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中医協総会 致死的急性肝不全で審議ストップのエレビジス 保険適用に向けた議論再開も安全性求める声

公開日時 2025/10/09 05:00
中医協総会は10月8日、中外製薬の再生医療等製品・エレビジス点滴静注について、医療保険上の取り扱いについて議論を再開することに大筋で了承した。同剤は、条件及び期限付き承認後に、海外で歩行不能な患者の急性肝不全による死亡例が2例報告され、保険適用に向けた審議が見合わされていた。厚労省は添付文書の改訂など、安全性対策を講じていることで議論再開の理解を求めた。しかし、患者代表の支払側の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が「安全性が確保されずに、安心して治療をすることが難しい新薬は、患者が望んでいるものではない」とクギを刺すなど、さらなる安全性対策の必要性を指摘する声が診療・支払各側からあがった。

エレビジス点滴静注をめぐっては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を適応症として、5月13 日に条件・期限付き承認を受けた。高額薬剤となる可能性があることから、翌14日の中医協総会で、保険適用に向けて議論が開始されていた。一方で、製造販売業者であるスイス・ロシュと中外製薬は6月16日、海外で歩行不能な患者で致死的な経過を辿った急性肝不全が2例報告されたことを公表。国内で実施中の歩行不能な患者を対象とした臨床試験も投与を中断した。これを受け、6月18日に開かれた中医協総会では、「薬事で専門的に再検討していただくことも含め、厚生労働省としてしっかり情報収集、整理した上で、丁寧で慎重な検討が必要」などの意見があがり、エレビジス点滴静注の安全性情報についてさらなる情報収集した上で、医療保険上の取扱いについて議論することが了承されていた。

◎添付文書を改訂 適正使用ガイドや患者向け資材作成で肝機能障害への安全対策徹底へ

厚労省医薬局医薬安全対策課はこの日の中医協に、急性肝不全による死亡例に基づき、PMDAにおいて安全対策を検討、専門家の意見聴取(専門協議)を実施。その結果を踏まえ、添付文書の使用上の注意を、肝機能に関する定期検査の確実な実施や異常発生時の対応などを明記するよう、8月28日に製造販売業者に指示したことなどを報告した。さらに安全対策を徹底する観点から、製造販売業者が医療従事者向けの適正使用ガイドや、患者・家族向けの資材を作成し、肝機能障害に対する安全対策を徹底することとしている。

◎審議再開は“安全性”が大前提

「安全性が確認され、担保されているという前提が崩れていないということであれば、今後の進め方について異論はない」(診療側・森昌平委員)、「医師や患者にも有害事象の可能性をしっかり周知し、何らかの兆候があれば速やかに対応することを前提として、医療保険上の取り扱いについて、議論を進めることには異論はない」(支払側・松本真人委員・健康保険組合連合会理事)と、安全性を大前提としたうえで、議論を再開することには診療・支払各側が大筋で了承した。一方で、提供する安全情報の内容をはじめ、さらなる安全対策を求める声も診療・支払各側からあがった。

◎診療側・江澤委員 適正使用ガイドや資材の審査求める「一企業の見解でなく、公的に確認を」

診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「(適正使用ガイドや患者向け資材は)企業が主体となって作成するものと理解している」として、「ややイレギュラーではあるが、その内容が公的にも確認されたものであり、安全性の裏付けが単なる一企業の見解にとどまらず、公的に確認されていることが、対外的にも明らかになるように、これらの資材についても、PMDAによる専門家や役職者における安全対策部会においてチェックしていただくことを提案する」と述べた。

厚労省医薬局の安川孝志医薬安全対策課長は、「一定の確認作業を終えているが、適正使用ガイドの内容は改めて、処置の対応も確認させていただきながら、中医協でも報告させていただきたい。万全の態勢を組みながら、本品の適正使用につなげていきたい」と応じた。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、エレビジスの投与前後にプレドニゾロンの
投与を行うとされており、これが薬局で行われる可能性を説明。「エレビジスが薬価収載されることになった場合には、増量や漸減療法への対応、エレビジス投与患者のステロイド服用等における服薬管理が重要になってくる。しっかりと取り組んでいきたいと思うので、企業から薬局へも、適正使用に関しての情報提供をいただけるように、ご対応をお願いしたい」と述べた。

◎支払側・高町委員「安全性が確保されていない新薬は患者が望んでいるものではない」

患者代表の支払側の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、上市後2年後に同剤の売上高がピークを迎えることを指摘し、「これは、条件・期限付き承認の間に、ピークを迎えるということになる。エレビジスは、高額である上に、重篤な副作用の懸念が払拭されていないと言わざるを得ない状況だと思う。このような状況で、条件・期限付き承認の間に市場のピークを迎えるということには、やはり違和感を覚える。条件期限付き承認の間は、治療を制限して、安全性が確保されて、本承認されてから、より多くの患者が使用できるようにすることはできないのか」と質した。

これに対し、厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、適応症のDMDが進行性の重篤な疾患であるとして、「現在、本疾患に対応する治療方法は、対処療法などに限定されており、また3歳以上8歳未満の対象と投与患者も限定されている。患者の治療薬へのアクセスを適切に確保する観点から、ご指摘のような制限の措置は難しいのではないかと考えている」と述べた。

支払側の高町委員はこれに対し、「患者は、新薬を待ち望んでいる。しかし、それはあくまで安全性が確保されているのが前提だ。安全性が確保されずに、安心して治療をすることが難しい新薬は、患者が望んでいるものではないということを改めてお伝えしたい」とクギを刺した。



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