【中医協薬価専門部会 9月25日 議事要旨 令和7年度薬価改定について 質疑】
公開日時 2024/09/26 05:59
中医協薬価専門部会が9月25日に開かれ、前回8月7日に製薬関係団体から意見聴取した内容を踏まえ、令和7年度薬価改定について議論した。本誌は、診療・支払各側委員の質疑について発言内容を議事要旨として公開する。
(事務局説明 略)
安川部会長:ありがとうございました。それではただいまの説明につきましてご質問、ご意見等ございましたらお願いします。では長島委員お願いいたします。
長島委員:ありがとうございます。資料「薬-1」(令和7年度薬価改定について①)の24ページの論点に沿ってコメントします。
薬価上の措置がイノベーションの推進等に実際にどのような効果があるのかが最も重要です。8月7日に開催された業界ヒアリングでは、企業・業界から今回の薬価制度改革についてポジティブな受け止めはしているが、薬価改定1回だけの変更では、意識変容は少しはするけれども行動変容には至らない。数年間、あるいは将来ずっとポジティブなものが続くと確信できない限り行動変容には至らない、という趣旨の意見がありました。
私からは、今回の改定における薬価上の対応がどのような効果をもたらしたのか、少なくとも業界・企業の内部で、具体的に、これまで何をして、今後何をするのか、ということをもっと明らかにしていただかないと議論が進まないと指摘しました。
このような企業・業界の意見では、残念ながら貴重な医療財源を投入して、薬価で評価しても効果が期待できないと判断せざるを得ません。
薬価で評価されたら、国内のドラッグロス対策に取り組むというのではなく、日本の患者さんのために有用な医薬品をいち早く届けるために精一杯頑張るという意識で取り組んでいただき、そのために必要なことを中医協で検討していくというのが、公的医療保険における本来のあるべき姿ではないでしょうか?
その上で、業界から具体的で前向きな取り組みをしっかりと示していただきたいと考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。論点についてコメントさせていただきます。令和6年度薬価制度改革において、関係業界の意見がしっかりと反映され、ドラッグラグ/ロス解消の観点からイノベーションの評価が強く推進されたものというふうに考えております。まだ薬価改定から半年ほどしか経過していないので関係業界の今後の動向に注目しているところですけれども、関係業界は、まずは意識の変容をするということが非常に重要だというふうに思っております。
いま長島委員からありましたけれども、しっかりと取り組んでいるというプロセスの変容を見えるようにしていただきたい。最終的には革新的新薬の開発に結びつくような行動で示していただきたいと思っております。
これらにつきましては継続して報告をお願いしたい。また論点に示されているイノベーションの推進や国民皆保険の持続可能等については、バランスが重要で、国民皆保険の持続性、イノベーション推進を両立させ、国民が恩恵を受ける国民負担の軽減とともに、医療の質向上を実現する観点が重要というふうに考えます。
令和6年度薬価制度改革が良かったものと関係者が納得できるような行動や成果を期待いたしております。
最後に一つ確認になります。資料「薬―1」の16ページ(2024年度薬価制度改革に対する評価・製薬業界提出資料)を開いていただければと思います。2024年度薬価制度改革に対する企業の受け止め(評価)などが示されています。「Q4」の2024年度薬価制度改革に対する全般的な印象ということで、「どちらとも言えない」、「支持できない」というものが挙げられております。
「Q5」の2024年度薬価制度改革による新薬開発への影響では、「特になし」が2社ありますが、なぜこういう回答になっているのかということを業界でお調べになっているのであれば教えていただきたい。私から以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。他にいかがですか。では松本委員お願いします。
松本委員:ありがとうございます。それでは資料「薬―1」24ページの論点についてコメントいたします。まずイノベーションの評価についてです。資料7ページ(補正加算の適用状況(R5年度収載品目とR6年度収載品目の比較))を拝見しますと、先ほど説明もございましたが、令和5年度は新薬36成分のうち25成分、約7割に補正加算がついております。また令和6年度は、まだ途中段階でございますけども、新薬40成分のうち34成分ということで全体の85%程度に補正加算がついており、特に傾向としては加算率の高いものが増えているというのが読み取れます。
また資料の8ページ(有用性系加算の適用状況)から10ページ(小児用の医薬品に関する加算の実績)を見ますと、有用性系加算、市場性加算、小児加算のいずれも収載時の加算がしっかり適用されているということがわかります。また資料11ページ(迅速導入加算の適用品目)にあります通り、早くも2製品に迅速導入加算が適用されております。
改定時の評価につきましては資料13ページ(新薬創出等加算の状況・年次推移)の下段の企業数を見てみますと、新薬創出等加算の企業要件を撤廃したことで加算の恩恵を受けた企業は過去最多に上っております。
また資料15ページ(革新的新薬の有用性評価等の充実)をみますと、改定時の補正加算についても評価を充実した影響がはっきりと表れております。
こうした変化は令和6年度薬価制度改革によって、特に具体的に申し上げますと資料27ページ(令和6年度薬価制度改革・新薬の薬価収載時における評価)にあります「薬価制度改革の骨子」の②で加算率を柔軟に判断するということから、高い薬価がつきやすくなったことを示すデータであり、我々健保連といたしましてはイノベーションが十分評価されている、あるいはその枠組みはしっかりできているというふうに考えております。
その結果、企業によるイノベーションを達成されたかどうかについては、先ほど長島委員からもありましたけれども、まだはっきりいたしませんが資料16ページを見る限りでは、多くの企業がポジティブには受けとめており、今後企業の開発意欲がより高まり、実際に企業行動が変わっていけば加算の対象品目や加算率がさらに増加し、保険財政への影響が大きくなるということが想定されます。
また資料22ページ(市場拡大再算定)に記載の通り、市場拡大再算定における類似品から除外する領域も、まだ限定的ではございますが、明確化し、予見性もいくばくかは高まったものというふうに考えます。
以上のことから令和7年度の薬価改定におきましては、国民皆保険制度の持続可能性とのバランスをより強く意識すべきであり、健保連としましては、市場実勢価格に基づく改定にとどまらず、薬価改定ルール全般について検討する必要があると考えております。
特に新薬創出等加算の累積額については、イノベーションの評価が既に充実されたことを踏まえますと、最低限、令和7年度に控除し、保険財政に還元していただきたいということは改めて主張させていただきたいと思います。私からは以上でございます。
安川部会長:ありがとうございました。鳥潟委員の手が挙がっております。鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。新薬の評価についてですが、令和6年度薬価改定においてイノベーションの評価を行った制度見直しの結果、加算実績が増えていることがわかります。一方その効果として新薬開発、ドラッグラグ/ロス解消に向けて企業の向上にどのような影響をもたらしているかについては、今後引き続き検証していかなければならないと受け止めております。
そうした中、イノベーションの推進と国民皆保険の持続可能性の考慮につきましては、ドラッグラグ/ロスをより良い医療のため、一刻も早い解消を願うものの、薬価のみで対応する問題ではなく、一方、健全な医療保険財政は国民皆保険の中、そうしたより良い医療を受けるための前提となるものであり、国民負担の抑制も国民の立場に立つと非常に重要な問題であると考えています。
そのためにメリハリのついた対応が必要になると思います。以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。佐保委員お願いします。
佐保委員:ありがとうございます。資料を見る限り、令和6年度薬価制度改革の効果が出ているのではないかと考えております。なお、以前から申し上げておりますが、そもそも薬価改定そのもののあり方についての議論は、政治的な動向がわからない中で、大臣合意事項になると思われますが必要と考えております。私から以上です。
安川部会長:では続いて奥田委員お願いいたします。
奥田委員:説明どうもありがとうございました。資料7ページから11ページの状況であるとか、16ページ、17ページにある業界の反応を見ると令和6年度薬価制度改革はイノベーションに対する適切な評価の推進の方向性に寄与しているものと受けとめております。
同時に医薬品開発は非常に長期の展望に立って行われるものです。ご存知の通り10年から15年の開発期間がかかります。ですから製薬企業もアンメットメディカルニーズに基づいて開発を進めているわけですけれども、今年開発要請したから来年出てきますか、そういうものではありません。国民皆保険の持続性とのバランスも考慮しながら、今後もイノベーションの推進に対する適切な評価並びに環境整備について考慮していく必要があると思います。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。では長島委員お願いします。
長島委員:再度申し上げます。薬価上の対応がどのような効果をもたらしたのかは少なくとも、業界企業の内部ではっきりわかるわけですから、具体的に、これまで何をして、今後何をするのか、ということをもっと具体的に明らかにしない限り、これ議論は進まないということを再度強調させていただきます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。先ほど長島委員。森委員からもございましたが、企業変容の見える化、あるいは具体的な企業内の行動変容のあり方をもっと明確にして頂きたいというコメントもございました。また、アンケートのところで「どちらとも言えない」、「特に影響なし」という回答については、どういう経緯か、もし専門委員の方でお答えいただけるところがございましたらお願いできますでしょうか?
それでは石牟禮専門委員お願いいたします。
石牟禮専門委員:専門委員の石牟禮でございます。よろしくお願いします。森委員からのご質問は16ページに関するものです。調査を実施した団体より追加の聞き取りを行ったという旨の報告をご紹介させていただきたいと思います。
まず資料「薬―1」16ページ「Q4. 2024年度薬価制度改革に対する全般的な印象」で、「あまり支持できない」、「どちらとも言えない」と回答された企業ですけれども、他の設問を見ますと、小児用医薬品の評価の充実ですとか、迅速導入加算など個別の改革項目につきまして、前向きに受け止めており、今後の開発にもポジティブな影響が期待できると回答をしているということでございます。
一方で、今回の改定において市場拡大再算定が適用された製品があり、経営に大きな影響が生じたことが、回答の選択に影響を与えたということでございました。また右側「Q5 2024年度薬価制度改革による新薬開発への影響」で「特に影響なし」と回答した企業でございますが、こちらは以前から日本国内での開発承認を最優先に行う方針とされており、今後もこの方針に変更はないということでございます。
そのため新薬の開発が、薬価制度の動向による影響を受けないという意味で、今回の薬価改定による新薬開発の影響は「特にない」と回答したとのことでございました。
いずれにつきましても今回の制度改革に関して必ずしも否定的な受け止めをしているということではないということを、委員の皆様方にはご理解を賜りたく、説明をさせていただきました。
また資料17ページ(2024年度薬価制度改革による開発計画の変更)に具体的な開発計画の変更について例示をしていただいたところでございましたが、これについてまだ具体性に欠けるというご指摘を多々いただいていることを多々頂いていることを承知しております。もし業界からの意見陳述の機会がもしございましたら、改めてこの辺りの構造につきましては取りまとめて、ご報告できるように準備をさせていただければ幸いでございます。以上でございます。
安川部会長:ありがとうございました。森委員、長島委員いかがでしょうか?では森委員お願いします。
森委員:はい、ありがとうございます。ご回答ありがとうございます。「Q4」の方は2024年度薬価制度改革に対する全般的な印象というより、自社の製品が市場拡大させる対象になってしまったことでネガティブな回答をしてしまったという形になるでしょうか。
石牟禮専門委員:はい、そのような回答された会社があったということでございます。
安川部会長:長島委員お願いします。
長島委員:はい。もしヒアリングの機会があれば、最後の方に申しましたけれども、そもそもの根本の意識として、薬価で評価されない限り国内のラグ/ロス対策に取り込まないというような意識を変革していただかなきゃいけません。そこのところで、どのように意識が変革されているのかぜひお聞かせいただきたいと思います。
安川部会長:事務局からは特に追加はございませんか。他にいかがでしょうか?よろしいでしょうか?他にご質問ご意見等をないようでしたら、本件に係る質疑はひとまずこのあたりといたします。今後事務局におきまして、本日いただきましたご意見等、ヒアリング等も含めご対応いただきますようお願いをいたします。
本日の議題は以上です。次回の日程につきましては追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。それでは本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。