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長期収載品の選定療養 患者負担は後発品との価格差「4分の1」 24年10月施行 大臣折衝で決定

公開日時 2023/12/20 13:55
武見敬三厚労相と鈴木俊一財務相は12月20日午前、2024年度予算編成をめぐり大臣折衝を行い、長期収載品への選定療養の導入に際し、患者の追加負担を長期収載品と後発品の価格差の「4分の1」とすることに合意した。医療現場や国民への制度の周知や体制整備に一定の期間が必要であることから、2024年10月から施行する。対象は、「後発品の上市後5年以上経過したもの」または「後発品の置換率が50%以上」となった約700成分(23年度薬価調査ベース)で、後発品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とする。(写真提供:財務省)

文末の「関連ファイル」に24年度予算編成をめぐる厚労-財務大臣折衝事項の資料を掲載しました(12月20日は無料公開。その後はプレミア会員のみダウンロードできます)。

◎武見厚労相 患者負担を踏まえて「新薬にもアクセスできる最適な方法を幅広く考えることが必要」

「(選定療養による国民・患者への周知は)長期的に考えなければならない制度のあり方にかかわる大変重要な課題だと思う。実際に、医学・医療の進歩は非常にコストのかかるものだ。それによって、色々な新薬が開発されたとしても我が国で薬事承認さえされず、結果として、公的な医療保険では実際に活用できないものが、現実に確実に増えてきてしまっている。こういう中で、私共はやはり公的保険でできる限りカバーしようとしつつ、それぞれ国民の皆さん方が、実際にご自身で負担をしていただきながら、そして新しい医薬品についてもアクセスできるというやり方は、一体どういうやり方が好ましいのかということなどを幅広くこれから考えていくことが必要になってくる。今回の選定療養は、その中の一部であって、選定療養のあり方については全体をもう少しきちんと見直す必要性があるという認識を持ちながら、取り扱いを進めさせていただきたい」-。武見厚労相は、大臣折衝後の会見で、選定療養についてこう話した。

◎選定療養で24年度180億円、25年度420億円の医療削減見込む 対象約700成分

長期収載品に選定療養を導入することによる医療費削減効果は10月施行となる24年度は180億円、25年度420億円(医療費ベース)。選定療養が導入される対象品目は、「上市後5年以上・置換率50%以上(対象成分数:約450)」、「上市後5年以上・置換率50%未満(対象成分数:約200)」、「上市後5年未満・置換率50%以上(対象成分数:約60)」。

患者の追加負担をめぐっては、社会保障審議会医療保険部会や中医協で、「患者負担の変動に考慮すべき」との意見が出たことを踏まえ、最終的に患者負担の「4分の1」を患者負担とすることを決定した。

選定療養の導入により捻出された財源は医療費抑制ではなく、イノベーションの評価に活用する方針。

◎OTC類似薬の見直しなど「引き続き検討」

薬剤の保険給付をめぐり、議論の中で見直し項目としてあがった「薬剤定額一部負担」、「薬剤の種類に応じた自己負担の設定」、「市販品類似の医薬品の保険給付のあり方の見直し」について、「引き続き検討」を行うことにも合意。今後こうした項目についても継続して議論する方針。

◎診療報酬本体改定率は+0.88%、改定分は+0.46% 武見厚労相「適切な賃上げが最重要課題」

2024年度診療報酬改定の改定率は、+0.88%(国費800億円程度)。看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について24年度にベア+2.5%、25年度にベア2.0%を実施するための特例的な対応を「+0.61%」。入院時の食費基準額の引上げで「0.06%」確保した。入院時の食費基準額は患者負担が1食あたり30円の引上げが決定しているが、低所得者は所得区分に応じて10~20円の患者負担となっており、差額分を保険給付する。一方で、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等による効率化・適正化は▲0.25%。

これらを除いた改定分は「+0.46%」。医科(+0.52%)、歯科(+0.57%)、調剤(+0.16%)の配分は1:1.1:0.3を維持した。0.46%には、40歳未満の勤務医師、勤務歯科医師、薬局の管理薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分(0.28%程度)を含んでいる。

医療現場で働く人にとって、「24年度に2.5%、25年度に2.0%のベアアップへと確実につながるよう、配分方法の工夫を行う」ことも明記し、賃上げ重視が全面に打ち出された。

武見厚労相は、鈴木財務相との折衝に当たり、「総合経済対策の一環としても、公定価格で決められる分野で適切な賃上げをしっかり確保する。それを実現することが大きな課題だった」との認識を表明。「社会保障分野も含めて労働者の賃金引上げは、経済の好循環を生み出すドライビングフォースになるという自信がある。財源の確保を取りたいという想いでやった」と振り返った。最終的には岸田文雄首相が決定した経緯があるが、「政権が掲げる医療・介護・福祉分野における賃上げの必要性については、しっかりと議論を交わした」ことも明かした。「期待して、頑張ろうと思っていた改定率はもう少し高かった」と吐露しながらも、改定率には一定の評価を示し、「賃上げや処遇改善の仕組みにつながる仕組みについて具体的な議論を深めて参りたい」と述べた。

◎不採算品再算定の特例対応は約2000品目程度対象 薬価は▲0.97%

薬価は▲0.97%(国費▲1200億円程度)。材料価格は▲0.02%(国費▲20億円程度)で合計▲1.00%(国費▲1200億円程度)。なお、薬価は4月実施、本体は6月実施のため、影響額に違いがある。薬価については、新薬創出等加算による革新的新薬の薬価維持、有用性系評価の充実など、イノベーションの更なる評価に加え、不採算品再算定の特例対応が含まれている。不採算品再算定をめぐっては、急激な原材料費の高騰、後発品の安定供給確保への対応として、23年度改定と同様、臨時・特例的に製薬企業から希望のあった全品目に適用。対象は、約2000品目程度。ただし、全品目の平均乖離率である「7.0%」を超えた乖離率であった品 目は対象外とする。

◎調剤基本料の適正化も

このほか、診療報酬・薬価等に関する制度改革事項として、「調剤基本料等の適正化」も盛り込まれた。財政制度等審議会 財政制度等分科会の建議では、財務省の予算執行調査の結果から、調剤基本料1の適用範囲の見直しや、調剤基本料1の薬局を対象とした地域支援体制加算1・2の要件について、地域医療に貢献する薬局を重点的に支援する観点から抜本的に見直す必要性を指摘している。
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