中外製薬の奥田修社長CEOは12月20日、東京都内で開催したメディアとの役員懇談会で、24年度薬価制度改革について、「近年になく医薬品業界を後押しする内容になった」と評価した。制度改革がもたらす業績インパクトについては、「薬価でイノベーションがしっかり評価されたことは中外製薬のビジネスにとって良いこと」と表明。「我々の研究開発が加速する。10年後、20年後の患者さんに新たな医薬品を届けるという好循環が回る。我々はその社会の好循環の一部でありたいと思っている」と述べ、今回の薬価制度改革を前向きに受け止めた。

「ドラッグ・ラグ／ロスの解消に向けて、イノベーションの評価で多くの項目が盛り込まれた」－。奥田社長CEOはこう述べ、薬価制度改革で注目する３つのポイントを指摘した。1点目のポイントは、「迅速導入加算」の新設。奥田社長CEOは、「革新的な医薬品を患者さんに迅速に届ける観点から、薬価収載の段階で評価されることになった。今後は加算の要件に優先審査品目を含めいくつか設定があるので注視していきたいと思う」と語った。2点目のポイントは新薬創出等加算の見直し。「企業指標が撤廃されたことは大きな進歩だ。日本は新薬の薬価が維持される国だというグローバルに対するメッセージにもなる。これもドラッグ・ロス／ラグを解消するための大きな一助になるだろう」と見通した。

3点目のポイントに市場拡大再算定をあげた。今回の見直しでは、あらかじめ中医協で領域を特定し、当該領域については類似品としての再算定の適用を除外するというもの。24年度の四半期再算定から適用するとし、特定すべき領域は今後中医協で議論することになっている。奥田社長CEOはルールの見直しを歓迎しながら、「それを注視したい」と述べた。

奥田社長CEOは改革全体を見通しながら、「中外製薬は画期的な新薬を作り出して、開発し、日本および世界の患者さんに届ける。これが我々の製薬ビジネスの基本的な経営の考え方だ。薬価制度においてイノベーションがしっかり評価されているということは中外製薬のビジネスにとって良いことだ」と強調。一方で患者の立場からみると、「新しい新薬が届くということであり、要するにアクセス数が確保されるっていうことでもある」と述べ、「そういう意味でイノベーションがしっかり評価されたというのは、中外製薬にとってポジティブだし、社会や患者さんにとってもポジティブに好循環が回っていくと考えている」と受け止めた。

◎「中外ベンチャーファンド」（CVF）　技術ドリブン創薬に見合う３つの投資先を探す

このほか奥田社長CEOは24年1月から米・ボストンエリアで投資活動を開始する「中外ベンチャーファンド」（CVF）に触れ、同社の掲げる技術ドリブン創薬の戦略に見合う３つの投資先をあげた。１つ目は標的分子の効果的・効率的な探索技術。2つ目はモダリティ技術で中外製薬の技術と融合できそうなもの。3つ目はデジタルの技術で、同社の研究開発の生産性や効率性が飛躍的に向上するようなものを想定した。奥田社長CEOは、「完全に成熟して使える段階的でなくても早期なものに投資し、それが発達して開発が進むようなもの」を想定した。

◎日高上席執行役員・営業本部長　１月からの体制変更「大きく変わることはない」

この日の役員懇談会で日高伸二上席執行役員・営業本部長は、24年1月以降の営業体制に触れ、「営業本部長を高野淳一営業本部オンコロジーマーケティング部長にお願いすることになるが、体制として大きく変わることはない」と強調した。またＭＲを含む営業人材については、「これはパイプラインに寄るかなと思っている。今のところ見えているパイプラインはかなりスペシャリティで希少疾病中心の新薬が多ければ、当然顧客（医師等）の数は少ない。それに合わせるということがある」と述べた。一方で、「ロシュが今後どんなものを持ってくるか。中外製薬の中からどれぐらいの新薬が出て、それがどんな領域で競合性があるかにもよる。この先、（MR数を）必ず減らすとか、フラットにするとか、必ず増やすではなく、そういうものに合わせてマネジメントしていくことになる」との見解を披露した。