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HIMSS Wolf CEO  AI活用は「組織戦略と統合」 人材・業務改革に勝機も 日本「関心強いが」難しい市場

公開日時 2026/03/12 04:52
HIMSSのHal Wolf President兼CEOは3月10日(現地時間)、米ラスベガスで記者会見に臨み、AIに対するヘルスケア業界の期待が高まる一方で、医療現場で実際に成果を上げるには、人材、業務プロセス、運用体制の一体的見直をセットで行う必要性を強調した。会見では、病院経営の効率化、AIガバナンス、看護職の関与、政策環境について見解を語ったほか、日本・アジア、ラテンアメリカを含むHIMSSの国際展開にも言及した。特に、アジア太平洋地域は「重要市場」と位置付ける一方で、日本は「関心は強いが、まだ十分な接点を築けていない」と表明。ただ、今後の関係構築については前向きな姿勢を示した。(米国ラスベガス発 森永知美)

Wolf氏は会見の冒頭で、今回の「HIMSS 26」の参加者は約2万5000人、参加国は70カ国超に上ると報告し、中東や欧州情勢の影響で本来ならさらに増えていた可能性があると述べた。そのうえで、HIMSSはデジタルを通じた医療とケアの前進を使命とする国際的なソサエティーであると強調した。

◎AI導入の成否は、技術そのものよりも統合・運用・信頼構築にかかっている

AIが現時点で最も効果を発揮しているのは、供給網管理や病床利用、スタッフ配置など、病院運営の効率化の領域であり、すでに大規模医療機関では予測モデルを含む多様なアプリケーションが稼働しているとWolf氏は説明する。一方で、AIは万能薬でなく、医療システムが直面する人手不足やコスト増といった根本課題を全て解決するものではないとも明言した。単独ツール(パーソナルユース)ではなく、むしろ組織の戦略に統合し、人材や業務プロセスの再設計まで行うことが重要だと強調した。

Wolf氏はまた、AIのEHR(電子カルテ)への組み込みが進んでからまだ間もなく、今ようやく本格活用の段階に入ったと強調。臨床領域では「信頼」が大きな論点であり、現場がAIを使いこなすためには、ツールの性能だけでなく、どのように業務に落とし込むかが問われているとの見解を示した。

◎AIガバナンスの本質は、「従来の品質管理をAIにも厳格に適用すること」

AIガバナンスについては、従来の医療技術と同様に、品質部門などにより客観的な評価と適切なデータ確認を経るべきだとした。どこで開発されたのか、どのような価値を持つのか、適切なデータがあるのかを精査する必要があり、「bad data」、「bad information」は問題だと指摘した。さらに、ガバナンスは制度があるだけでは機能せず、「実践しなければ失敗する」と述べ、規則とガイドラインの違いを理解した上で、組織として守り切ることの重要性を訴えた。

◎看護現場の知見と組織改革がAI導入の成否を左右

さらにWolf氏は、デジタルヘルスやAIの導入において看護職の役割は極めて大きいとした。HIMSS会員のなかでも看護情報学は最大級の単一セグメントであり、患者に最も近い場所にいる看護師が、テクノロジーが実際に現場で機能しているかどうかを最も把握しているとの認識を示した。現場の看護師がIT部門に改善点を伝えることで初めてイノベーションが進むのであり、その接続がなければIT部門は孤立してしまうと述べた。

また医療機関の技術導入に関して、「New Technology + Old Organization = Costly Old Organization」という持論を紹介。新しい技術を導入しても、業務設計や人員配置、意思決定の仕組みが旧来のままであれば、得られるのは高コスト化した古い組織に過ぎないという意味である。多くの導入失敗はソフトウェアの問題ではなく、人や業務の変革不足に起因するとし、医療機関が何を達成したいのかを明確にしたうえで導入すべきだと述べた。一方、米国の政策環境について、医療アクセスから多くの人々が排除されるリスクと、地方医療の弱体化を強く懸念していると述べた。特に地方では病院閉鎖と人材不足が進み、こうした地域ではデジタル接続や5Gなどの基盤整備が不可欠になると強調した。

◎アジア太平洋地域はHIMSSの重要地域 各国政府との連績は厚い

HIMSSの長期戦略におけるアジア太平洋地域の位置付けについて聞いた。Wolf氏は、「非常に活発に活動している」と応じた。韓国、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなど複数の政府と包括的な覚書を結び、台湾でも大きなプレゼンスを有すると説明した。Wolf氏によると、各国はHIMSSの成熟度モデルが国際標準として認知されており、政府のデジタルヘルス投資が公的病院でどう活用されているかを測る評価指標として使われているという。アジア以外でも、イタリアの公的病院全体、ドイツやルーマニアの病院群などで評価を実施してきたとし、HIMSSが各国の医療DXの進捗を測定し支援する役割を担っていると位置付けた。

◎日本は「参入・貢献の糸口を見つけられない難しい市場」、今後の関係構築に期待

日本政府が進める2030年に向けた医療DXに対し、HIMSSがより強いプレゼンスを築く機会はあるかとの質問に対しては、「日本は以前から難しい市場だ」と率直に語り、その理由として、必ずしも十分にオープンではない面があることを示唆した。一方で、日本の取り組み自体は十分認識しており、これまでもたびたび意見を求められたことがあると説明。どのように貢献するか適切な糸口をまだ見いだせていないとした。ただ、HIMSSとしては国際標準を担う立場から、いつでも支援に入るための接点を得たいと考えていると語り、制度面・市場慣行・関係構築の面で参入の足場がまだ弱いものの、日本市場の重要性は認識されており、関与意欲自体は強いことがうかがえた。

さらに、ラテンアメリカ、特にブラジルやアルゼンチンを足場に地域展開を強めたい意向なども語った。
 
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