PhRMA・ブーラ会長「革新的医薬品に対する不均衡の是正を」 特許期間中の薬価維持など日本政府に要請
公開日時 2025/11/19 04:53

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のアルバート・ブーラ会長(米ファイザー取締役会会長兼CEO)は11月18日、来日記者会見に臨み、米国の最恵国待遇政策(MFN政策)による変化を引き合いに、日本政府に対し、特許期間中の薬価維持や新薬収載時の算定ルールの見直し、国家戦略の策定などを要請したことを明らかにした。ブーラ会長はまた、「進歩を継続していくためには行動が必要だ。画期的な治療法やワクチンを開発できるかどうかは、革新的なバイオ医薬品に対する価格の世界的な不均衡を是正できるかにかかっている」と強調。米トランプ大統領との直接交渉の印象については、「彼は実業家として大胆なビジョンを持ち、物事を成し遂げる力がある」と語り、「私たちは皆、彼の意見に耳を傾けるべきだ」と述べた。
◎「彼(トランプ大統領)はビジネスマンだ。大胆なビジョンを持ち成し遂げる力がある」
「多くの大統領は製薬企業と直接交渉はしないが、トランプ大統領は違う。彼はビジネスマンだ」-、トランプ大統領の印象についてブーラ会長はこう語った。トランプ大統領は7月31日付けでグローバルメガファーマ17社に書簡を送り、MFN価格で処方薬を提供するよう要請した。MFN価格は米国の処方薬価格を日本や欧州など他の先進国の最低価格に合わせるもので、9月30日に米ファイザーはいち早く要求に従い、処方薬の価格引き下げに合意する。これを皮切りに、アストラゼネカ、ノボノルディスク、イーライリリーも合意に至っている。ブーラ会長はこの日の会見で、トランプ政権が進めるMFN政策に触れ、「先進国がリスクの負担を公平に分担できるよう、処方薬の価格をアメリカの水準に合わせるために必要な政策改革に取り組む米政府の努力を支持する」と改めて表明した。
◎日本の薬価制度の課題指摘 「好ましくない価格政策で不利に立っている」
会見ではPhRMAのケビン・ハニンジャーヴァイスプレジデント(国際担当)が日本の薬価制度の課題を説明。「新薬発売時の薬価が主要国に比べて低く、特許期間中にも何度も価格が引き下げられる」と述べ、「長年にわたる好ましくない価格政策の影響で、日本は競争面で不利に立っている」と訴えた。その上で、欧米で開発後期にある新薬候補の7割が日本での開発未着手であり、バイオ医薬品産業への研究開発投資の伸び率が世界に比べて低いなどと課題を指摘。「政府が社会保障予算全体を管理するために薬価引き下げに過度に依存している」と語気を強めた。
また、過去10年に日本市場に上市された新薬の8割が外資系企業によってもたらされた一方、「MFN政策が日本に与える影響を非常に懸念している」と表明。MFN政策によりグローバルメガファーマの日本に対する投資インセンティブが変化し、日本での開発や上市計画などの戦略変更につながりかねないとの危機感を示した。
◎特許期間中の薬価維持・新薬収載時の算定ルール見直し・国家戦略の策定を日本政府に要求
こうした背景を踏まえ、PhRMAは、「ドラッグ・ロスと投資の縮小を招いてきた政策を転換し、将来を見据えた方向性のもとで進めるべきだ」と主張。①特許期間中の薬価の維持、②新薬収載時の算定ルールの改善と製品価値の適切な評価、③内閣官房主導の下で国家戦略の策定―を求めた。
ブーラ会長は、「現状維持は持続可能なものではなく、受け入れられない。求めているのは、薬価引き下げをやめて現在の価格を維持することだ。適正な薬価が設定されることで、より多くの薬が利用できるようになる。最新の医療に関する知見と技術が利用可能になることで、投資の機会が生まれ、医療費の削減にもつながるということを理解すべきだ」と主張した。