EFPIA・エルリヒ会長 MFN価格政策「グローバル戦略の転換点」 日本の薬価政策の影響を懸念 岩屋会長
公開日時 2025/10/22 04:51

欧州製薬団体連合会(EFPIA)のシュテファン・エルリヒ会長は10月21日、東京都内で記者会見に臨み、米トランプ大統領の最恵国待遇(MFN)価格政策について、「グローバルな医療政策における戦略的な転換点を示している」と指摘した。また日本への影響について、「毎年薬価が引き下げられ、特許期間中でさえ、その価値が保護されていない日本の市場環境にも影響は及ぶ」と警鐘を鳴らした。一方、EFPIA・Japanの岩屋孝彦会長は、「仮に日本の薬価を参照して米国の薬価が引き下げられるようなことになれば、グローバル企業の採算が悪化し、今まで通りの研究開発は進まない」と述べ、新たなドラッグ・ロス/ラグの火種になると指摘した。また、厚労・財務など国と産業界の意見交換を通じ、政府がリーダーシップを発揮して欲しいと訴えた。
米トランプ大統領は今年7月末に主要製薬企業17社に書簡を送り、メディケイド向け薬価の引下げや割引価格での直接販売を要求している。すでにファイザーとアストラゼネカの2社が薬価引下げに合意。米国内への追加投資を表明する一方で、3年間の関税猶予の措置を得ている。
◎エルリヒEFPIA会長 トランプ大統領と個社の交渉「少なくとも新しいやり方だ」
シュテファン・エルリヒEFPIA会長は米国で起こっているトランプ大統領と製薬個社の交渉について、「個社についてのコメントは差し控える」と断りながら、「(トランプ大統領と製薬企業の交渉は)少なくとも新しいやり方だ。通常とは違う」と強調、今後の動向を注視する姿勢を示した。同会長はまた、「MFNの価格政策はグローバルな医療政策における戦略的な転換点を示している」と述べながらも、「MFNを外部からの圧力として捉えるのではなく、これはイノベーションの評価に関する共通のアプローチを再構築できる機会として捉えるべきだ」との見解も示した。
◎EFPIA・Japanの岩屋会長 日本の薬価「自分たちでコントロールできない部分が殆ど」

EFPIA・Japanの岩屋孝彦会長は、トランプ流の交渉術について、「必ずしも現状は政府・業界を問わず日本国内で大きな議論がされていると認識していない」と述べながらも、「米国の薬価政策を基準にして、これを全世界に適用するような形での最恵国待遇の薬価政策が行われることで、非常に大きな影響を世界に及ぼすことになる」と危機感を表明。日本市場も例外ではないとした。
その上で日本への影響については、「メーカーからすると薬価切り下について、自分たちでコントロールできない部分が殆どで、それが起こった場合に回避する手立てがない、さらに言えば交渉の余地もない」と指摘。「こういう環境下で、日本の薬価が自分たちのコントロールを離れて下がり続ければ、それが米国の薬価に大きな影響を与える。そういう懸念がある」と強調し、「(グローバル企業は)日本への研究開発投資や製造拠点の整備などに投資を継続できるかというと、非常に厳しいのではないかと感じている」と危機感を露わにした。製薬団体としての対応策について岩屋会長は、「厚労省や財務省などの国と我々産業界の間で、この点についてしっかりとした議論を行うことが絶対に必要だと思っている」と述べた。
岩屋会長は会見で、米最恵国待遇薬価政策に関するEFPIA・Japan加盟10社のアンケート調査結果を報告。グローバル全体の価格戦略への影響については、10社全てが「Yes」と回答。グローバル全体の研究開発戦略への影響については、10社中9社が「Yes」と答えたことを明らかにした。