製薬協・上野会長 創薬力強化のポイントに公的資金活用のあり方 官民の協議会立ち上げも 構想会議
公開日時 2024/03/08 04:52
日本製薬工業協会の上野裕明会長(田辺三菱製薬代表取締役)は3月7日、内閣官房の「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」で、創薬力強化のポイントの一つに「実用化に向けた資金負担の分担と公的資金のあり方」をあげた。実用化に向けた支援のあり方について、「基礎・応用と実用化では管理支援体制を分けるべきではないか」と表明した。実用化に向けて構想会議では、公的資金の優先順位や官民の役割分担などを検討する「官民の協議会」の必要性を指摘する声もあがった。構想会議では、骨太方針へ反映を見据え、中間とりまとめに向けて議論を深める方針。
◎日本型エコシステム構築へ 強化ポイントに「実用化に向けた資金負担の分担と公的資金のあり方」
日本の創薬力の現状について製薬協の上野会長は、新規モダリティにおいて日本の相対的地位が顕著に低下していることなどに危機感を示した。現状では、日本各地のバイオ・創薬クラスターの“ヒト・モノ(情報)・カネ”が分散していることから、それぞれの要素を強化し、国内各地にある要素をつなぐ仕組みとすることで、「分散と集積を両立する日本型創薬エコシステム」を構築する必要性を強調した。これにより、海外の投資を含めてヒト・モノ・カネを呼び込む姿を描いた。
そのうえで、強化のポイントの一つとして、「実用化に向けた資金負担の分担と公的資金のあり方」に踏み込んだ。実用化研究の課題として、「基礎から実用化まで同様の事業管理設計で運用されている」、「予算が省庁に紐づき、事業が複雑。資金や支援体制が分散している」などの課題をあげた。
現状ではシーズの実用化に向けて、公的資金については基礎研究など幅広い支援を行い、早期段階をベンチャーキャピタル(VC)、実用化に向けて民間資金とフェーズが分かれている。
上野会長は、公的資金のあり方として、「基礎・応用事業」と「実用化を目指す事業」で管理体制をわけるべきとの見解を示した。リスクの高い基礎研究は、成果に縛られない自由な発想が必要であることから、多様な視点から幅広い支援を行う必要性を指摘し、これまでの支援体制の改善が必要との考えを示した。
一方、実用化研究については、産業界の目線も入れて選択と集中を徹底し、選択したものについては手厚く支援を行うために、既存の枠組みを「機能改革」を行うべきとした。具体的には、「実用化支援体制」、「プロジェクト管理」、「支援機能」の再整備の必要性を指摘。実用化支援体制としては、「実用化フェーズ事業の集約と実用化支援専門部門の設置」、「各省庁の目的を同じとする研究支援事業を、統合運用できる仕組み」などを提案した。
◎波及効果の大きい所に資金重点化、官民分担の役割分担議論を 「官民協議会」設置求める
国内からの投資が限定的な中で、日本に閉じたエコシステムではなく、実用化に向けて海外からの投資を呼び込む必要性を指摘する声が会議ではあがった。医薬品開発がグローバル化する中で、VCなどからの投資自体もグローバル化が進んでいる。こうした中で、グローバルでの実態を把握し、公的資金活用の優先度や支援方法などについて民間からの意見を聞く「官民の協議会」の必要性を指摘する声があがった。
構成員からは、「早期の研究開発から後期の医薬品の製品化につなげるために、官民分担が重要だ。役割分担を議論することが大事なのではないか」、「波及効果の大きい所に資金を集中するなど、対策を考えるべきではないか。我が国がどこに力を入れていくか、重点化という観点から考える必要があるのではないか」、「これまでのAMEDの取組みで成果も出ている。AMEDと企業との間でもっと早期段階から意見交換を行うなど交流を充実させる必要があるのではないか。資金を打ち切る“No go”の判断もあり得る仕組みを作る必要があるのではないか」などの意見が出た。海外のシーズを日本に呼び込むために、臨床開発段階の充実・強化の必要性を指摘する意見もあった。
◎村井内閣官房副長官「投資に魅力的な居総市場に誘導など様々な方策を講じる必要ある」
座長を務める村井英樹内閣官房副長官は、「我が国における創薬エコシステムの構築には、臨床試験の環境整備や人材確保をはじめ、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスを意識した対応、投資に魅力的な競争市場への誘導など、様々な方策を講じる必要があることを改めて感じた」と表明。次回会議で、中間とりまとめに向けて意見を集約する考えを示した。