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中医協 後発品の企業指標に「少量多品目構造の見直し」の観点追加を提案 産業構造改革促す

公開日時 2024/11/07 06:01
厚労省は11月6日、中医協薬価専門部会に、後発品の企業指標の評価指標に、「少量多品目構造の見直し」に向けて薬価上の観点で対応できることを加えることを提案した。安定供給に向けて再編も含めた産業構造改革を薬価上でも後押しする姿勢を示した。少量多品目構造が長引く供給不安の一因と指摘される中で、安定供給を実現する産業構造へと転換するためには、品目数を適正化することが重要になる。厚労省も安定供給に向けて、「1成分5社」が理想とするなど方向性を示している。この日の中医協では、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が「(少量多品目構造の見直しは)産業構造改革は重要な視点であり、薬価の評価指標に加えることもあり得る」と述べるなど、今後の議論に前向きな声が診療・支払各側からあがった。

◎骨太方針に「後発医薬品の理想的な姿見据えた構造改革促進」 総合商社型と領域特化型へ

供給不安が長引く中で、業界再編を含む産業構造改革は待ったなしの状況と言える。政府は今年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)で、「後発医薬品業界の理想的な姿を見据え、業界再編も視野に入れた構造改革を促進」することを明記。厚労省が今年8月に公表した「近未来健康活躍社会戦略」では、“後発医薬品産業界の理想的な姿”として、数量シェアや品目の多い企業は「総合商社型の企業」に、特定の領域で強みを発揮する企業は「領域特化型の企業」としての姿を明記した。「成分ごとの過当競争を適正化し安定供給を確保する観点から、成分ごとの適正な供給社数は、理想的には5社程度」であることも示した。

再編・統合に向けて適切な品目の削除によるシェア拡大も必要とされる中で、供給停止・薬価削除プロセスの簡素化することも方向性として示されている状況にある。厚労省保険局医療課は、こうした動きを踏まえて、少量多品目構造の見直しについて薬価上の観点から対応すべき点を後発品の企業指標の評価指標に追加することを提案した。

診療・支払各側からは、「産業構造改革を進めていくという視点で、安定確保会議の取りまとめを踏まえて、評価指標に加えていくことは必要な対応」(診療側・森昌平委員・日本薬剤師会副会長)、「(少量多品目構造の見直しは)産業構造改革は重要な視点であり、薬価の評価指標に加えることもあり得る」(支払側・松本真人委員・健康保険組合連合会理事)、「品目数の適正化につながる指標の追加についても、具体的な指標内容次第ではあるものの、前向きに検討していっていただきたい」(支払側・鳥潟美夏子委員・全国健康保険協会理事)と述べるなど、議論に前向きな声があがった。

◎診療側・長島委員「医薬品メーカーとしての責任を果たしていない評価項目とあわせて検討を」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、少量多品目生産でも安定供給を行っている企業があることに触れ、「単に少量多品目生産だけに注目するのではなく、例えば少量多品目生産をした上で、単に収益が見込めなくなったとして、医療上の必要性があるにもかかわらず撤退するなど、医薬品メーカーとしての責任を果たしていないと評価できる項目とあわせて検討すべき」と述べた。

◎診療側・森委員「業界としてのビジョン、担当部局は関係業界に強く申し入れを」

診療側の森委員は、「評価指標の具体的内容やその適用の時期等については、企業規模や取扱品目により評価の影響を受けることが考えられるので、各社の状況を把握した上で検討していくべき」と指摘した。厚労省が描くビジョンに向けて施策が打たれることが想定される中で、ジェネリック業界が自らのビジョンを描いていないことに改めて言及。「行政の方向と業界が考えるビジョンが嚙み合っていないとうまくいかない。業界としてしっかりとしたビジョンをお示しいただきたい。厚生労働省の担当部局においては関係業界に強く申し入れをお願いする」と述べた。

◎支払側・松本委員「まずはシミュレーションで導入の妥当性を判断」

支払側の松本委員は、「構造改革には5年程度かかる。総合商社型の企業と領域特化型の企業に収斂していくことも想定しつつ、まずはシミュレーションした上で、少量多品目構造の見直しに係る指標の導入について妥当性を判断すべき」と述べた。

◎後発品の企業指標 情報公表などの導入は「25年度薬価改定から適用すべき」との声

後発品の企業指標は、24年度薬価制度改革で試行的に導入された。安定供給が確保できる企業を可視化することがポイントで、安定供給に資する企業の品目を医療現場で選択しやすくなるとともに、製薬企業に安定供給に向けた行動変容もうながす。

試行導入では、安定確保医薬品の品目数や、他社の出荷停止・出荷制限品目に対して増産を行った実績、製造販売する後発品の平均乖離率などの指標をポイント化。上位20%に当たる「A区分」、「B区分」、「C区分(ゼロポイント未満)」に分類。A区分の企業では一部品目について、現行の後発品の改定時の価格帯集約(原則3価格帯)よりも、上の価格帯に集約するインセンティブが導入された。

一方で、24年度薬価制度改革の議論の中では、原薬の製造国や共同開発先企業名などの公表や、安定供給のための予備能力の確保などについては、24年度薬価制度改革骨子で、「企業による準備期間を設け、24年度前半のできる限り早いうちに企業による公表を開始」することが明記され、公表が進んでいる状況にある。

診療・支払各側からは、薬価上で評価することに異論は出なかった。診療側の長島委員(日本医師会常任理事)は、「例えば、他の評価指標と同様にポイントをつけることで、薬価に反映することができないか」と表明した。適用時期については、「検討状況によるが、後発品の産業構造改革を促す意味でも、できるだけ早く実施すべき」(診療側・長島委員)、「企業指標は、医薬品の安定供給を企業に促す上で重要。次期改定で適用すべき」(診療側・森委員)との声が上がった。

支払側の松本委員(健康保険組合連合会理事)は、「24年度度薬価改定では一部の指標のみを試行的に導入したが、全ての指標が揃って初めてバランスのとれた評価になる。情報が公開されているのであれば、評価指標をアップデートし、25年度薬価改定から適用すべき」と述べた。

◎企業指標 診療側が「企業名」公表を求める 安定供給できる企業の可視化を

後発品の企業指標が、安定供給を確保できる企業を可視化することが目的とされることから、評価結果の公表も論点となった。現在はそれぞれの区分に該当する企業数のみが公表されているが、診療・支払各側ともに、「A区分からC区分にどの企業が回答するのかを公表するというのも検討に値する」(診療側・長島委員)、「現場が活用できる企業名を公表して、可視化を進めていただきたい」(診療側・森委員)と企業名の公表を求めた。診療側の森委員は、「評価結果を公表する場合には、評価の良い企業に注文が殺到し、欠品等の混乱が生じることのないような配慮をお願いする」と述べた。

支払側の松本委員は、「当然個別企業の評価結果を公表することが視野に入ってくる」と述べたうえで、「公表には様々な方法があり、例えばポイントをフルオープンするパターン、あるいは該当する企業区分のみ公表というのがある。また安定供給にどういった影響があるのか見極めることも必要だ。業界ヒアリングを踏まえながら丁寧に議論すべき」と述べた。


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