中医協総会は１月31日、2024年度診療報酬改定の個別改定項目（短冊）について議論した。24年度改定では、長期収載品への選定療養導入をめぐり、患者に対する制度説明など必要な指導・情報提供を行った場合の評価として、服薬管理指導料の加算として、「特定薬剤管理指導加算３」が新設される。支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）は、「今回の提案は、説明を行えば後発に切り替えなくても算定できることになる。説明の結果、患者の選択がどのように変化したのか、しっかり検証することを前提に了承する」と述べた。松本委員は、後発医薬品調剤体制加算の見直しは見送られたことにも「非常に残念」と言及し、「次回改定では必ず議論をさせていただきたい」と釘を刺した。

◎選定療養対象となる先発品を選択する場合や供給不足時に算定可能

新設する「特定薬剤管理指導加算３」は、処方された医薬品について薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明、指導を行った場合に、患者１人につき、最初に処方された１回に限り算定できる。

「後発品が存在する先発品であって、一般名処方又は銘柄名処方された医薬品について、選定療養の対象となる先発品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合」のほか、「医薬品の供給の状況が安定していないため、調剤時に前回調剤された銘柄の必要な数量が確保できず、前回調剤された銘柄から別の銘柄の医薬品に変更して調剤された薬剤の交付が必要となる患者に対して説明を行った場合」など、「調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者に説明及び指導を行ったとき」に算定できる。また、医薬品の医薬品リスク管理計画（RMP）に基づき、製造販売業者が作成した医薬品についての安全管理等に関する資料を用いて特に必要な患者に説明・指導を行ったときにも算定が可能となる。

◎診療側・森委員「患者さんに理解、納得してもらうよう取り組む」　制度の複雑さ訴え

診療側の森昌平委員（日本薬剤師会副会長）は、1997年に薬剤一部負担が導入された際に医療現場が混乱したことを引き合いに、「今回の選定療養は仕組みが複雑であること、対象となるケースとならないケースがあること、また後発品との価格差や投与日数等により負担金が変わること、安定供給の影響などから現場の混乱、患者への説明は前回と比べ物にならないくらいだと考えている」と表明。「患者さんにきちんと説明し、理解、そして納得してもらうこと、また、これまでと異なったアプローチでさらなる後発品の使用促進に取り組んでいきたい」と述べた。
また、診療・支払各側から国に対し、選定療養について「責任を持った国民への周知」を求める声もあがった。

◎後発医薬品調剤体制加算　支払側・松本委員「次回改定では必ず議論させていただきたい」

後発品調剤体制加算の見直しが見送られたことにも議論が及んだ。支払側の松本委員は、「安定供給が困難な品目に配慮はしつつも、後発品が入手できる場合にはしっかりと後発品を使用することが重要だ。長期収載品に選定療養が導入されることを踏まえれば、後発品の使用割合の基準について、さらなる引き上げ引き上げることも必要だと考えている。次回改定では必ず議論をさせていただきたい」と述べた。また、「今回議論できなかったが、医療保険制度の持続可能性の観点から、医薬品等の保険給付のあり方が重要な課題だと認識している」と強調した。

◎診療側・森委員　後発品使用促進を「後退させないためのいわば防波堤」

一方、診療側の森委員は、先発・後発問わず依然として供給不安が続いているとして、「医薬品の在庫管理、手配、患者さんへの説明、医師への相談、入荷後のお届け等に追われて業務時間も延びており、現場ではギリギリの状態が続いている」と説明。「そのような厳しい状況にあっても、医療保険制度の持続可能性の観点から、供給問題によって後発品の積極的な使用が止まるようなことがあってはいけないと思う。加算の意義は、後発品を使用する体制を整えるためのインセンティブというだけではなく、このような状況にあってはこれまで築き上げてきた後発品の置き換え状況を後退させないための、いわば防波堤として現場では捉えている」との認識を示した。

調剤報酬においては、後発品の使用割合の要件が最低でも80%、一番高い加算で90%であることに触れ、「これ以上要件のハードルを単純に上げるということについては、正直なところ現実ではないと考える」と述べ、理解を求めた。