三師会が合同会見 24年度診療報酬改定 財務省による分断跳ねのけ従来上回るプラス改定を確保
公開日時 2023/12/21 04:51
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は12月20日、2024年度診療報酬本体の改定率が+0.88%で正式に決定したことを受けて合同記者会見に臨み、賃上げに配慮した改定がなされたと評価した。改定率決定までの間に、財務省の財政制度等審議会が医療界の分断を煽るような診療所を狙い撃ちの主張を繰り返したが、この間の医療関係団体の活動などを通じ、従来を上回るプラス改定を勝ち取った。日本医師会の松本吉郎会長は、「コロナ禍で、診療所が果たした役割について一定の評価がなされたものと理解している」と強調。リフィル処方箋の促進などが改定項目に含まれていないことに触れ、「これらは日医の主張を踏まえた結果だと理解している」と話した。
2024年度診療報酬改定は、賃上げや入院時の食費対応などで、1.13%まで積み上げ、医療費適正化の▲0.25%を差し引き、改定率0.88%で決着した。
◎日医・松本会長 医療界一丸となった“総力戦”で勝ち取った結果
「物価・賃金の動向、保険財政や国の財政など様々な主張や議論を踏まえた結果であり、必ずしも満足する結果ではないが、率直に評価をさせていただきたい」(日医・松本会長)、「厳しい経済状況下で十分とは言えないまでも、ある一定程度評価できると考えている」(日本歯科医師会・高橋英登会長)、「薬局従事者の賃金引き上げのためには必ずしも十分な財源とはならないが、主張してきた賃上げ対応の必要性についてご理解いただいた」(日本薬剤師会・山本信夫会長)と三師会の会長は、評価した。「今回の改定結果はお集りの三師会、四病院協議会、医療関係者を中心に42団体が参画する国民医療推進協議会など医療界が一丸となって対応した結果」と日医の松本会長が話すなど、医療界一丸となった“総力戦”で勝ち取った結果であることも強調した。
改定議論に際しては、財務省の財政制度等審議会が、診療所の経営が「極めて良好」として、初・再診料を中心に診療所の報酬単価を「5.5%程度引き下げるべき」と主張していた。松本会長は、「コロナ禍で診療所が果たした役割について、一定の評価がなされたものと理解している。また、財務省財政審が求めてきた、医療界分断を図るような病院と診療所での診療報酬を分ける対応やリフィル処方箋の促進、地域別診療報酬の導入等は含まれていない。これらは日医の主張を踏まえた結果だと理解している」と述べた。
医療費の効率化・適正化として、「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等」として、▲0.25%も盛り込まれた。松本会長は、「適正化の中身は決して診療所のみということではない。中医協を中心としたこれからの議論」と強調。特定疾患療養管理料などで議論が進められているが、診療所のみにかかわるものではないことも強調した。
賃上げについては、日本医師会の松本会長は、「基本診療料を中心とする診療報酬引き上げでの対応が望ましい」と改めて表明。22年10月に、処遇改善の点数として看護職員処遇改善評価料が新設された経緯があるが、「非常に難しい議論だった」と振り返った。そのうえで、「今回は対象が広く職種も多い。簡単な作業ではないと予測している。様々な議論を経て決定すると思うが、我々も議論に加わって考えて参りたい」と述べた。
◎長期収載品の選定療養導入 「国民への周知が重要」 現場の混乱防ぐ配慮も
このほか、長期収載品に選定療養が導入されることについて、日本医師会の松本会長は、「制度上の混乱は予想されるので、国において国民への周知が重要だ。また、薬が不足する中で混乱がおきないように努力し、そういった状況に配慮を重ねる必要がある」との見解を表明した。
日本歯科医師会の高橋会長は、「現場のことを理解してもらい、激変緩和措置をしていただかないと混乱を招くだけだと思っている。その点はしっかり要望していきたい」と述べた。
日本薬剤師会の山本会長は、「具体的に説明や手間、あるいは納得していただかないといけない状況を踏まえて、薬がない中で直ちに可能かという懸念はあろうかと思う。後発品を使うムーブメントはグローバルの論点でもあるので、なるべく混乱が起きないよう、国にはお願いしたいし、我々も混乱が生じないようにしたい。現場での混乱を防ぐための大きな負担を薬剤師は背負わされているという意味では、配慮が必要だ」と訴えた。