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レキサルティのADに伴うアジテーションの効能追加など新薬11製品を審議へ 8月26日の第一部会で

公開日時 2024/08/19 04:48
厚生労働省は8月26日に薬事審議会・医薬品第一部会を開き、大塚製薬のレキサルティ錠・OD錠(一般名:ブレクスピプラゾール)にアルツハイマー型認知症(AD)に伴うアジテーションの効能を追加することなど新薬11製品の承認の可否を審議する。日本でADに伴うアジテーションを効能・効果とする薬剤はなく、今回承認された場合、レキサルティが本適応を持つ初の治療薬となる。このほかの審議品目にはエーザイの筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制薬・ロゼバラミン筋注用(メコバラミン)も含まれる。

報告品目は4製品。この中に中外製薬の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬・エブリスディドライシロップ(リスジプラム)を未発症の段階から使用可能とする適応拡大と、生後2カ月未満の用法追加がある。

【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

ビルタサ懸濁用散分包8.4g(パチロマーソルビテクスカルシウム、ゼリア新薬):「高カリウム血症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

ナトリウムを含まない陽イオン結合非吸着性ポリマー。経口で服用すると腸管内で過剰なカリウムを結合して便とともに排泄され、高カリウム血症を改善する。1日1回の服用で、必要な水の量が少なくて済むことが特長。

ルプキネスカプセル7.9mg(ボクロスポリン、大塚製薬):「ループス腎炎」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

経口免疫抑制薬。T細胞の増殖・活性化に重要な酵素であるカルシニューリンを阻害することで免疫抑制作用およびポドサイト(糸球体上皮細胞)の保護効果を発揮する。

ループス腎炎に対し副腎皮質ステロイドが標準治療で、ミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤を併用する場合がある。タンパク尿を伴う糸球体腎炎の速やかな寛解達成と、その後の副腎皮質ステロイドの減量が課題となっている。

ループス腎炎は、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)によって引き起こされる高度なタンパク尿を伴う糸球体腎炎で、SLEの最も深刻な合併症のひとつとされる。比較的若年に発症することで、SLE患者におけるループス腎炎の合併は生命予後の悪化につながる末期腎不全へのリスクを高めていると考えられている。

献血ヴェノグロブリンIH10%静注0.5g/5mL、同2.5g/25mL、同5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン、日本血液製剤機構):「下記の臓器移植における抗体関連型拒絶反応の治療:腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

テッペーザ点滴静注用500mg(テプロツムマブ(遺伝子組換え)、アムジェン):「活動性甲状腺眼症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。

インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)阻害薬。甲状腺眼症(TED)は希少な自己免疫疾患で、その多くはバセドウ病に伴ってみられるが、後眼窩の細胞でIGF-1Rを介したシグナル複合体を活性化する自己抗体によって引き起こされる個別の疾患。これらが一連の症状につながり、失明など長期にわたる不可逆な損傷を引き起こす可能性がある。TEDの初期症状には、ドライアイ、異物感、充血、瞼の腫れ、過度の涙、眼瞼後退、眼球突出、目の奥の圧迫感や眼痛、複視などがある。

アムジェンの発表資料によると、国内のTEDの発症率は人口10万人あたり7.3人(男性3.6人、女性13.0人)、患者数は約3万5000人と推定されている。

アリッサ配合錠(エステトロール水和物/ドロスピレノン、富士製薬):「月経困難症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤。

天然型エストロゲンのエステトロール(E4)を新規成分として含有する。エステトロールは、エストロゲンの受容体に選択的に作用することが確認されている。

エムスリーと共同開発したもので、承認取得後は富士製薬のMRによる情報収集・提供活動に加え、エムスリーが提供する「MR君」やWeb講演会などのe-プロモーションサービスによる営業支援、m3.com医師会員のインサイトやビッグデータを活用したマーケティング支援を行う。

ユバンシ配合錠(マシテンタン/タダラフィル、ヤンセンファーマ):「肺動脈性肺高血圧症」を対象疾患とする新医療用配合剤。

エンドセリン受容体拮抗薬・マシテンタン10mgとホスホジエステラーゼ5阻害薬・タダラフィル40mgとの固定用量配合剤。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療では、症状をコントロールするため、作用機序の異なる複数の治療薬を併用することがある。今回2つの治療薬を配合剤とすることで、PAH患者に新たな治療選択肢を提供するだけでなく、服薬の負担軽減という患者ニーズにも応える。

トレプロスト吸入液1.74mg(トレプロスチニル、持田製薬):「間質性肺疾患に伴う肺高血圧症」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

プロスタグランジンI2誘導体製剤。トレプロストは注射液と吸入液があるが、利便性の高い吸入液は22年12月に肺動脈性肺高血圧症の適応で承認された。間質性肺疾患に伴う肺高血圧症が承認されれば2つ目の適応となる。

レキサルティ錠1mg、同2mg、同OD錠0.5mg、同OD錠1mg、同OD錠2mg(ブレクスピプラゾール、大塚製薬):「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。

抗精神病薬。対象疾患は「アルツハイマー型認知症(AD)に伴うアジテーション」のこと。現在、日本ではADに伴うアジテーションを効能・効果に持つ薬剤はなく、承認された場合、レキサルティは本適応を有する初の治療薬となる。米国では23年5月に米国初の適応として承認された。

ADに伴うアジテーションは、攻撃的な症状と非攻撃的な症状を含み、国際老年精神医学会において、徘徊や同じ動作の反復などの活動亢進、攻撃的発言または攻撃的行動のうち少なくとも1つ以上の症状からなり、患者の日常生活、社会生活、人間関係のいずれかに支障を来した状態と定義されている。これらの症状は、アルツハイマー型認知症患者の約半数で認められ、介護者の負担を重くし、患者自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者が家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因の一つとなっている。

クービビック錠25mg、同錠50mg(ダリドレキサント塩酸塩、ネクセラファーマジャパン):「不眠症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)。覚醒を促す神経ペプチド(オレキシン)の受容体(OX1R及びOX2R)への結合を選択的に阻害し、過剰な覚醒状態を抑制し睡眠状態へと移行させることで効果の発揮が期待できる。

ネクセラファーマジャパン(旧イドルシア ファーマシューティカルズ ジャパン)と持田製薬が共同開発した。承認取得後は両社で共同販売し、さらに持田製薬は塩野義製薬と共同で展開する。

ファダプス錠10mg(アミファンプリジンリン酸塩、ダイドーファーマ):「ランバート・イートン筋無力症候群の筋力低下の改善」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。

経口のK+(カリウムイオン)チャネル阻害薬。神経筋接合部の前シナプス膜にある膜電位依存性 K+チャネルを阻害することで、細胞膜の脱分極を引き起こし、膜電位依存性 Ca2+(カルシウムイオン)チャネルを開口させる。そして、細胞内へのCa2+の流入を促進することにより、アセチルコリンを含むシナプス小胞のエキソサイトーシスを誘発し、シナプス末端からシナプス間隙へのアセチルコリンの放出を促進、神経-筋伝達を向上させることで筋肉の機能を改善すると考えられている。

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)は自己免疫性・神経筋接合部疾患で、神経終末からのアセチルコリン放出量減少により近位筋の筋力低下、自律神経症状などの症状を呈する。悪性腫瘍に合併、あるいは腫瘍の発症に先行する傍腫瘍性神経症候群のひとつ。

ダイドーファーマは缶コーヒーなどを手掛けるダイドーグループホールディングスの100%子会社で、希少疾病用医薬品に着目した事業を展開している。

ロゼバラミン筋注用25mg(メコバラミン、エーザイ):「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」を対象疾患とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。

メコバラミンの高用量製剤。メコバラミンのALSの病態における作用機序は解明されていないが、非臨床研究の結果から、神経保護作用、神経軸索再生作用により有効性を示す可能性が示唆されている。

承認申請は、徳島大学の梶龍兒特命教授(主任研究者)、徳島大学大学院の和泉唯信教授(治験調整医師)、千葉大学大学院の桑原聡教授(治験調整医師)らの研究チームが医師主導治験として実施した、発症早期のALS患者に対する高用量メコバラミンの有効性の検証と安全性の確認を目的とする、高用量メチルコバラミン(メコバラミン)のALSに対する第3相試験(JETALS)の結果に基づく。

エーザイは15年5月にALSを対象疾患に高用量メコバラミンの新薬承認申請を行ったが、追加試験が必要との判断により、16年3月に申請を取り下げた。その後、JETALSで良好な臨床試験結果が得られたことを受け、エーザイが承認申請した。

なお、メコバラミンは現在、製品名「メチコバール」として、末梢性神経障害などの適応で発売されている。

【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

イノソリッド配合経腸用半固形剤(-、イーエヌ大塚製薬):「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用すること」を対象疾患とする類似処方医療用配合剤。

リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「難治性のネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性を示す場合)」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

抗CD20モノクローナル抗体。リツキサンは現在、難治性のネフローゼ症候群に対し、「頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合」で承認されている。今回、「ステロイド抵抗性を示す場合」にも使えるようにする。

エブリスディドライシロップ60mg(リスジプラム、中外製薬):「脊髄性筋萎縮症」を対象疾患に小児用量を追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

中枢神経系及び全身のSMNタンパクレベルを増加させるように創製されたSMN2スプライシング修飾薬。運動神経及び筋肉機能をよりよくサポートするため、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパクの産生を増加するように設計されている。

現在の効能・効果は「脊髄性筋萎縮症(遺伝子検査により発症が予測されるものを除く)」で、臨床症状発現前は使えない。今回、「遺伝子検査により発症が予測されるものを除く」を削除して効能・効果を「脊髄性筋萎縮症」とし、脊髄性筋萎縮症(SMA)の未発症の段階から治療を開始できるようにする。なお、SMA未発症の適応を持つ薬剤にはスピンラザ髄注やゾルゲンスマ点滴静注がある。経口投与はエブリスディのみとなる。

エブリスディは現在、生後2カ月以上の患者を適応としているが、今回、生後2カ月未満の患者の用法・用量も追加する。

▽①ジャカビ錠5mg、②同錠10mg、③同内用液小児用0.5%(ルキソリチニブリン酸、ノバルティス ファーマ):「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を対象疾患に小児用量を追加する、①②は新効能・新用量医薬品、③は新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。

JAK阻害薬。造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)に対し、ジャカビ錠5mg、10mgは現在、成人及び12歳以上を適応としている。今回12歳未満の用法・用量を追加する。また服用しやすいように内用液を追加する。
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