
日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の川俣知己会長は2月20日の会見で、「我々が製造する後発品のキャパシティと需要バランスが、ようやく 2026年度には達成できそうだ」との見通しを示した。ただし、品目により在庫量に差があることから、「26年度、急激に限定出荷の解除が見られることにはつながらない」と説明した。「我々が企業間で情報を共有した上で、作りすぎているものをなくすことが、足りないものを生産する原資になり得ると思っている」として、会長が立ち上げた安定供給責任者会議の重要性を強調した。ただ、限定出荷の時期については、「麻酔薬や抗生物質などは根幹が解決されないと、供給不安の解消にならない」などと述べ、明言を避けた。同日、公表した「産業構造あり方研究会」の報告書で試算を示した。
川俣会長は会長就任から1年半を振り返り、「半年間は、新たに設ける検討組織に係る規約などルール作りに時間を要し、なかなか成果をお示しすることができなかった。その後、 3本柱を中心として、ジェネリック医薬品の安定供給に取り組み、形が見えてきた」と表明。「現在の供給不安を解消することが、我々の最大の取組みだ。そのために、限定出荷解除に向けてどのような取り組みを行うか、今後どう取り組んでいくかを示したのが、この最終報告書だと考えている」と報告書の意義を強調した。
◎29年度供給量1101億錠、需要量1056億錠上回るも品目に差 将来予測に様々な前提も
報告書によると、後発品のシェア率を90.0%と仮定すると、29年度の需要量は1056億錠と推計。供給量見込みは1101億錠となり、試算ベースでは需要量を供給が上回る見込み。供給量が需要量を上回りほぼ拮抗するのは26年度(プラス16億錠)で、中間報告の29年度から前倒しした。GE薬協は、「川俣会長からの前倒し要請を踏まえた各社の投資計画の見直し、予測需要量の減少」が影響したとの見方を示した。
一方で、この将来予測は、各社の製造能力が減ることなく計画通り設備投資が実行されることを前提としており、個別企業の予期せぬ撤退やパンデミックなどによる需要増などは考慮していないと説明。さらに、長期収載品の選定療養やオーソライズドジェネリック(AG)の薬価制度変更などの環境変化がある中で、「今後、各社ごとに製造力をいかに確保するかの観点からの生産能力増強を図るとともに、ジェネリック医薬品製造の課題として指摘される少量多品目構造の改善・品目統合を通じた生産効率化をより一層進めていくことが必要」と指摘した。
さらに、品目別で差があるとのデータも提示した。供給制限中の品目であっても、他の企業に在庫があり、全供給メーカー量の在庫を積み上げると、需要量を大きく上回る成分もある。一方で、需要を下回る在庫となっている成分もあるという。
◎川俣会長「企業間で情報共有し作りすぎているものをなくすことが原資に」

川俣会長は、26年度に供給が需要を16億錠上回るとの推計を示しながら、「26年度中に限定出荷の解除ができるのではないかとなるが、需給バランスが非常に大きく崩れているということをご理解いただきたい。作りすぎてしまっているものと、足りないもののバランスが取れてないという状況の中で、 26年度、急激に限定出荷の解除が見られるということにはつながらない」と説明。さらに、「我々が企業間で情報を共有した上で、作りすぎているものをなくすことが足りないものを生産する原資になり得ると思っている。この取組みは引き続き続けていかなければいけないと考えている」と強調した。
また、25年度補正予算に「後発医薬品製造基盤整備基金の造成による後発医薬品企業の品目統合等に向けた設備投資等の支援」として844億円計上されたことを「さらにプラス」との見方を表明。「いわゆる品目統合にかかるコンソーシアムが、企業ごとに色々な形でスタートしている。この品目統合が進むことによって、設備投資をしなくても自分たちの設備をより効率的に運用する仕組みも出てくると思っている。今後、モニタリングをしながらこの数字がどう変化していくかを確認してまいりたい」と述べた。
供給不安の時期について明言を避ける中で、改めて限定出荷の解除時期の見通しを問われると、「生産キャパシティが足りないから、限定出荷をせざるを得ない状態のものについては縮小していく傾向にはあったと思う。ただ、何らかの問題があって製造ができなくなってしまっている品目に対する補償生産については、必ずしも生産が追い付かない場合がある。例えば、麻酔薬や抗生物質などは、根幹が解決されないと、供給不安は解消しない。こうした品目への取り組みは、今回の数字とは別のものだと考えている」と説明した。
◎河野理事長「見える化が第一歩」 安定供給責任者会議で情報共有と働きかけ
GE薬協の河野典厚理事長は、「見える化することが第一歩だと考えている」と表明。「資料を見れば、去痰剤・鎮咳剤などがまだ不足しているという示唆が得られる。その点を踏まえ、各社には対応を検討していただきたいと考えている。これは安定供給責任者会議の範疇でもある。ただし、営業上“本当に作れるかどうか”という判断にどこまで介入できるかは、競争上の問題もあり限界がある。それでも、こうした情報提供と働きかけを続けることが重要だと考えている」と話した。
このほか、報告書では、IQVIAデータによる薬価ベースの推移を見ると、2020年度から24年度にかけて医薬品市場全体は約10%増であるのに対し、ジェネリック医薬品市場は約0.5%増にとどまっていること説明。このような市場環境の中でも、ジェネリック企業は医療現場の需要を満たすために今後5年間で15社合計約2580億円の設備投資を計画しており、持続可能な安定供給体制の構築のためには薬価制度について抜本的な改革の検討が必要であることも提言した。
◎業界の将来像は海外展開にどどまる「薬価・流通など課題も解決策見つからず記載見送り、私も残念」
ただ、“産業構造”をテーマとした報告書ではあるものの、産業の将来像については海外展開について記載するにとどまった。川俣会長は、「今回、非常に大きなテーマとして、産業構造あり方研究会という名称になったが、実際の主題は、供給不安をどう解消するかにあった。一方で、供給不安が解消した後、ジェネリック製薬企業としてどう存続していくかというテーマは、政策委員会で現在まとめている次世代産業ビジョンに盛り込む予定だ」と説明。「薬価制度、後発品の流通体制についてなど課題はたくさんあるが、研究会で議論する時間があまりなかったことと、解決策が見つからず、今回は記載を見送らせていただいた。思うところはたくさんあるが、この報告書には十分に盛り込めなかった部分があり、私も残念だと思っている」と吐露した。
◎グループ会員、安定協ネットワーク会員の増加にも期待
日本ジェネリック製薬協会の会員社数にも言及。43社が加盟していた時期もあったが、現在は29社に減少している状況にある。川俣会長は、「今後も統廃合が進むことがあるとすれば、さらに減る可能性もある」と指摘。「正会員のグループ企業は“グループ会員”として取り込んでいきたい。“安定供給ネットワーク会員”については、ジェネリックの安定供給に関する情報共有を通じて、供給体制の構築に寄与するもので3月に会員募集を開始するので、賛同してくれる企業がより増えることを期待している」と話した。