中医協総会 長期収載品の選定療養、患者負担引上げで支払側「価格差の全額を」 診療側は薬価改革踏まえ検討を
公開日時 2025/11/17 04:51
中医協総会は11月14日、長期収載品の選定療養をめぐり、患者負担の引上げについて議論した。現行制度では、患者希望で長期収載品を使用した場合、長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1相当が患者負担としているが、2分の1以上に引き上げる案を提示した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「価格差の全額を選定療養とすることで、より後発品を使用するインセンティブを出すことが妥当だ」と述べるなど、支払側からは価格差の全額を患者負担とする意見が相次いだ。一方、診療側は薬価制度改革の影響や患者負担などの実態を把握したうえでの「慎重な検討」を求める声が上がった。また、後発品を中心とした供給不安が解消されない中で、後発品の安定供給が大前提との指摘もあがった。
長期収載品の選定療養は2024年10月に導入。10月を境に調剤レセプトベースで、後発品の数量シェアが4ポイント上昇し、後発品数量シェア90%となるなど制度改革の効果も出ている。一方で、後発品を中心とした供給不安が続いており、需要増などに伴う供給停止により、医療現場に負担がかかっているとの指摘もある。
選定療養をめぐっては、昨年末の大臣折衝では、「選定療養の仕組みを用いた、長期収載品における保険給付の在り方の見直しについては、更なる活用に向けて引き続き検討する」と明記。製薬業界側も「創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループ」が今年11月に取りまとめた議論の整理で、先発品企業は後発品上市後には市場から撤退し、後発品企業に安定供給等の役割を譲るという医薬品のライフサイクルの目指すべき姿を示している。
事務局は、患者希望で長期収載品を使用した場合、長期収載品と後発医薬品の価格差の「2分の1」、「4分の3」、「1分の1」に引き上げることを論点にあげた。
◎支払側・松本委員「価格差の全額選定療養で後発品使用のインセンティブを」
支払側の松本委員は、厚労省の実施した調査の結果、患者希望で長期収載品が処方された場合に徴取する“特別の料金”が現在の「2倍程度」になった場合に後発品に切り替えるとの回答が最も多かったことを引き合いに、「特別の料金が現在の2倍、3倍、4倍程度になる場合に後発品に切り替えるとの回答が一定程度あることから、価格差の全額を選定療養とすることで、より後発医薬品を使用するインセンティブを出すことが妥当だというふうに考えている」と述べた。
鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「安定供給の課題は引き続きあるものの、そうしたケースも含め、医療上の必要がある場合は選定療養の対象外にする仕組みが確保されている。制度導入後の使用割合は横ばいとなっている状況を踏まえ、特別の料金をさらに引上げ、使用促進を図るべき」と指摘。「特別の料金は、ジェネリックを先発品の差額と同額にする方向で見直しを図っていくべき」と主張した。
◎診療側・江澤委員 G1/2引下げルール踏まえた検討求める
一方、診療側の江澤委員は、「現在、薬価専門部会において長期収載品の価格引き下げルールを早期に適用することも提案されており、その結果によっては長期収載品と後発医薬品の価格差が縮小するスピードが速まることも予想される」と指摘。「検討の際には薬価制度改革の内容も踏まえつつ、まずはどういった理由で患者さんが長期収載品を希望されていらっしゃるのか、治療上やむを得ない理由があるのかどうか、特別な料金の負担をどう感じておられるのかなどの実態を把握した上で検討する必要がある」との考えを示した。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も「今でも調剤のたびに説明を行う必要があり、業務上負担となっている。特に処方が変更になったとき、患者の負担金額が変更した場合など、その説明や納得いただくためにかなりの労力がかかっていることはご理解いただきたい」と訴えた。そのうえで、「仮に負担率を価格差の 1/2とした場合、今よりも患者さんは倍の負担金額となる。患者負担の影響等の点から、どのような患者、薬、ケースで長期収載品を希望しているのか、また負担金額が増加しているかどうかなどを分析した上で、慎重に検討を進めるべきだ」と指摘した。
支払側の永井幸子委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、選定療養での特別の料金が1万円以上のケースがあったとの結果を踏まえ、「どういった方が該当しているのかなど分析をしていただき、また患者への影響なども踏まえて丁寧に検討していくことが必要」との考えを示した。
◎要件の“医療上の必要性” 診療側・江澤委員「今後も堅持すべき」 支払側・松本委員「精査すべき」
長期収載品の選定療養は、「長期収載品を処方等又は調剤する医療上の必要があると認められる場合」については、対象から除外されるなどの要件がある。
診療側の江澤委員は「医療上の必要性があると認められる場合や、薬局に後発医薬品の在庫がない場合など、後発医薬品を提供することが困難な場合は、選定療養の対象外とする扱いについては、今後も堅持していくべきだ」と述べた。
一方、支払側の松本委員は、「依然として後発品の限定出荷等の状況が続いていることを踏まえると、後発品後発品を使用できる環境にある長期収載品について選定療養の対象とすると理解している」と述べた。一方で、「医療上の必要性の判断につきましては、より精査が必要だ」とも指摘した。
◎後発品の安定供給は「大前提」との声も
選定療養を進めるうえで、後発品の安定供給が大前提との指摘もあがった。診療側の森委員は、「後発品の使用促進、長期収載品の選定療養は医薬品の安定供給が前提だが、供給不足がいまだに続いており、患者に迷惑をかけ、現場は大変疲弊している。業界からのヒアリングで、これからもしばらくの間は解決されないことが示されている。後発品の使用促進や長期収載品の選定療養の対応については、引き続き供給不安に関する配慮は必須だ」と述べた。
診療側の大杉和司委員(日本歯科医師会常務理事)も、「安定供給の観点が 第一であり、現状でもまだまだ不安定だという声を聞いている。安定供給については大前提でよろしくお願いしたい」と述べた。