中医協 条件期限付き再生医療等製品 算定時の営業利益率を半減 有用性系加算は本承認時に該当性判断
公開日時 2025/11/13 04:52
中医協の合同部会は11月12日、2026年度薬価改定に向けて、条件期限付き再生医療等製品の診療報酬上の見直しを大筋で了承した。条件期限付き承認を受け、薬価及び材料価格算定する際には、平均的な営業利益率に「0.5」を乗じた値とするほか、有用性系加算は本承認時に改めて該当性を判断することとした。一方で、新薬創出等加算などについては通常承認を受けた再生医療等製品と同様に取り扱うことを提案したが、診療・支払各側から異論が出たことから事務局で再調整することとなった。議論がスタートしたきっかけが、2品目の条件期限付き再生医療等製品が薬価削除となったことであることから、製薬企業の「責任」を問う声もあがった。
◎有用性系加算以外の補正加算は算定時に該当性判断
事務局はこの日の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会に、条件期限付き再生医療等製品の診療報酬上の見直し案を提示した。
条件期限付き承認を受けた際の薬価及び材料価格算定について、原価計算方式により算定される場合に用いる営業利益率の係数は平均的な営業利益率に0.5を乗じた値を用いることとした。「有効性が不確実な段階で利益をどこまで保障すべきか」との意見が出たため。厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「想定されなかった上市後の追加的な安全対策や承認に必要となるデータ収集、品質保証や品質管理体制の維持など安定的な供給継続に必要な経費に使用されるものと承知しており、一定の値を設定させていただいた」と述べた。現在の評価手法となった18年以降、減算ルールが適用された医薬品はないという。なお、21~23年度の平均営業利益率は15.8%で、仮にこの値にルールを適用すると7.9%を用いることになる。
有用性系加算については、条件期限付き承認取得の算定時には該当性を判断せず、本承認時に改めて該当性を判断する。改めて承認を受けた際には、通常の承認に係る審査の結果等を踏まえて、原価計算方式により算定された場合の営業利益率の係数、補正加算の適用又は控除について評価するとした。収載後の価格調整ルールである、市場拡大再算定の適用も、通常承認を受けた再生医療等製品と同様の取り扱い。一方で、費用対効果評価の適用については、改めて承認を受けた際にその該当性を判断することとした。
◎営業利益率の半減ルール 根拠問う声あがるも「やむを得ない」と了承
営業利益率を減算することについては、“0.5”を乗じることの根拠や妥当性を問う声があがったが、「やむを得ない」として診療・支払各側が了承した。
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「(0.5を乗じることの)妥当性はともかく、本承認に向けた市販後調査を実施する際に、必要な費用や製品の安定供給など、必要な範囲に限定すべき」と指摘した。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「想定外のコストが発生する可能性や患者のアクセスの確保ということを考慮して、一律に既存ルールで最低限の0.5を乗じた値にするということで、やむを得ない。ただし、今後事例を積み重ねの中で、より適正な水準について必要に応じて検討すべき」と述べた。支払側の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「より明確な根拠を示していただきたいし、より適正な数値していただきたいが、この制度が患者にいち早く新薬を届ける制度であり、そのための企業の開発意欲を維持するためのものであることを考えると、ある程度は理解する」と述べた。
◎算定時の新薬創出等加算 診療側・江澤委員「革新性が立証されていない段階の評価は難しい」
一方で、事務局は、有用性系加算以外の補正加算は算定時に該当性を判断するとしたことや、新薬創出等加算や外国平均価格調整などは、通常承認を受けた再生医療等製品と同様に取り扱うことを提案したが、異論があがった。
有用性系加算以外の補正加算について診療側の江澤委員は、「ノベーションを推進するという趣旨は理解しているが、まだその製品の評価が定まってない時点で、通常承認を受けた再生医療等製品と同様の評価をするのは、やはり無理があるのではないか」と指摘。新薬創出等加算の適用についても「革新的な新薬を評価するというこの加算の趣旨からして、その革新性がまだ立証されていない段階で、同様の評価をすることは、やはり難しいのではないか」と述べた。
支払側の高町委員は、「有用性系加算以外の加算、新薬創出等加算を含めた加算がつけられることも理解はできる。しかし、有用性が推定であることを考えると、患者の負担が大きくならないように加算はある程度抑えられたほうが良いと考える。その上で、有用性と安全性が確認されて本承認になったときに、それに見合う価格を十分につけるとした方がよいのではないか」と述べた。
◎企業の「責任」問う声があがる 条件期限付き再生医療等製品2品目の削除受け
条件期限付き再生医療等製品2品目が通常承認を取得できず、薬価基準などから24年度に削除されたことが議論の発端であることから、企業側の姿勢を問う声がこの日もあがった。
診療側の江澤委員は、「製造販売会社は期限内については、当然患者さんが安心して治療を受けられるようにしていただくべきだ。できるだけ早期に有効性の検証が完了するよう、責任を持って相当の努力をしていただきたいと改めて要望する」と述べた。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「再生医療等製品の特性について十分理解するが、患者のため、そして公的保険制度の中で、条件期限付き承認制度を運営していることから、本承認前の企業からの取り下げや、条件及び期限付承認の失効が発生しないよう、再生医療イノベーションフォーラムや日本バイオテク協議会の取り組みに期待する。それらに向けては、厚労省としても、しっかりと連携していくことをお願いしたい」と述べた。
◎支払側・松本委員「保険適用の削除続けば、より厳しい対応をとらざるを得ない」
支払側の松本委員は、「今回の制度設計は、これから出てくる製品の有効性の確からしさが、過去に本承認に至らなかった2製品に比べて相当程度高いことを前提として了承するものだ。本承認に至らず、保険適用が削除するケースが続くようであれば、当然、より厳しい対応をとらざるを得ない」と牽制。「本承認に至らなかった場合に企業としてどのように対応するべきなのか、業界全体で真剣に検討いただきたい」と述べた。
業界代表の越後園子専門委員(第一三共渉外部渉外部長)は、「承認取消しになった事例の検証により抽出された課題、その対応策などを踏まえながら、各企業においては今後の製品が本承認へ至るべく、その有効性、安全性の確立に向けて、真摯に対応していくものと確信している」と述べた。
このほか、支払側の高町委員は、「この制度が、あくまで有用性が推定である間の暫定的な措置であることを、患者も知っておくべきだ」と指摘し、制度の周知を厚労省に求めた。