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23年度国内医療用薬市場 最高額の11兆3707億円に 製品売上1位はキイトルーダ オプジーボに買控えか

公開日時 2024/05/22 04:51
IQVIAは5月21日、2023年度(23年4月~24年3月)の国内医療用医薬品市場が薬価ベースで前年度比3.7%増の11兆3707億円となり、過去最高額だったと発表した。抗腫瘍剤市場で高成長が続いたほか、糖尿病や慢性腎臓病(CKD)の治療薬、インフルエンザや新型コロナの治療薬の伸長なども国内市場の成長をけん引した。製品売上1位はキイトルーダで、3年ぶりに首位を奪還。これまで1位だったオプジーボは24年1~3月に4.2%の減収となったことが響き、2位に後退した。オプジーボは4月に市場拡大再算定の類似品として15%の薬価引下げを受けており、1~3月に買い控えが起こった可能性がある。

文末の「関連ファイル」に、23年度の市場規模や売上上位10製品の売上データに加え、売上上位製品の四半期ごとの売上推移をまとめた資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます。無料トライアルはこちら)。

IQVIAの市場データは、医薬品卸と医療機関との間で発生する売上データがソースとなっている。このため、同データには政府一括購入対象の新型コロナのワクチンや治療薬は含まれない。公定薬価がつき、通常の流通が開始された時点から同データに反映される。

◎病院市場4.6%増 開業医市場2.0%増 薬局その他市場3.3%増

23年度の国内の市場規模は、IQVIAの05年の市場データ発表以来の最高額で、23年暦年(23年1~12月)の売上11兆2806億円をも上回った。2度目の中間年改定となった23年度改定では、改定対象は「平均乖離率の0.625倍(乖離率4.375%)超」の約1万3400品目が該当。一方で、物価高騰やイノベーションへの配慮から、不採算品再算定や新薬創出等加算の加算額を上乗せする臨時・特例的な措置も講じられた。結果として市場自体は4%近く成長した。

市場別にみると、100床以上の病院市場は前年度比4.6%増の5兆3306億円(1億円未満切捨て)で、「抗腫瘍剤の伸長が大幅に加速」(IQVIA)したことが病院市場の伸びの主因となった。100床未満の開業医市場は2.0%増の2兆1149億円だった。前年度の新型コロナの大流行の反動でやや成長は鈍化したが、新型コロナやインフルエンザに対する抗ウイルス薬と糖尿病治療薬の伸長などで、プラス成長を果たした。主に調剤薬局で構成する「薬局その他」市場は3.3%増の3兆9252億円で、開業医市場と同じく抗ウイルス薬の大幅伸長が同市場をけん引した。

◎抗がん剤市場 9.8%成長 国内市場の17%占める 「次年度は2兆円超える」

上位10薬効をみると、1位は抗腫瘍剤市場で9.8%増の1兆9593億円となった。国内市場の17%を占める巨大市場を形成している。IQVIAは「今後も新薬を中心に力強い成長が期待でき、次年度は2兆円を超える見通し」だと分析している。

抗腫瘍剤市場の製品売上をみると、薬効内売上1位で全製品の中でも1位となったがん免疫療法薬・キイトルーダは22.5%増の1648億円とした。20年度以来3年ぶりの首位返り咲きとなる。非小細胞肺がんで処方を伸ばしつつ、22年9月に取得した▽進行又は再発の子宮頸がん、▽ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術前・術後薬物療法――の適応や、23年5月に取得した再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の適応が成長ドライバーとなったようだ。キイトルーダは23年度の四半期ごとの成長率をみても、第1四半期(23年4~6月)、第2四半期(7~9月)、第3四半期(10~12月)のいずれも前年同期比で20%強の増収とし、第4四半期(24年1~3月)は15.8%増だった。

薬効内売上2位で、全製品でも2位だったのは前年度1位のオプジーボで、3.5%増の1645億円だった。オプジーボは消化器系のがんを中心に処方が伸びているが、競合品キイトルーダと比べると成長率はいささか劣る。四半期ごとの成長率でも、第2四半期以降は1ケタ台前半の成長率で、第4四半期は4%強のマイナス成長となった。オプジーボは1月17日の中医協総会で、市場拡大再算定の類似品として4月に薬価を引き下げることが了承されており、市場で買い控えが起こった可能性がある。これもキイトルーダの後塵を拝した原因のひとつとみられる。

◎イミフィンジは116%の大幅増 胆道がんと肝細胞がんで成長加速

薬効内売上3位(全製品で5位)はがん免疫療法薬・イミフィンジで、116.0%の大幅増となる1207億円を売り上げた。IQVIAは22年12月の胆道がんと肝細胞がんの適応追加により成長が加速したと分析している。なお、イミフィンジは24年2月に市場拡大再算定により25%の薬価引下げを受けたが、それでも23年度第4四半期は64.5%の増収を果たした。23年度第1四半期~第3四半期まで前年同期比で2倍以上売上を伸ばし、弟3四半期は2.6倍となるほど急拡大している。

薬効内売上4位(全製品で7位)は抗がん剤・タグリッソで3.6%減の1071億円だった。23年6月に市場拡大再算定により10.5%の薬価引下げを受けた影響が大きかった。

一方で、これまで全製品の売上上位10製品の常連だった抗がん剤・アバスチンはバイオシミラーの影響で28.6%減となり、トップ10圏外となった。

◎糖尿病治療薬市場の成長加速、CKD適応で 免疫抑制剤市場はデュピクセントがけん引

売上上位3薬効は前年度と変わらず、1位は抗腫瘍剤、2位は糖尿病治療薬(7237億円、7.1%増)、3位は免疫抑制剤(6214億円、8.6%増)――だった。

糖尿病治療薬市場は、過去5年間は前年度比5%前後の成長だったが、今期は7%台と成長が加速した。フォシーガやジャディアンスのCKD適応のほか、経口GLP-1受容体作動薬・リベルサスが同市場の成長ドライバーとなった。薬効内売上1位(全製品で9位)のフォシーガは36.6%増の876億円、ジャディアンスは30.2%増(全製品の売上上位10製品のみ売上開示)、リベルサスは75.8%増とした。

免疫抑制剤市場では、薬効内売上1位(全製品で10位)のデュピクセントが38.9%増の866億円と力強く成長。IQVIAによると、デュピクセントはアトピー性皮膚炎の小児適応などで処方が伸びた。

◎全身性抗ウイルス剤市場は48.6%成長 ラゲブリオ、ゾコーバ、ゾフルーザの伸長で

売上上位10薬効のうち4位の全身性抗ウイルス剤のみ2ケタ成長し、前年度比48.6%増の5306億円を記録。薬効内売上1位(全製品で3位)の新型コロナ治療薬・ラゲブリオは116.4%増の1487億円となったほか、同ゾコーバや抗インフルエンザ薬・ゾフルーザも伸長した。また8位の喘息及びCOPD治療薬も8.8%増の2861億円とし、コロナ禍で停滞していた患者の受診再開を背景にプラス成長に転じた。

◎レニン-アンジオテンシン系作用薬 トップ10圏外に

一方、売上上位10薬効の常連だった、ARBなどで構成するレニン-アンジオテンシン(RA)系作用薬は10位圏外となった。後発品中心の市場ではあったが、前年度に888億円を売り上げたアジルバに23年6月に後発品が参入したことでRA系作用薬市場は一気に縮小した。

◎7製品で1000億円超え ラゲブリオ、イミフィンジ、フォシーガ、デュピクセントがトップ10入り

23年度の売上上位10製品をみると、1位はキイトルーダ(1648億8500万円、22.5%増、前年度2位)、2位はオプジーボ(1645億1700万円、3.5%増、1位)、3位はラゲブリオ(1487億1900万円、116.4%増、10位圏外)、4位は抗凝固薬・リクシアナ(1344億9800万円、11.9%増、3位)、5位はイミフィンジ(1207億3700万円、116.0%増、10位圏外)、6位は抗潰瘍薬・タケキャブ(1164億8800万円、4.9%増、5位)、7位はタグリッソ(1071億2200万円、3.6%減、4位)、8位は加齢黄斑変性症治療薬・アイリーア(893億1400万円、2.4%増、8位)、9位はフォシーガ(876億4700万円、36.6%増、10位圏外)、10位はデュピクセント(866億4700万円、38.9%増、10位圏外)――だった。

7製品で1000億円を超えたほか、ラゲブリオ、イミフィンジ、フォシーガ、デュピクセントの4製品が今回トップ10入りを果たした。

◎“販促会社ベース”の企業売上ランク 中外製薬とアストラゼネカが5000億円以上に

企業売上ランキングを見てみる。「販促会社ベース」(販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い製薬企業に売上を計上して集計したもの)では、5000億円以上の企業は中外製薬とアストラゼネカ(AZ)の2社となった。

中外製薬は3連連続の1位を達成した。売上は1.4%増の5398億円。アバスチンは2ケタ減収だが、テセントリクや血友病治療薬・ヘムライブラなどの新薬群が好調だった。AZは12.6%増の5131億円で、前年度の3位から順位を一つ上げた。イミフィンジやフォシーガが成長ドライバーで、タグリッソも減収ながら1000億円以上を売り上げた。

◎武田薬品は5位に後退 売上上位20社のうち唯一2ケタ減収

3位のMSDは30.2%増の4972億円。前年度6位からジャンプアップした。キイトルーダ、ラゲブリオ、シルガード9が貢献した。

一方、前年度2位の武田薬品は10.5%減の4445億円となり、5位に後退した。売上上位20社のうち2ケタ減収は武田薬品のみ。IQVIAは減収理由を明らかにしていないが、アジルバへの後発品参入が影響したとみられる。

売上上位20社のうち2ケタ成長を果たしたのはAZ、MSD、第一三共、サノフィ――の4社。4位の第一三共は12.3%増の4813億円で、リクシアナ、エンハーツ、イナビルが成長ドライバーとなった。15位のサノフィは14.9%増の2359億円とし、デュピクセントやサークリサなどが貢献した。

なお、「販売会社ベース」(卸店に対して製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ製薬企業に売上を計上して集計したもの)ではトップ3社は変わらず、1位は武田薬品で3.5%減の7140億円、2位は第一三共で9.3%増の6433億円、3位は中外製薬で1.4%増の5398億円――だった。
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