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中医協 24年度改定焦点の“賃上げ” 初・再診料、入院基本料引上げめぐり対立 支払側「検証」求める

公開日時 2024/01/11 04:52
中医協総会は1月10日、2024年度診療報酬改定で焦点となっている医療機関の職員の賃上げについて議論した。特に、年末の大臣折衝で合意された40歳未満の勤務医や、薬局勤務薬剤師、事務職員などの賃上げ分として措置された改定率“0.28%”をめぐる議論が白熱。非常勤や派遣など勤務形態が多様であることから、厚労省は基本診療料への上乗せを提案。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「初・再診料や入院基本料を引き上げることが唯一の方法」と訴えた。一方で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「初・再診料や入院基本料に溶け込ませることは、一律的な基本料の底上げという極めて重大な案件」と反発。看護職員処遇改善評価料なども基本診療料に含まれていることを引き合いに、「何らかの条件をつけた加算、別途の評価を検討すべき」と主張。“効果検証”も重視される中で、初・再診料や入院基本料と切り分ける必要性を強調した。

◎看護職員、病院薬剤師などのベア 24年度改定の上乗せ措置では「2.3%」想定

2024年度改定をめぐっては、昨年末の大臣折衝で、「看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について24年度にベア+2.5%、25年度にベア2.0%を実施するための特例的な対応」について「+0.61%」措置することを決めた。また、「40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分」(+0.28%)とすることにも合意した。

厚労省は、"0.61%"措置したベアの実現に向けて、「医療機関等の過去の実績をベースにしつつ、報酬改定による上乗せ点数(加算措置)の活用、賃上げ税制の活用」を組み合わせることで、達成を目指していく方針を示した。医療機関の過去の実績から0.6%、賃上げ税制の活用で0.6%のベアを見込み、今回の改定による上乗せ措置活用で「2.3%」と設定した。

◎診療所 初・再診料への上乗せ、病院は入院基本料を150区分で検討

そのうえで、賃上げに向けたシミュレーションをめぐる、入院・外来医療等の調査・評価分科会での検討状況を報告した。シミュレーションは、医療経済実態調査、対象施設のレセプトデータ(NDBデータ)、介護事業経営実態調査の結果を用いて、“2.3%”のベア実現に必要な点数設定した。

診療所については、初・再診料への上乗せで、ベアが可能になるかシミュレーションを実施。在宅患者訪問診療料を算定していない診療所で賃上げに必要な点数は、初診料等で6点(中央値)、再診料等で2点(中央値)。賃金が十分に増えていない診療所の中で、在宅患者訪問診療料を一定以上(年間算定回数365回以上)算定している診療所では賃上げ実現に必要な点数は、在宅患者訪問診療料(同一建物居住者以外)で28点(中央値)、在宅患者訪問診療料(同一建物居住者)では7点(中央値)となった。透析や内視鏡など初・再診料による収益が大きくない施設では賃上げが十分とならない可能性も指摘された。

一方、病院については、初・再診料等、訪問診療料で必要とされた点数を加えても不足する点数について入院基本料に上乗せする形でシミュレーションを行った。入院基本料等を5区分に分けた場合ではバラつきが非常に大きいことから、賃上げに必要な点数を「1~150点」にわけ、病院ごとに点数を設定したシミュレーションを提示。点数を細分化することでバラつきが最小限に抑えられることが示された。

◎診療側・長島委員 診療所は「一律の評価を」 不足額補填の追加的な仕組みも要望

診療所の対応について、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、一律の点数引上げではバラつきが大きいことを認めたうえで、「診療所に対して看護職員処遇改善評価料のような精緻な対応を求めることは現実的ではない。外来や在宅については、患者さんの自己負担額にも大きな影響を与えることを考えれば、できるだけシンプルな制度設計することを基本軸とすべき」と主張。「診療所については、一律の評価とすることが、医療機関にとっても、また患者さんにとっても一番わかりやすい」と主張した。

また、「患者さんが少ない地域や診療特性から、相対的に初・再診料等の算定回数が少ない等の事情により、賃金増率が目標とされるプラス2.3%に届かない診療所については、各診療所が人員の状況も踏まえて、不足額の補填を申請できるような追加的な仕組みを作ることが不可欠」と述べた。

支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、受診者数に左右される可能性を指摘。「レセプトによる診療報酬の処遇改善分では、カバーできない場合もある。地域の医療体制確保ということであれば、基金や補助金での対応も検討すべき」との考えを示した。

一方、病院(入院)への対応については診療側の長島委員は、「5区分でも150区分でも医療機関としては自由に必要な点数を算出する手間に変わりはないということであれば、過不足のばらつきがより小さくなる150区分にするということも検討に値する」との見方を示した。診療側の太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)も、「点数を複数に分け、特に細かい区分けてより各病院に適切に補填がいくような形が望ましい」との見方を示した。

◎支払側・佐保委員 賃上げは「別建ての加算とすることが妥当」

支払側の佐保委員は、「医療機関等における職員の賃上げに向けては、医療従事者の手元に確実に行き届く仕組みとして、処遇改善分として別立ての加算とすることが妥当」と指摘。「シミュレーションをもとに、実態に即しつつも、可能な限りシンプルな方法を検討してはいかがか」と述べた。

◎勤務医などの賃上げ 診療側・長島委員「初・再診料や入院基本料引上げが唯一の方法」

24年度改定では、「40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分」(+0.28%)も措置された。これらの職種は非常勤や派遣など、様々な勤務形態のケースが含まれており、厚労省は、“広く算定されている”として基本診療料への上乗せを提案した。また、40歳未満の勤務医については、医療機関ごとにバラつきはあるものの、特定機能病院、急性期一般入院料を算定している医療機関では多い傾向があった。

診療側の長島委員は、40歳未満の勤務医について、「常勤で勤務する病院と非常勤で勤務する病院を組み合わせた勤務形態や専門性を追求するために医療機関を移動することも多い。一つの医療機関で継続して勤務することを想定した賃上げモデルが当てはまらない場合も多々ある」と指摘。事務職員も派遣や委託等の雇用形態があり、医療機関がベアアップを担保できないケースがあるとした。そのうえで、「賃上げに当たっては、初・再診料や入院基本料を引き上げることが唯一の方法だ。大臣折衝における決定事項の趣旨に鑑みても、この方法しかないと申し上げたい」と訴えた。配分方法については、「雇用している医療従事者の属性や構成に応じて、ある程度、各医療機関の裁量によって決定できるようにするのが現実的」との考えを示した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「薬局の薬剤師や事務職員の賃上げに向けた対応については調剤基本料で対応することが自然。調剤基本料は薬局の基本的な機能に関する維持運営コストとして評価されているもので、処方箋受付時に算定されている項目であり、各薬局の体制に応じた公平な取り扱いとなる」と訴えた。

◎支払側・松本委員「何らかの条件をつけた加算、別途の評価を検討すべき

一方、支払側の松本委員は、「初・再診料や入院基本料に溶け込ませることは、一律的な基本料の底上げという極めて重大な案件であり、医療経済実態調査で明らかになった病院と診療所の経営状況の格差、あるいは職員配置の違いを反映することが困難になる」と指摘。「そもそも患者が受けたサービスの対価として最も基礎的な部分のあり方について、データに基づいて十分に時間をかけて少し議論を尽くす必要がある」として、「基本診療料で対応するとしても、何らかの条件をつけた加算、別途の評価を検討すべき」と述べた。

◎支払側・松本委員「計画と実績の報告は不可欠」 40歳未満の勤務医等の検証で難しさも

厚労省は、診療報酬上の評価による賃上げへの効果を検証する必要性も強調。賃上げの計画と、翌年以降の実績報告を求めることも提案した。なお、看護職員処遇改善評価料は算定に当たり、「賃金改善計画書」と「実績報告書」の提出が求められている。

支払側の松本委員は、「丁寧な検証は不可欠」と強調。「どのような形で上乗せするとしても、(処遇改善についての)計画と実績の報告は不可欠」と述べた。

一方で、診療側の長島委員は、「最終的には賃上げに係る評価の効果が把握できればよい。それ以上の細かな報告を医療機関に求めるのは大きな負担となり、働き方改革にも反することになる。できるだけ簡素な仕組みとすることが重要」と強調した。

特に40歳未満の勤務医や事務職員などは、前年との給与比較が困難として、「賃上げに係る評価の収入と賃上げに係る支出の総額を把握できればそれで十分」と述べた。診療側の太田委員も、「ただでさえ、複雑な診療報酬体系により新たな加算を、階段の上に階段を積むような形は非常に好ましくなく、現場の対応がどんどん複雑になっていく」として、40歳未満の勤務医や事務職員などの賃上げは「基本的には入院基本料に上乗せという形での対応をお願いしたい」と述べた。

これに対し、支払側の松本委員は、基本診療料の中に初・再診料や入院基本料だけでなく、「特定入院料」や「短期滞在手術等基本料」、さらには「看護職員処遇改善評価料」が含まれていることを説明。「分けておかないと、いくら検証と言ってもそれはできないのではないか」と述べ、初・再診料の引上げでは検証は難しいことを指摘した。



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