第一三共 等)
改訂概要:「副作用」の「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を追記する。
PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「アナフィラキシー関連症例」の集積状況:国内症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は4例(うち死亡0例)。海外症例のうち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は2例(うち死亡0例)。
改訂理由:アナフィラキシー関連症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤とアナフィラキシーとの因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。