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慶應大など研究チーム スマホ画像×AIでアトピー性皮膚炎の重症度判定デジタルバイオマーカーを開発

公開日時 2025/05/30 04:52
慶應義塾大学医学部、同大学病院、京都府立医科大学、帝京大学らの研究チームは5月29日までに、「スマホ画像×AI」でアトピー性皮膚炎の重症度を即判定し、自宅から症状を評価できるデジタルバイオマーカーを開発したと発表した。アトピー性皮膚炎の患者約 2.8 万人が参加する投稿型アプリ「アトピヨ」(アトピヨ合同会社)に蓄積されたデータを活用し、AIを用いた重症度判定技術の開発に取り組んだ。身体部位の同定率は 98%、皮疹部位の同定率は 100%と高精度を示し、重症度判定も専門医の評価と強い相関を示した。今後は、治療効果の予測や症状悪化の早期検出などの臨床研究も予定しており、新たな診療支援に展開したい考え。

同研究は、慶應義塾大学医学部皮膚科学教室/慶應義塾大学病院アレルギーセンターの足立剛也専任講師(京都府立医科大学兼任)、同教室の雁金詩子助教、帝京大学医療技術学部視能矯正学科の広田雅和准教授らが中心となり実施した。研究チームによると、「医療機関の精緻な皮膚画像を分析するAI技術は研究が進められてきたが、我々は、患者自身が撮影した写真を高精度で解析できるAI技術の開発が次のステップだと考えた」としている。

◎投稿型アプリ「アトピヨ」を活用 画像解析AIを用いて皮疹の重症度を評価

投稿型アプリ「アトピヨ」は約5.7万枚の投稿画像を保有。同研究では画像解析AIを用いて皮疹の重症度を評価した。その際、医療機関で撮影された画像と異なり、様々なノイズ(光、角度、背景など)があることを考慮し、身体の部位の検出、皮疹の部位の検出および皮疹の重症度判定を行った。なお、皮疹重症度には各皮疹部を個別に簡便に評価できる Three Item Severity(TIS)スコアを用いた。

◎重症度判定 専門医の評価と強い相関(R=0.73, P<0.001)

この結果、作成したAIモデルの検証により、身体部位の同定率は98%、皮疹部位の同定率は100%と高精度を示し、重症度判定も専門医の評価と強い相関(R=0.73, P<0.001)を示した。研究チームによると、「これにより日常生活で得られた画像データを用いた本モデルの有効性が示された」と強調。他の客観的評価指標である objective-SCORADとも比較的高い相関(R=0.53, P=0.04)を示した。一方で、患者の主観的評価であるかゆみスコアとは相関が低い(R=0.11)ことも明らかになった。

今後の取り組みについて研究チームは、「患者自身によるセルフモニタリングへの応用や、皮膚症状に応じた個別かつ医学的なアドバイスを自動提供できるシステムの構築を目指し、患者一人ひとりのニーズに応じた医療支援に役立てることを想定している」と指摘。今回のAIモデルを標準化された評価ツールとして臨床研究に活用し、治療効果の予測や症状悪化の早期検出といった新たな診療支援にも展開していきたいとした。

◎アトピヨ合同会社 新薬切換タイミングと理由、使用前後の症状変化などインサイト分析も

一方、投稿型アプリ「アトピヨ」を開発したアトピヨ合同会社も、集積したデータを用いた新薬切換のタイミングと理由、新薬使用前後の症状の変化、新薬同士の比較、ペイシェント・ジャーニーなどのインサイト分析を行うことで把握が難しい治療実態の解明にもつなげたい考え。製薬企業との共同研究も視野に入れている。

さらに同社は、25年6月には米国版をリリースすることにしており、ヨーロッパ系・アフリカ系・ラテン系・アジア系など多様な人種のデータセットを収集し、「個別化医療」の実現を意識したデジタルバイオマーカーとしての実装を目指す考えだ。

◎研究成果は5月20日付の国際医学誌「Allergy」(オンライン版)に掲載


なお、研究成果は25年5月20日付でアレルギー領域の国際医学誌「Allergy」(オンライン版)に掲載された。



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