FIRM 条件期限付き再生医療等製品の承認取消しで謝罪も「有用性加算以外は評価を」 診療・支払側は難色
公開日時 2025/10/30 09:00
再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)畠賢一郎代表理事会長は10月29日、中医協の合同部会でヒアリングに臨んだ。畠賢一郎代表理事会長は、条件期限付き再生医療等製品のうち2製品が本承認に至らなかったことを、「業界としても深く重く受け止め、今後の再発防止と信頼回復に取り組んでまいりたい」と決意を示した。そのうえで、薬価上の評価として、有用性系加算以外の補正加算の継続を訴えた。診療・支払各側からは業界の姿勢に一定の理解を示す声もあったが、診療側の黒瀨巌委員(日本医師会常任理事)が、「市場性加算1も含めて、通常の承認と同じということはあり得ない」と述べるなど、条件及び期限付承認時の加算には難色を示す声があがった。
◎認取り消し製品の検証こそ重要 次の製品へ活用
条件期限付き再生医療等製品のうち2製品が本承認を得られなかったことが問題視され、26年度薬価制度改革の論点に浮上していた。
畠賢一郎代表理事会長は、中医協費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合の意見陳述の冒頭で謝罪し、「製造販売後承認条件評価に対する申請者側の意識を変えるべく、業界として尽力する」と述べた。FIRM内で事例の共有やPMDAとの会議、評価方法の確立などに取り組んでいることを紹介した。「承認取り消し製品の検証こそ重要で、製品の課題、使用方法の課題、検証方法の課題などを明らかにし、経験値として次の製品へ活用する」との姿勢も表明した。
そのうえで、「再生医療等製品の特殊性を鑑みた制度として、特に有効性の発揮に関して、医療機関がどう使われているのか。そして、患者さんのレスポンダー・ノンレスポンダーの問題、さらには長期間の有効性があると想定されるものを、どのように検証していくか、しっかりと制度の意義を考え、業界団体としても、しっかりとまとめ上げていきたい」と強調した。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「早期の患者アクセスを実現するために、条件及び期限付き制度があると理解しているが、あくまでも保険適用は、本承認に至る蓋然性が高いことが前提。企業からの取下げや、本承認に至らなかった場合は、しっかりと検証を行っていただくとともに、企業からの説明は不可欠だ」と指摘。診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「検証が不十分だったということが大きな問題点になったかと思う。それを見直すということで、この条件付き承認制度を続けるかどうかということがかかってくると思う。ぜひご努力をお願いしたい」と述べた。
◎条件期限付き承認時は「結果的に有用性加算が付与されないことは仕方ない」
条件期限付き再生医療等製品の価格算定をめぐり、FIRMは「有用性系加算以外の補正加算について、重篤な疾患・希少な疾患に対する製品開発を促進するという主旨に鑑みて、引き続き条件及び期限付承認時において評価いただきたい」と要望した。「推定された有効性により承認されていることを考えると、結果的に有用性加算が付与されないことは仕方ないこと」との見解を表明。一方で、「重篤な疾患に対する製品開発を促進するということに鑑みまして、少なくとも有用性系加算以外の加算については、条件期限付きの承認時にご評価いただきたい」と訴えた。
これに対し、黒瀨巌委員(日本医師会常任理事)は、「条件期限付きの承認を受けた再生医療等製品の場合、有効性の承認も確認も推定にとどまっていることの意味をしっかりと捉え、希少疾病等への対応を評価する市場性加算1も含めて、通常の承認と同じということはあり得ない」と改めて表明。診療側の森委員も、「条件期限付承認は、本承認に至る前の、ある意味で仮免許期間と理解をしている。各種補正加算については、しっかりとデータを示す本承認時に改めて評価することが本筋」と指摘した。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「保険者の立場に立つと、安全性と有効性が確認された場合に保険適用するというのが、あくまでも大原則」と説明。「価格は条件期限付き承認の場合には、少なくとも、正式承認と同じ価格にならないということは一定ご理解いただいたものと受け止めているが、仮免許で保険適用する前提は、やはり有効性の確からしさというのが特に重要になると思っている」と述べた。
◎本承認時には新規収載時と同様に有用性系加算の評価を 有用性示せなければ減算も
一方、本承認後の薬価をめぐり、FIRMは「条件期限付き承認時には明らかではなかった医療上の有用性が、その後、客観的に示された場合には、改めて補正加算の該当性につきましてご評価いただきたい」と要望。「現行の既収載品に対する改定時加算の評価ではなく、新規収載時と同様に、有用性系の補正加算の評価を行っていただきたい」と述べた。
本承認時の新薬創出等加算の適用については、「条件期限付き承認の本質が、基本の治療法に十分な効果がない疾患においてのアクセスの向上を目的としているもの。新薬創出等加算が革新的な医薬品の開発を促進するために導入された制度であることを踏まえ、対象に該当するものは、引き続き対象としていただきたい」と要望した。
また、条件期限付き承認の際に補正加算が適用となったものの本承認時には認められなかった場合には、「実態に合わせて加算を控除することも理にかなう考え方だ」、「条件及び期限承認時に何らかの加算が授与されている場合に、その部分に関しましては減算されても、仕方ない」とも述べた。