日本新薬の中井亨代表取締役社長は11月13日、2023年度第2四半期決算会見で、通期業績予想を上方修正し、売上高が1470億円（前期比2.0％増）、営業利益が335億円（11.5％増）になる見通しだと発表した。肺動脈性肺高血圧症治療薬ウプトラビの海外売上に伴うロイヤリティ収入が想定を上回って推移しているため。修正予想は第6次5カ年中計（19-23年度）の最終年度目標値に対して売上高で30億円、営業利益で65億円とどかない水準だが、利益面の未達について中井社長は「費用を絞れば目標に近づけることは可能だが、何よりも開発を一刻も早く進めるため、必要な投資を惜しまずに行っている」と説明した。

◎米ジョンソン＆ジョンソンによるウプトラビ海外売上　28.4％増の185.80億円

上期業績は、売上高が前年同期比3.1%増の733億1400万円、営業利益が9.0％増の208億7800万円だった。医薬品事業の売上高は0.8%増の609億8800万円となった。米ジョンソン＆ジョンソンによるウプトラビの海外売上に伴うロイヤリティ収入を含む工業所有権等収益は28.4％増の185.80億円となり、期初予想を約14億円上回って着地。コロナ禍での受診抑制の影響が収まってきたことや円安が要因という。工業所有権等収益の通期予想は期初から30億円引き上げ380億円（前期比23.7％増）とした。

◎国内ウプトラビの売上高　31.4%増の64.65億円

16年 11月発売の国内ウプトラビの売上は31.4%増の64.65億円と大幅に伸長した。21年8月に肺動脈性肺高血圧症に追加して慢性血栓塞栓性肺高血圧症の承認を取得している。通期予想は140億円（32.8％増）から変更していない。デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬ビルテプソの売上は21.9%増の83.58億円となった。地域別に見ると、20年5月発売の国内では4.7％増の21.88億円、20年8月に承認され販売を開始した米国では29.5%増の61.69億円となった。通期予想は国内で48億円（16.0％増)を維持。また、米国では、23年6月にFDA承認を取得したサレプタ社の遺伝子治療薬との競合の影響が注目されるが、期初予想の135億円（32.3％増）を据え置いた。

◎通期業績予想　売上高は期初から20億円引上げ1470億円

通期業績予想は、売上高を期初から20億円引き上げ1470億円、営業利益を15億円引き上げ335億円とした。研究開発費については、15億円引き上げ295億円（22.2％増）とした。第6次5カ年中計（19-23年度）の最終年度目標値は売上高が1500億円、営業利益が400億円となっており、未達となる。その要因として、売上面では、コロナ禍の発売だった米国ビルテプソの立ち上がりの遅れや、日本での薬価中間年改定導入の影響を、利益面では研究開発費増を挙げた。

26年から27年にかけてウプトラビの特許切れを迎える予定であり、次期中計について中井社長は「ウプトラビのパテントクリフを乗り越え、さらに持続的に成長していく姿を描くような内容を考えている」と述べた。

【連結業績 （前期比）23年度予想（前期比）】
売上高　733億1400万円（3.1％増）1470億円（2.0％増）←修正前1450億円
営業利益　208億7800万円（9.0％増）335億円（11.5％増）←修正前320億円
税引前利益　211億4600万円（9.0％増）340億円（11.5％増）←修正前325億円
親会社所有者帰属純利益　161億7600万円（6.3％増）260億円（14.0％増）←修正前250億円

【国内主要製品売上高（前年同期実績）23年度予想、億円】
ビルテプソ　83.58（68.56）183
日本　21.88（20.90）48
米国　61.69（47.65）135
ウプトラビ　64.65（49.21）140
ビダーザ　55.26（91.39）102←修正前105
ガザイバ　24.39（26.18）49
トラマール・ワントラム　20.80（29.97）39←修正前43
シアリス　12.50（14.39）25
アドシルカ　11.90（13.92）21
ザルティア　11.61（14.70）22←修正前20
デファイテリオ　10.99（12.59）23←修正前30
エリザス　5.84（6.74）22←修正前25
共同販促収入　44.04（50.05）88←修正前93
工業所有権等収益　185.80（144.69）380←修正前350