ギリアド・サイエンシズのケネット・ブライスティング代表取締役社長は4月16日の年次記者会見で、2024年の売上高が前年比14％増の1485億円に上ったと明らかにした。グローバル全体の成長率６％を大きく上回ったと強調。「日本事業は非常に好調だった。HIV、COVID-19、肝疾患、炎症領域、がん領域の注力領域の全てで事業が拡大した」と胸を張った。さらに、「今後5年間も成長を継続できる」と断言し、特にがん領域は「固形がんと血液がん両方の治療において確固たる地位を築いており、今後5年で最大の成長分野となる」と意欲を示した。

がん領域に注力する理由についてブライスティング社長は、「依然として大きなアンメットメディカルニーズがある分野であり、非常に多くのイノベーションが求められている。それこそが私たちの原動力になっている」と説明。自社の研究開発に加えて、M&Aや社外とのパートナーシップの獲得を通じたイノベーションの促進に言及し、「社内で保有しているか、外部調達かはそれほど重要ではない。大切なのは何が患者さんに変化をもたらすことができるかにある」と訴えた。

◎トリプルネガティブ乳がん適応のADC・トロデルビ　「3年間で6つの適応拡大目指す」

日本でのがん領域のうち、固形がんでは、抗TROP2抗体薬物複合体（ADC）・トロデルビが24年9月に「化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2 陰性の手術不能又は再発乳がん」（トリプルネガティブ乳がん：TNBC）の適応症を取得するなど、同社オンコロジー領域の成長を牽引した。現在、国内では転移性トリプルネガティブ乳がんの1次治療やホルモン受容体・HER2陰性乳がんの１次治療・２次治療以降、非小細胞肺がんの１次治療、子宮体がんなど、８つの適応拡大で臨床試験が進行中。

表雅之常務執行役員開発本部長は、固形がん領域において、「この3年の間に6つの適応拡大取得を目指していく」と明かした。

血液がんでは、CAR-T細胞療法・イエスカルタが23年６月に国内製造販売承認を第一三共から承継し、大細胞型B細胞リンパ腫（LBCL）の２次治療を適応症としている。日本向けにはイエスカルタの１次治療の適応拡大や、同じくCAR-T細胞療法・Tecartusの承認申請に向けた開発などが進められている。表開発本部長は、「国内開発を加速する」と強調した。このほか、グローバルでは他家細胞CAR-Tや固形がん、自己免疫疾患への適応拡大を見据えた研究開発が進んでいることも報告した。

◎CAR-T細胞療法　認定施設は24年から倍増の67施設に

CAR-T細胞療法では治療アクセスも課題として挙がる中、治療可能な認定施設数の拡大にも取り組んでいる。日本の認定施設は25年4月時点で67施設で、24年4月時点の32施設から倍増した。ブライスティング社長は、「地方であってもすべての人がCAR-Tにアクセスできるようにするためには、認可施設の数をさらに増やす必要がある。現在進行形の取り組みとして、日本の全ての患者さんに細胞療法を提供できるよう尽力していく」と述べた。

◎HIV「2030年までに感染終結へ」　検査拡大と予防治療のアクセス確保が課題

一方、ウイルス領域で注力するHIVについてブライスティング社長は、「日本は2030年までにHIV感染を終結させることができる世界初の国になる可能性を秘めている」と述べ、「ビジョンを実現するためにあらゆる努力を尽くす」と表明した。また、目標達成に向けてHIV検査の拡大と予防治療へのアクセス確保が重要になるとの認識を示した。

同社製品では抗HIV治療薬・ツルバダが24年８月にHIV-1感染症の暴露前予防（PrEP）の追加適応を取得している。ブライスティング社長はPrEP普及に向けて、厚生労働省が行うPrEP提供体制の整備に関する調査研究に協力することを発表し、「将来的により広範なアクセスに繋がることを期待している」と述べた。